上海嘉世営銷諮詢有限公司 2024年12月31日(火) 17時0分
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中国の銀行業界では、順風満帆とは言えない状況が続いている。問題点は数多い。しかしそんな中でも「打開策」を見出す努力は続いており、具体的な動きも出ているという。
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中国では2021年に不動産大手の恒大グループが経営危機のために事業継続が困難な状態になった。中国ではそれ以前から不動産業界の不振が続いており、今も回復したとは言えない状態だ。不動産業のような大規模産業が不振をきたすと、銀行業にも大きな悪影響が及ぶ。銀行業が痛手を被ると、その他の産業にも悪影響が広がり経済全体が失速することもある。中国の銀行業界の現状はどうなのだろうか。本稿は、上海に拠点を置いて市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司(MCR)による「2024銀行業発展の観点の報告」の中の、中国の銀行業界が抱える問題点と、逆に今後の発展についての展望を取り上げ、一部で日本人読者向けの情報を追加するなどで再構成したものだ。
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世界経済の成長が鈍化し、供給能力が消費需要に対して過剰であることから、長期金利は継続的に低下し、利回り曲線の平坦化が常態化している。このことで銀行業の利ざやが圧迫されている。すなわち銀行は収益を出しにくい状況だ。
商品住宅の取引面積には安定の兆しが見られるが、依然として低価格販売で取引量を増加させることが主な手段となっており、不動産企業のキャッシュフローは依然として圧迫されていると思われる。不動産およびその上下流産業は、今も信用リスクが集中している業界だ。不動産企業の債券のデフォルト(債務不履行)状況を踏まえると、商業銀行の不動産業務を行う法人に向けての貸し付けは、引き続き停滞する可能性がある。
上場銀行のクレジットカードと個人事業主向け貸付の不良化率は著しく上昇しており、一方で消費者ローンの不良化率は低下している。理由の一つは多くの銀行が消費者ローンの提供を加速させたためであり、もう一つは銀行が貸倒れの処理リソースを消費者ローンに偏らせたためである可能性がある。ただしこのことは将来、消費者ローンの不良化率を引き上げてしまう可能性も伴う。
金融のレバレッジの削減が進み、銀行間取引やオフバランス業務への規制がますます厳しくなっている。このため銀行間取引の規模が急速に縮小している。銀行間取引で多く用いられる資産は現金や預金商品であり、銀行間取引の圧縮により、金融商品における現金および預金の全体的な割合が同時に低下している。
利ざやが小さければ銀行の収益力が弱まり、そのことで銀行のイノベーションや開発への投資能力が制限され、結果として金融サービスの後退や経済活力の低下を引き起こす可能性がある。さらに、小さな利ざやは、銀行が収益を追求する過程でより高いリスクを負う原因となり、そのために金融システムの脆弱(ぜいじゃく)化が進行する可能性がある。
20年から、多くの銀行で貸出の増加が収益の増加にはつながらない状況が発生している。主要な問題は利ざやの縮小だ。非金利収入を増加させることは今も難しい。非金利の本質は良好な関係を持つ顧客に専門的なサービスを提供することで得られる収益だ。銀行は収益モデルの転換に注力するようになった。
顧客からは銀行の金融商品、サービス、体験に対する個別化、専門性、さらに総合的なニーズが引き続き高まっており、個別対応や顧客に満足感をもたらすことが、金融機関にとっては顧客に選択してもらい、関係を維持する上でますます重要になっている。さらに、大手銀行が価格や商品面での強みを生かして優良顧客を奪い取る中、顧客満足度の管理は商業銀行、特に中小銀行にとって顧客関係の構築で重要な課題になった。
国の金融関連所管部門は規制を強化し、構造的な金融リスクを防ぐことを強く念頭に置き、金融機関の違反行為に対する処罰を厳格化し、規制政策の体系を整備し、重点分野における違法行為やルール違反を厳しく取り締まってきた。銀行業は規制の重点対象であり、「厳格な規制、重い処罰、厳しい責任追及」が業界の新たな常態となった。その結果として、銀行はコンプライアンスの最低ラインをしっかりと守るようになったと言える。
金融供給側改革の深化、資本市場の回復、産業のアップグレードと再構築の流れの中で、企業顧客の金融機関に対する総合的なニーズは高まっている。国有の大手銀行や株式制銀行は、投資銀行、商業銀行、資産管理の金融サービスを統合させることを全行の戦略として位置づけており、先進的な都市商業銀行も積極的に総合経営モデルを構築し、法人顧客に対して総合的な金融ソリューションを提供する流れが強まった。
脱炭素化が急激に進む中国で、銀行業界は環境・社会・ガバナンス(ESG)の理念を企業ガバナンスの枠組みや戦略計画、および事業展開に組み込むようになった。
また、シティグループをはじめとする国際的な金融機関が提唱を始めた環境および社会リスクを考慮した融資基準である「赤道原則」や、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)による責任ある銀行原則(PRB)を採用した銀行を指す「責任ある銀行」といった国際的な取り組みに参加する銀行が増加している。さらに、多くの銀行が、個人や企業の炭素排出履歴、すなわちカーボンアカウントを融資の際の考慮項目の一つに加える試みを始めた。中国ではグリーンおよび低炭素産業が銀行の融資の新たな重点分野になった。(翻訳・編集/如月隼人)
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Record China
2024/12/31
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