山崎真二 2025年1月21日(火) 15時0分
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20日に就任したトランプ米大統領は大統領選での大勝に加え与党・共和党が連邦議会を制したことから、すべて思い通りの政策を実現できると思われがちだが、実はいくつかの弱点を抱えている。
1月20日に就任したトランプ米大統領は大統領選での大勝に加え与党・共和党が連邦議会を制したことから、すべて思い通りの政策を実現できると思われがちだが、実はいくつかの弱点を抱えている。
共和党が上下両院で過半数を確保し、大統領選と併せ勝利したことでいわゆる「トリプルレッド」が実現したのは事実。トランプ大統領が政策運営をする上で非常に有利であることは間違いない。ただ、共和党が議会多数派になったとはいえ、野党民主党との議席数の差はわずか。1月3日に開会した米議会は下院(定数435)が共和党219、民主党215(欠員1)という構成だが、共和党下院議員が新政権入りすることなどから議席数差はさらに縮小し、2人の造反者が出れば共和党は過半数に届かなくなると指摘されている。
上院(定数100)は共和党53、民主党47だが、ここでも共和党はやっかいな問題に直面する。上院では少数党が審議を際限なく引き伸ばすフィリバスター(議事妨害)という仕組みがあり、これを阻止するには60議席が必要。歳出、税や連邦債務上限に関する法案はフィリバスターの対象外で、連邦政府高官人事も単純過半数による上院での承認が可能だが、通常の法案は共和党の53票だけではすんなりと通過とはならず、民主党との交渉が必須となる。例えば、トランプ大統領が提唱した関税徴収のための「外国歳入庁」新設は民主党がフィリバスターを使って抵抗すると予想される。
議会対策でトランプ大統領にとってもう一つ頭が痛いのは、共和党下院議員で構成する「フリーダム・コーカス」グループを中心とする保守強硬派の台頭だ。同派の議員は基本的にはトランプ支持だが、徹底した歳出削減などを声高に主張、しばしば共和党指導部に盾突く。昨年暮れ、米政府の資金繰りに必要なつなぎ予算の議会審議でも混乱を引き起した。つなぎ予算を巡っては共和、民主両党が当初、2025年3月半ばまでの延長で合意したが、トランプ氏らが反対したことなどから事態は紛糾。ジョンソン下院議長(共和党)は両党合意を破棄し、トランプ氏の意向をくみ債務上限の効力停止の2年間延長を盛り込んだ法案を提案した。ところが、採決では保守強硬派の議員らが造反し、同法案は否決の憂き目に。その後、トランプ氏の要求を外す形でつなぎ予算案が可決されたが、改めて保守強硬派の影響力が浮き彫りになった。議会での民主党との議席数が僅差だけに、トランプ大統領としては今後も保守強硬派の意向を無視できないだろう。
今やトランプ最側近として存在感を増す実業家イーロン・マスク氏と、「MAGA(米国を再び偉大に)」支持派との対立も新政権にとっては懸念材料だ。両者は米国の外国人専門職向けの就労ビザ「H-1B」の扱いを巡って激しく対立している。H-1Bは一時就労ビザで最長6年とされているが、この発給を受ければ永住権取得が容易になるといわれている。MAGA派の議員や支持者らは「移民に雇用を奪われる」としてH-1B発給に猛反対。一方、自らも南アフリカの出身で、かつて同ビザを保有していたこともあるマスク氏は「ハイテク産業の競争力強化には外国人材が必要」と反撃し、トランプ陣営内の亀裂が表面化した格好。マスク対MAGAの対立には、第1次トランプ政権の首席戦略官で「トランプ最側近」ともいわれたスティーブ・バノン氏がMAGAを擁護し介入、「マスク氏を追放すべし」と叫ぶなど、事態は一層エスカレートする様相だ。こうしてみると、トランプ新政権は必ずしも盤石とはいえないようだ。
■筆者プロフィール:山崎真二
山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。
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