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9日、韓国メディア・韓国経済は、韓国内にパワー半導体の量産工場がほぼ存在せず、AI時代の成長産業であるパワー半導体において、海外依存が深刻化していると報じた。資料写真。
2025年10月9日、韓国メディア・韓国経済は、人工知能(AI)の活性化でパワー半導体需要が急増する中、韓国は生産工場をほとんど持たず、グローバル競争から取り残されつつあると報じた。
記事によると、現在、需要の急増により世界各国がパワー半導体の生産確保に乗り出し、米国や欧州は生産施設を積極的に拡張、中国は垂直系列化を推進している中、韓国はわずか1カ所の8インチ(200mm)炭化ケイ素(SiC)ファブを試験稼働しているのみとなっている。
記事は「韓国のあるパワー半導体ファブレス企業は、データセンターや高速充電器向けの窒化ガリウム(GaN)基盤半導体の開発を終えて量産に着手しようとしたが、国内で大規模量産が可能なファウンドリー(半導体製造受託企業)を見つけることができず、量産はドイツ、台湾、シンガポールの海外工場に依存せざるを得なくなった」と述べ、「約20社の韓国ファブレス企業も同様の課題に直面しており、設計段階から試作品確認、量産まで海外に頼らざるを得ない状況となっている」と続けた。
パワー半導体などとして用いられる化合物半導体市場は、24年の121億ドル(約1兆8500億円)から30年には254億ドル(約3兆8800億円)に拡大すると予測されている。新世代パワー半導体であるSiCやGaNは従来のシリコンに比べ高温耐性や耐久性に優れ、維持・補修費用を最大半分に削減できることから、AI、大規模データセンター、6G通信網、航空・宇宙・国防分野などに不可欠とされる。
記事は「韓国もグローバル市場で化合物半導体が商用化される前の1992年から技術育成を試みてはいたが、予算を投入できず、技術水準は初歩にとどまっている」と指摘した。韓国科学技術企画評価院(KISTEP)によると、欧米と比べて韓国のSiC半導体技術は70~82%、GaN技術は68~78%の水準にとどまっている。
一方、世界市場は中国を中心に再編されている。中国企業が政府支援により6インチSiCウエハー価格を半分に下げると、パワー半導体トップ企業であった米国のウルフスピードは破産を申請。台湾TSMCも収益性の悪化を理由に27年以降GaNファウンドリー事業からの撤退を発表した。生存競争に生き残ったグローバル企業は米国、欧州、日本で積極投資を継続し、8インチSiCの生産ライン拡張や合従連衡を進めている。
記事は「韓国政府も8月にSiCパワー半導体を15の新成長動力に指定したが、来年度予算は250億ウォン(約27億円)にとどまり、グローバル競争に追いつくには不十分だ」と述べ、専門家による「不足しているテスト・量産ファウンドリーを育成し、事業化までの時間を短縮する必要がある」との見方を強調した。
これについて韓国のネットユーザーからは 「AI時代の核心部品なのに工場一つないなんて、政府は何をしていたんだ?」「完全に産業戦略の失敗」「250億ウォン(約27億円)の予算って、米国や中国の投資額と比べて桁が違いすぎる。これで追いつけると本気で思っているのか」「半導体大国だと自慢していたのは何だったのか。まさか台湾やドイツにまで依存しているとは」「設計(ファブレス)はできても、製造(ファウンドリー)はできないという脆弱(ぜいじゃく)なエコシステムが露呈した」などの声が上がっている。
また、「もし中国との間でサプライチェーン危機が起きたら、韓国のAI産業全体が止まるという警告は恐ろしすぎる」「今からでも国を挙げて量産ファウンドリーを誘致・建設しないと、完全に競争から脱落する」「米国、欧州、日本が8インチ標準で大規模投資している間に、私たちは何をしていたのか。このスピード差は致命的だ」「サムスンやSKといった大企業がなぜこの分野に大規模投資をしないのか疑問だ。国の未来がかかっているのに」などの声も見られた。(翻訳・編集/樋口)