「軍拡より生活!」軍事拡張路線をひた走る岸田政権に「NO」―平和を求める女たちの会

片岡伸行    2023年2月10日(金) 7時30分

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「私たちの税金を戦争準備に使うな!暮らしと平和に使え!」―ウクライナ戦争を奇貨として軍事拡張路線をひた走る岸田政権に対し、女性たちがNOを突きつけた。

「私たちの税金を戦争準備に使うな!暮らしと平和に使え!」―ウクライナ戦争を奇貨として軍事拡張路線をひた走る岸田政権に対し、女性たちがNOを突きつけた。「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」は8日、東京・永田町の衆議院第2議員会館内で会見を開き、わずか1カ月足らずで集めた約7万5000筆の署名を各政党などに手渡すとともに、参加した10人がそれぞれの思いと怒りをぶちまけた。

軍事費GDP2%の撤回など求める

防衛費(と呼ばれる軍事費)を5年間で総額43兆円に、反撃能力(と名を変えた敵基地攻撃能力)を保有・活用することなどを明記した「安保3文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を、2022年12月16日に閣議決定した岸田政権。「閣議決定」だけで国会での議論も国民への説明もせずに決めてしまう独裁的な手法は、「集団的自衛権公使容認」の閣議決定(2014年、安倍政権)以降続き、もはやブレーキの効かない状態だ。

しかも、戦力不保持などを掲げる憲法9条の平和主義・平和理念をことごとく侵す内容で、すでに多くの憲法学者や弁護士会、平和・市民団体などが抗議と批判の声を上げている。そこに加わったのが「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」だ。まず、会を代表し法政大学前総長の田中優子さんが声明を発表。岸田文雄首相、政府・与党、野党各党代表、連合代表に対して、1:軍事費GDP2%を撤回すること。2:歯止めなき軍拡を推し進めることをやめ、そして女性や子ども、若者や社会的弱者の目線に立った政策を進めること―の2点を求めた。続いてマイクを握った10人の女性の発言要旨を紹介しよう(発言順)。

「日本と世界を滅ぼす道」

「2014年の集団的自衛権の行使容認から始まり、2015年の安保法制、2022年の安保3文書とすべて閣議決定だ。5年で43兆円、財源は増税、米国から武器を買うことを約束。もはや改憲の必要もなくなった。人間の安全保障なくして国家の安全保障はない」(上野千鶴子:WAN理事長、東京大学名誉教授)

「『優先されるべきは積極的外交』と岸田首相は言うが、外交もせずに台湾有事が日本有事であるかのように喧伝する。どこが積極外交か。戦争をしている場合ではない。日本と世界を滅ぼす道だ」(田中優子:法政大学前総長)

「経済力が落ちているということは人材・能力が落ちているということ。学費無償化はもちろんのこと、子どもの未来に向けて『富国強兵』ではなく『富国強人』にすべき。岸田首相は習近平にも金正恩にも会っていない。今の政権は大変危険だ」(奥谷禮子:ザ・アール創業者)

「テレビを見ていると軍拡の議論があまりに少なく恐怖を感じる。私たちの払った税金でミサイル買うの!?今が大きなターニングポイント。議論が広がってほしい」(東村アキコ:漫画家)

「おかしいことはおかしいと言いましょう。黙っていると認めていると勘違いされる。軍事費に43兆円もかければ当然ながら社会保障費が減らされる可能性がある。誰かが言いましたが、『この愚か者めが!』という言葉を返したい」(前田佳子:日本女医会会長)

「昨年、全国の子ども食堂の数は7000カ所を超えました。この状況下、どこを見て政治をやっているのか。軍拡、敵基地攻撃能力と、戦争へと突き進むこの流れを止めなければならない」(福田和香子:アクティビスト)

「雑誌メディアで月10万円で暮らす方法などを紹介している。怒るよりも我慢せよという新しい軍国教育が始まっている。軍事費を注ぎ込み、人を殺すしか用途のないミサイルを買う。こんなことを言うと『お花畑』などと言われるが、焼け野原よりお花畑の方がいい」(菱山南帆子:市民運動家)

「今、非正規労働者の6割以上が生活が『やや大変』『苦しい』と答えている。そんな中、増税以外に国有資産の売却や特別会計からの繰入れなどで3兆円余の『防衛力強化資金』を集めるという。私たちの税金を勝手に使うなと言いたい」(和田静香:フリーライター)

「コロナ禍から脱したような話があるが、特にシングルマザーはひどい暮らしのまま。兵器の爆買いなんて信じられない。軍事費が増えれば生活が圧迫され、生活破綻が増える。戦争が起きる前に人が死ぬ」(竹信三恵子:ジャーナリスト、和光大学名誉教授)

「1年当たり9兆円、5年で終わるとは限らない。3兆円あれば大学までの無償化ができる。しかも周辺国は警戒し、軍事緊張を自ら高めることに。戦争は最大の人権侵害。軍拡は日本のあり方を根本から変えてしまう」(伊藤和子:弁護士、ヒューマンライツナウ副理事長)

「風に頼らず、地殻変動を」

発言後の質疑の中で、司会を務めた弁護士の杉浦ひとみさんは「きょうは熊本で、あすは大阪で同様の会見を予定している。何らかの形で地方への波及を検討していきたい」と説明。今後の取り組みについて上野千鶴子さんから「国政選挙のない『黄金の3年間』、この機にやってしまおうとの政権の意図が見えるが、このままでは『悪魔の3年間』になる。(春の統一地方選などに向けて)女性候補者を応援する取り組みが確実に動いている。例えば、夫婦別姓に賛成か反対かなど、女なら誰でもいいというわけではない。立法府に女が増えると軍事費が減るという結果も出ている」との発言があった。

また、軍拡を容認し有事をあおるかのようなメディア報道について「メディアもビジネスだろうが、戦前の大本営発表の時代に戻っている。ムードは戦前と同じ。ジャーナリズムはしっかりと声を上げてほしい」(奥谷さん)、「メディアは軍拡の是非を選挙の争点に掲げて報道を」(伊藤さん)、「風に頼らず、確かな地殻変動を起こすためにもメディアがどう報じるかが重要」(菱山さん)などといった注文も相次いだ。

岸田軍拡に対しては、男たちも批判の声を上げてはいるが、いくつかの世論調査によれば、どうも男の方が軍事費増に賛成の割合が高いようで、この国の男たちにホトホトうんざりしている人もいるだろう。人口の半分を占める女たちが「命と暮らし」を掲げて立ち上がれば、風向きや地殻も変わるかもしれない。女性たちの発言の数々はそんな思いを抱かせた。

■筆者プロフィール:片岡伸行

2006年『週刊金曜日』入社。総合企画室長、副編集長など歴任。2019年2月に定年退職後、同誌契約記者として取材・執筆。2022年2月以降、フリーに。民医連系月刊誌『いつでも元気』で「神々のルーツ」を長期連載中。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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