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香港メディアの香港01は18日、中国・湖南省の病院でインターン医師が謎の転落死を遂げた事件について報じた。
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羅さんが生前に内部告発していたとされる人物の1人、同院の劉翔峰(リウ・シアンフォン)副主任医師はネット上で「悪魔の医師」と呼ばれ、24年10月に懲役17年の判決を受けた。劉は患者の病状を誇張し、不要な手術を強行して5人を重傷、1人を軽傷に追い込んだほか、賄賂、リベート、医療資材の私物化などで数百万元を不正に得ていた。一例では、52歳の患者に不要な人工肛門手術を実施、術後に高額な栄養補助食品の購入を指示したが、実際は市販の安価なプロテイン粉末だった。患者に対して「もうすぐ死ぬぞ」「助からないぞ」などと脅し、高額な医療費を支払わせることもあったという。
羅さんの死後、中国のSNS上では湘雅二病院の過去の不祥事が続々と明るみに出た。ある患者は頭痛で入院したが、退院日に死亡した。この件については病院の過失が認定され、賠償命令が下った。さらに系列の病院では、不正経理や書類改ざん、医師による不適切行為なども報告されている。
地元当局は24年6月、世論に押される形で4600字超の調査報告を公表した。報告では、「公安の実験により、成人男性が屋上の囲いを自力でよじ登って格子状の開口部から抜け出すことが可能であることが確認された。また、羅さんの住居内の物品は無事で、争った痕跡などの異常は見つからなかった」と説明された。メッセージの内容については、「もし明日出勤しなかったら、パソコン内の資料を紀律委員会に渡してくれ」という内容は事実ではないとし、「元の科室に戻って勤務せよ」などは事件後に元のローテーションに戻るよう同僚に知らせる意図だったとされた。
録音データについては、22年4月18日に腸壊死患者に対して急診科の周医師が緊急腹部手術を行った際のものであり、告発の対象とされる劉氏のものではないとされた。「臓器提供」に関する資料については、羅さんが大学院在学中の研究課題のために病院の関連部署からコピー・保存したものであり、資料にある50件の臓器の出所および行き先はすべて追跡可能だと説明されている。
このほか、パソコンデータの削除については「公安が一部資料のバックアップを行ったのみで、改ざんや削除はなかった。バックアップされたデータの中にも遺族が主張する告発資料は存在しなかった」、マネーロンダリングについては「病院が業績分配を二次的に再配分する方式を取っており、まず複数の学生の口座に振り込んでから、特定の職員の口座に送金する仕組み」と説明された。
そして、羅さんが過去にチャットアプリで「このまま博士課程を続けたら飛び降りたくなる」と語っていたとし、羅さんの死はストレスによる自殺と断定した。
しかし、遺族やネットユーザーの指摘のすべてを一つひとつ否定したこの報告はかえって世論の不信を招いた。遺族はこの報告に反論する公開書簡を発表。羅さんの死について「地面に衝突した後、7メートル先まで跳ね返ったとされているが、15階から落下した人体が3メートルも跳ね返る可能性はなく、物理法則にまったく合わない」と主張した。
また、臓器提供記録についても提供者とされる人物の名前が一致しないことを指摘したほか、録音データの多くが「業務上の通常の会話」とされたことにも疑問を提起した。そして、最も疑問視したのが、本件の調査チームが地元当局や関連病院など、湘雅二病院の利害関係者で構成されていることだった。遺族は、国家衛生健康委員会、国家監察委員会、公安部による独立した合同調査チームの設置を要求している。
SNSでも「事件から長い時間ずっと調査結果を公表せず、世論の高まりを受けてからようやく報告を出したことがタイミングとして都合が良すぎる」「地元当局の『自己調査』では信頼性に欠ける」「すべてに完璧な説明があるのは逆に不自然」などと疑念が広がった。
記事は、この事件について「タキトゥスの罠(政府が信用を失っている時は何を言っても民衆からの非難に遭う)」との指摘が出ていると言及。また、中国国民の医療制度への根深い不信感を如実に反映しているとも指摘し、病院にかかるのが難しい、医療費が高すぎる、軽い病気でも過剰治療がなされるといった問題や、医療機器や薬品をめぐるキックバック、医師が患者から現金を受け取る「袖の下」の慣習など、医療界における不正と腐敗は長年解決されていない構造的な病巣であると論じた。
その上で、「羅さんの事件は単なる一つの死亡事件にとどまらず、中国の医療制度が抱える深層的な問題を浮き彫りにした『縮図』となっており、医療制度に対する国民の不信を明確に示した」と強調。また、「重大事件における調査の独立性と透明性をどう担保するかという点も、解決が求められる重要な課題である」とし、「社会の懸念により透明性の高い姿勢で応え、長期的な制度改革によって医療界にはびこる問題を取り払わねば、『タキトゥスの罠』は繰り返されるだろう」と述べた。(翻訳・編集/北田)
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