<コラム・莫邦富の情報潮干狩り>中国版「道の駅」時代が交通大渋滞の10月連休中に幕を開けた

莫邦富    2020年12月14日(月) 15時20分

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10年前の2010年9月下旬、高知県庁に招かれて、インバウンド資源の取材で四万十川周辺を回ってみた。写真は中国・蘇州の陽澄湖サービスエリア。

現在、江蘇省のサービスエリアの経営モデルは大体3種類あり、一つは企業と資金投資を誘致してその運営を任せるという「リースモデル」で、外部の資金を導入してサービスエリアの改造と経営管理の改革を行う。二つ目は自社で既存のサービスエリアを改造してから、テナントを募集する「大家モデル」。三つ目は改造と経営はすべて自分で解決する「自営モデル」だ。

しかし、リースモデルにおいても、そのテーマについては、サービスエリアが位置する地域の特色についての考慮、現地の文化歴史との結び付けなどを求めたりするなど明確な意思表示を行う。飲食店や土産品店などの割合についても、サービスエリアによって大きく異なるなど、各サービスエリアのそれぞれの特性に応じて考える。例えば、陽澄湖サービスエリアでは、レジャー・娯楽・文化関連の業種が多く、飲食業の割合は30%以下に抑えられている。一方、芳茂山サービスエリアは恐竜の要素をしっかりと取り入れており、体験感に力を入れている。店舗の総面積が陽澄湖に及ばないため、逆に飲食業をメインと位置付けた。

商業ブランドの選択については、ケンタッキーピザハット、バーガーキングなどの国際ブランドは集客効果が抜群だが、賃貸料の貢献度は低い。そのため、これらの大型ブランドを導入する一方、小楊生煎、吉祥ワンタンなどの伝統的な軽食も誘致して、ブランドの相互補完と収益の最大化を狙っている。

江蘇交控は中国国内のメディアに、この高度化推進プロジェクトの成果を以下のように発表している。

「従来のサービスエリアと比べ、新型サービスエリアの客数は平均30%以上増加し、売上高も大幅に上昇した。(蘇州と南通を結ぶ)蘇通大橋サービスエリアは2016年9月に改造を完了した後、1日当たりの売上高は前年同期比229%増、利益は同226%増となった。儀征サービスエリアの改造後、1日平均売上高は96.33%増加し、経営効率は81.53%向上した。2018年までに、江蘇交控管轄内のサービスエリア業務はすべて黒字転換を実現した」

経営状況の好転を見るには、もう一つの指標がある。旅客の滞在時間だ。統計によると、新型サービスエリアの観光客の1人当たりの滞在時間は30分間に及ぶが、従来のサービスエリアは15分間に過ぎない。人気が高い一部のサービスエリアは一時の休憩地からちょっとした観光目的地に変わっている傾向も見られる。例えば、週末と祝祭日の陽澄湖サービスエリアでは、観光客の30%近くがその付近に住む住民となっている。

江蘇省の成功は中国各地の注目を集めており、これまでに延べ2万人以上の業界関係者が江蘇省を訪れ、高度化推進プロジェクトの現場を見学した。それと同時に、江蘇以外の地域でもサービスエリアの改造を始めた。中国版「道の駅」時代が交通大渋滞の10月連休中に幕開けを迎えたと言ってもいいような動きだ。

中国版道の駅事業はこれから佳境に入る状態だ。コロナ禍の影響で、まだ自由に中国との行き来はできないが、中国出張の際、結構、高速道路移動が多いだけに、中国出張の楽しみがまた一つ増えた思いがした。

■筆者プロフィール:莫邦富

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。
知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させた。また日中企業やその製品、技術の海外進出・販売・ブランディング戦略、インバウンド事業に関して積極的にアドバイスを行っており、日中両国の経済交流や人的交流に精力的に取り組んでいる。
ダイヤモンド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」、日本経済新聞中文網にて「莫邦富的日本管窺」などのコラムを連載中。
シチズン時計株式会社顧問、西安市政府国際顧問などを務める。

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