人口減対策、外国人材受け入れで真剣な議論を=20年後には人口の1割との予測も

長田浩一    2025年6月15日(日) 15時0分

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日本は今こそ移民の受け入れについて真剣に議論する必要があるのではないか。写真は東京。

厚生労働省が6月初めに発表した人口動態統計によると、2024年中に生まれた子供(出生数)は68万6061人と初めて70万人を割り、少子化と人口減少の加速を再確認する結果となった。こうした状況を背景に、このほど日本記者クラブで記者会見した「一般財団法人 未来を創る財団」の國松孝次会長は、「人口減少を阻止し、地域を活性化するための外国人材の受け入れに向けた『基本法』を制定」するよう訴えた。立法化の是非はともかく、われわれは今こそ外国人材、別の言い方をすれば移民の受け入れについて、真剣に議論する必要があるのではないか。

移住者はアジア出身が大半

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の2020年時点における外国人人口(永住または長期滞在者)は275万人で、総人口1億2615万人に対する割合は2.2%だった。しかし、その後は総人口が減る中で外国人は増え続け、2070年には939万人に達し、総人口(8700万人)の10.8%に達すると予測している。これは、現在のデンマークやイタリアの外国人比率とほぼ同水準で、日本は欧州並みの移民社会になるわけだ。

しかも、この予測は前倒しで実現する可能性が大きい。この推計は2023年に発表されたが、その後の日本の少子化と外国人の流入が、推計の前提を上回るテンポで進んでいるためだ。未来を創る財団の関係者は、2040年代に外国人比率が1割に達する可能性があると見る。あと20年ほどで、「10人に1人が外国人」という社会になるというのだ。

2024年末時点の外国人人口の内訳を見ると、中国人の84万4187人(23.5%)がトップ。次いでベトナム人が60万0348人(16.7%)で続き、以下、韓国人11.5%、フィリピン人9.3%、ブラジル人5.9%、ネパール人5.8%、インドネシア人4.8%、ミャンマー人3.11%などとなっており、ブラジルを除けば上位はすべてアジア諸国の出身者。この傾向は今後も続くとみられるため、外国人の受け入れについて考えることは、事実上、アジアからの移住者にどう向き合うかという問題とイコールだ。

「定住外国人基本法」の制定を提言

日本への外国人の流入は、2023年が33万6000人、24年が35万8000人と高水準で推移している。山本謙三・元日本銀行理事は「年間出生数のほぼ半分に相当する人口が海外から流入している。その意味は大きい。人口減少が進む日本にとっては、もはや海外からの人口流入がなければ経済は成り立たない。今後は、このトレンドをどこまで維持できるかが課題となる」と、外国人材が日本経済を支える重要な要素になっていると指摘する。それも当然で、来日する外国人の多くは、人手不足を補うために産業界が呼び寄せているからだ。

ただ、日本政府が「移民政策を採っていない」として移住者について明確な政策を示していない中、外国人の流入は「産業界主導の理念なき無戦略な受け入れ」(藤原豊・未来を創る財団副会長)としか言えない形で続いている。当面の人手不足を何とかしたいというその場しのぎの手段としての外国人の受け入れであり、長期的に日本経済を活性化したり、人口減少が深刻な地方の活力を取り戻したりするために活用するといった戦略は見当たらない。日本語教育や子弟の教育などの生活支援も十分とは言えない。

國松会長らは、こうした現状に強い危機感を抱き、今こそ「定住外国人基本法(仮称)」を制定して、外国人受け入れについての基本的な理念と方針を明確にすべきだと訴える。具体的には、同会長がかつて大使を務めたスイスの例にならい、「外国人材の日本社会・文化への統合」を基本理念とし、また経済成長に資する外国人材は積極的に受け入れるという方針を前面に押し出す。そのうえで、基本法の骨子は1.関連する権限を地方自治体に移管し、自治体の責務と主導の下で外国人を受け入れる「地域主導主義」を明記する、2.地域主導主義の実現のため、必要な制度的枠組みを整備する、3.日本社会の安心と安全の確保にも留意する、4.地方を活性化するための新たな在留資格を創設する―などとするよう提言している。

試される日本人の覚悟

こうした立法措置が必要かどうかについては意見の分かれるところだろう。インターネット空間などでは排外的な主張がまかり通っており、外国人の受け入れ自体を拒絶する声を無視できない。そこまで極端な主張でなくても、一般市民の間から「外国人が増えると治安が悪くなるのでは…」といった不安の声が高まることは理解できる。

これについて、オウム真理教事件(1995年)当時の警察庁長官でもあった國松会長は「外国人が増えると(それに比例して)犯罪が増えるのは事実だが、外国人だからといって犯罪率が高いということは一切ない」と断言。さらに「外国人がいなくても(日本が経済的に)やっていけるという自信があるならそれでよろしい。しかし、多分それはできない。今、(工場や建設工事などの)現場は外国人に頼らざるを得なくなっている。リスクがあるとしても受け入れるという日本人の覚悟が必要だ」と熱弁をふるった。

國松氏の言う通り、試されるのは日本人の覚悟なのだろう。多少のリスクはあるにせよ、経済的な縮小や地方の空洞化を避けるために外国人材を積極的に受け入れる覚悟を持つか。それとも、これ以上外国人が増えるのは我慢できない、そのために日本人がさらに貧しくなっても仕方ない、という覚悟を持つのか。どちらの道を選ぶのか、あるいは他の選択肢があるのか。国民全体で真剣に議論する時が来ている。

■筆者プロフィール:長田浩一

1979年時事通信社入社。チューリヒ、フランクフルト特派員、経済部長などを歴任。現在は文章を寄稿したり、地元自治体の市民大学で講師を務めたりの毎日。趣味はサッカー観戦、60歳で始めたジャズピアノ。中国との縁は深くはないが、初めて足を踏み入れた外国の地は北京空港でした。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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