「一帯一路」10周年と歴史交流実例都市「ニヤ遺跡」

小島康誉    2023年4月1日(土) 15時30分

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中国の習近平国家主席が2013年に提唱した巨大経済圏構想「一帯一路」、今年は10周年にあたる。

中国の習近平国家主席は、2013年9月にカザフスタンのナザルバエフ大学で「シルクロード経済帯」構想を提唱し、10月にはインドネシアの国会で「21世紀海上シルクロード」構想を提唱した。中国と中央アジア・欧州を結ぶ「一帯」、中国沿海部と東南アジア・インド・アラビヤ半島・アフリカ東部を結ぶ「一路」からなる巨大経済圏構想であり、合わせて「一帯一路」である。今年は10周年にあたる。

この10年拡大続け、150余の国家と30余の国際組織が関係文書に署名したと「新華社」は伝えている。「一帯一路・シルクロード経済帯」の要衝は新疆ウイグル自治区。本年1-2月の新疆の対外輸出入総額は443億9千万元(約8,600億円)に達し、前年同期比86.4%増となり、増加幅は中国内で最大で、「一帯一路」参加国関係が91.6%を占めたと「人民網日本語版」(23.3.17)が報じている。「一帯一路」に対して一部にはネガティブ発信もあるが、各国の発展に寄与しているのは事実であり、今後も拡大を続けるだろう。各国首脳が参加する第3回「国際フォーラム」も計画されている。

今年の中国の “紅白”にも登場した「五星出東方利中国」錦は新疆タクラマカン沙漠に残存するニヤ遺跡で、日中共同学術調査隊が発掘した重要文物。その約2000年前の「ニヤ遺跡」と21世紀の「一帯一路」とは何の関係もないように思われるだろうが、遺跡の性格や出土文物から読み解くと関係があるとも言える。

「五星錦」には漢字八文字「五・星・出・東・方・利・中・国」が織り込まれているが、遺跡東方の中原地方で制作された。遺跡にはインドから中国、さらには日本へ伝わった仏教の仏塔や仏堂が残存している。調査隊は漢文文書や五銖銭も検出している。遺跡南方のインドで使用されたカローシュテイー木簡も多数発掘している。地中海あるいはアラビヤ海産と思われる珊瑚も出土している。当地で制作された装飾品などは駱駝で各地へ運ばれていった。

「五星出東方利中国」錦

ニヤ遺跡は『漢書』や『後漢書』に登場する「精絶国」であり、東西南北との取引が盛んに行われた古代シルクロードの重要な交易都市であった。古代都市の多くが消滅した21世紀にあってニヤ遺跡の重要性は益々高まっている。いまや巨大経済圏となった「一帯一路」の古代における経済・文化などの交流実例都市が「ニヤ遺跡」と言えよう。
















■筆者プロフィール:小島康誉


浄土宗僧侶・佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表・新疆ウイグル自治区政府文化顧問。1982年から新疆を150回以上訪問し、多民族諸氏と各種国際協力を実施中の日中理解実践家。
ブログ「国献男子ほんわか日記」
<新疆は良いところ>小島康誉 挨拶―<新疆是个好地方>
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※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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