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中国で2024年の狂犬病の発症件数が170例となり、07年以来初めて減少傾向が反転した。資料写真。
中国で2024年の狂犬病の発症件数が170例となり、07年以来初めて減少傾向が反転した。動物管理や予防接種体制の盲点が指摘される中、日本の外務省はアジアやアフリカなどで依然として狂犬病リスクが存在することを海外安全ホームページ上で注意喚起している。
中国国家疾病予防管理局によると、24年の狂犬病発症件数は170例に上り、23年の122例から39.3%増加した。
この増加は約3300件を記録した07年以降、17年間続いていた減少傾向を覆すものとなった。背景には、農村部や中小都市における医療アクセスの脆弱さや、動物管理・予防接種体制の地域格差などの構造的な課題が指摘されている。
中国国家疾病予防管理局の「2025年4月狂犬病感染統計」によると、発症件数の反転には複数の要因が重なっている。第一に挙げられるのは、動物ワクチン接種率の地域差だ。特に農村部では飼育されている犬や猫への接種が徹底されにくく、野犬や放し飼い動物による咬傷が依然として多いとされている。
さらに、新型コロナウイルス対策に医療人材や財政資源が集中的に投入されたことで、狂犬病や破傷風など他の感染症への対策が後回しになったとの指摘もある(「新冠疫情下における感染症対応資源の分配に関する分析報告」2023年版)。
加えて、都市化に伴いペットの飼育者が増加する中で、新規飼育層における管理や感染症予防に関する知識・啓発の不足も再拡大の一因と考えられている。
狂犬病ウイルスは犬や猫など哺乳類の咬傷や引っかき傷から感染する。広東省梅州市では24年に3万件超の動物による咬傷が報告され、うち92.67%が犬または猫によるものだった。こうした事例が示すように、現場では「暴露後予防(PEP)」の需要が急増し、ワクチンの備蓄体制や医療人員の逼迫が課題として浮上している。
国家疾病予防控制局はこの動向を受けて狂犬病に対する警戒レベルを引き上げ、咬傷動物の追跡管理やワクチン接種制度の見直しを急いでいる。
しかし、都市部と農村部の対応格差は依然として大きく、都市部では比較的制度が整備されている一方で、地方や農村地域では人材不足や啓発活動の遅れが感染対策の足かせとなっている。
厚生労働省による「狂犬病に関するQ&A」を参照すると、日本国内で人の狂犬病発症例は報告されていない。犬の登録義務や年1回の予防接種、放し飼いの禁止など、法制度が全国的に整備されており、教育・啓発活動や医療機関との連携も含めて、再発ゼロの体制が維持されている。
一方、外務省は海外安全ホームページを更新し、アジア・アフリカを中心に今なお狂犬病リスクが存在することに関して注意喚起を発出している。すでに見たように、中国で17年ぶりに発症件数が反転した。動物管理制度の強化とともに、一人一人の感染症リテラシーの底上げが求められている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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