拡大
レクサスの上海工場の報道が具体化している。
レクサスの上海工場の報道が具体化している。中国メディアは意外に好意的な論調だ。上海でテスラとトヨタの独資100%工場が並立し、中国勢と競い合う未来が見えてきた。対抗馬には、自動車メーカーばかりではなく、スマホメーカーも挙がっている。
レクサスの2024年の世界での販売台数は前年比3.3%増の85万台1214台で、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせた比率は52%だった。中国市場では同0.3%増の18万台とかろうじて前年を上回ったが、ピークだった21年の22万7000台を大きく割り込んだ。
中国の24年の新エネルギー車(EV、PHEV、燃料電池車)の販売比率は47.6%だが、中国ではレクサスのEV化は緩慢と見なされている。100%輸入のレクサス車にはガソリン車のイメージが強いためだ。
中国ではBYD主導で価格競争が激しさを増し、テスラもBBA(ベンツ、BMW、アウディ)も大幅値下げに踏み切った。市場が混沌とする中で、純EVは高級車と軽・コンパクトカーという二極化の傾向にある。トヨタのbZシリーズ、ホンダのe:Nシリーズなど日本のEVはその間のボリュームゾーンに展開し、苦しんでいる。戦うべきフィールドは高級車マーケットだ。
トヨタと上海市政府は5日、カーボンニュートラルに関する包括的提携を契約すると発表した。トヨタはこれまでに合弁相手の広州汽車、第一汽車と進めてきた環境戦略を上海市と共に深化させる。35年までにレクサス全車種をEV化することを目標にしており、30年の販売目標は100万台。これを達成するため、上海市金山区にEVと電池の生産・開発拠点を建設する。27年の生産開始を予定しており、年産目標は10万台。
中国メディアによると、トヨタは06年の時点で、レクサスの販売台数が3万台になれば中国生産すると語っていた。年間販売台数はすでに20万台前後となり、看板のESシリーズは月1万台を販売する。ここへ来て、ようやく中国生産が具体化した。これで世界自動車メーカー時価総額1位のテスラと2位のトヨタが上海に出そろった。上海市はフォルクスワーゲン合弁の上海大衆が大成功して以来、中国自動車産業をけん引してきた。レクサスはその上海に新たなストーリーを加える存在として期待されているようだ。
トヨタはこれまで、BYDと「bZ3」を開発、自動運転ユニコーン企業モメンタへの出資、ファーウェイとスマートコックピットで協力など、中国のEV技術を取り入れている。中国メディアは「自前の新工場建設を期に全固体電池や新プラットフォーム、中国ローカルの自動運転システムの実装が進み、日系テスラが登場するだろう」と報じた。テスラの後追いのイメージも確かにある。それはともかく、1号車の概要が明らかになってきた。
レクサスはジャパンモビリティショー2023でコンセプトカー「LF-ZC」を発表した。そして、トヨタはLF-ZLの純EV版の関連特許を中国国家知識産権局に登録申請したと報じられている。シャープなラインで構成された力強いデザインのSUVで、これが中国生産の1号車となる可能性が高い。全長5300×全幅2020×全高1700mmで、ホイールベースは3350mm。新型の全固体電池を搭載し、航続距離は1000km超で、価格は27万元(約540万円)と予想されている。
その競合モデルとして中国メディアが一致して推すのはセレス(賽力斯)の「問界(AITO)M9」だ。セレスは国有大手の東風汽車と関係が深い中堅メーカーだったが、21年4月にファーウェイと提携し、ファーウェイは人員700人、年間10億ドル規模の強力な支援を行った。そして21年に「問界M5」、22年に「問界M7」を発売、いずれもヒットし、業界で一定のポジションを確保した。そして23年に最上級モデルの「問界M9」を発売した。
問界シリーズはSUVで、M9は5230×1999×1800mm、ホイールベース3110mm。PHEVと純EVの2系統の動力システムを備え、ファーウェイの超融合電気駆動システム「DriveONE」で管理・制御する。車内システムはファーウェイ独自OSの「ハーモニー」を使用する。価格は49万8000元からと1000万円クラスだが、24年は15万8000台を販売し、大ヒットした。
シャオミ(小米)は24年3月末に1号車の純EVセダン「SU7」を発売。こちらも24年に13万5000台を販売するヒットとなった。今年は2号車のSUV「YU7」が6~7月に発売される見込みだ。シャオミは25年の販売目標をSU7とYU7合わせて36万台とした。しかし、業界は45万台を超えると予想している。
シャオミは24年12月にYU7の実車を公開した。中国メディアは「テクノロジーの美学とスポーツ性を結合した外観で、強力なパワーとインテリジェントは衝撃的」と評した。公表サイズは4999×1996×1600mm、ホイールベース3000mmで、価格は30万~40万元(約600万~800万円)になるとみられる。上位グレードのデュアルモーター版は合計出力691馬力、最高速度253kmに達し、比類のない加速体験と運転する喜びをもたらすという。
ファーウェイとシャオミは新興自動車勢力として成功を収めつつある。スマホショップに実車を展示するなど、強力な販売網や幅広いファン層の存在は大きなアドバンテージだ。さらに、通信機器メーカーとしての高度な技術的バックボーンはスマートカーの開発にプラスイメージを与える。実際に若い富裕層にアピールし、BBAなど欧米高級ブランドの牙城を切り崩しつつある。レクサス上海はテスラやBYDはもとより、ファーウェイやシャオミなどの巨大スマホメーカーとも争うことになる。見どころの多い異次元の戦いになりそうだ。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
Record Korea
2025/2/20
Record China
2025/2/10
高野悠介
2025/1/27
Record China
2025/1/17
Record China
2024/12/25
Record Korea
2025/2/26
ピックアップ
この記事のコメントを見る