Record China 2024年12月11日(水) 9時0分
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9日、中国メディアの第一財経は、中国経済は日本化ではなく分化しているという旨の分析記事を掲載した。写真は上海。
2024年12月9日、中国メディアの第一財経は「中国経済は日本化ではなく、分化している」と題した記事を掲載した。著者は上海交通大学中国発展研究院執行院長の陸銘(ルー・ミン)氏。
陸氏は、「近年、中国経済に起こっている現象が、1980年代末から90年代初頭にかけての日本の状況と似ているとの見方が広がっている。中国が90年代以降の日本のような経済低迷に陥る可能性を指摘し、『中国経済の日本化』という見方まで出ている」と紹介しつつも、「日中両国を単純に比較することはできない」と主張している。
日本と中国の経済については、「表面上はいくつかの共通点が見られる」と指摘。「今日の中国と80年代末の日本を比較すると、いずれも時期は異なるが高齢化問題や世界最大の経済大国である米国と継続的な貿易黒字を抱えるといった国際経済関係の悪化に直面している」とした。
陸氏は、「過去20年を振り返ると、人民元は基本的に上昇圧力にさらされており、国際貿易関係も悪化の様相を呈している」と分析。「米国は日本との貿易戦争を繰り広げ、日本の輸出を抑制したが、現在では米国を中心とする一部の先進国が中国の輸出を抑え込もうとしている」と説明した上で、「中国が日本経済と同じ轍を踏むのではないかと不安視する人も多い」と述べた。
特に、不動産市場でこのような議論が比較的多く行われていることに触れた上で、「80年代末から90年代初頭、日本では円高や高齢化が重なり、国全体および家計部門のバランスシートが悪化した。資産価格の暴落や家計の負債増加を招き、消費意欲が大幅に抑制された。同様のことが起こる可能性が中国にも存在することから、人々は中国に対しても同様の懸念を感じている」と分析した。
一方で、「表面的な類似性はあるが、中国経済にはまだ多くのチャンスが存在する。これをうまく活用すれば、中国経済は日本のような深刻な停滞を回避できる」と主張。「そのチャンスは中国が抱える体制的・構造的な問題に根差している」とも論じた。
陸氏は、「80年代末の日本経済においては、問題がなかったこと自体が最大の問題だった」と分析。当時の日本経済について、「経済発展の水準において世界のトップクラスに位置し、産業発展の段階において工業化を完了していた」「都市化のレベルも非常に高く、それ以上の都市化の余地はほとんどなかった」と紹介した。
さらに、「日本は各種の生産要素市場が比較的成熟し、顕著な制度的障壁が存在しない国だ」とも言及。その例として、地域間や都市と農村間での労働力移動には制度的な障壁がないことや、土地資源の配置についても中国のような計画経済の影響を長期間受けていなかったことを挙げた。
一方で、「中国では依然として土地制度に計画経済時代の特徴が顕著に残っている」とし、その例として建設用地の基準制度を挙げた。陸氏によると、この制度によって、各地域で農地を都市建設用地に切り替える際にさまざまな制約を受けることになる。沿海部の大都市では建設用地の基準が非常に厳しく管理されており、広東省深セン市のような都市では多くの農地がいまだに保護されている一方、長期間にわたり発展が遅れている三線都市や四線都市(地方の中小都市)では、比較的余裕のある建設用地基準が割り当てられているという。
陸氏は、「日本ではこのような問題が存在しなかったため、日米貿易戦争や高齢化問題、さらには資産価格バブルの崩壊が重なった結果、『失われた30年』という現象が生じた」と論じた。
加えて、「先述の問題が解決されれば、中国経済にとってのチャンスとなり得る」とした。例えば、現在でも戸籍制度が存在し、地域間および都市と農村間の労働力移動には制度上の障壁があるが、「この障壁を撤廃することで全国統一市場を構築する。戸籍制度の改革を進めて人口の自由移動を進めれば、労働力や資源の配置効率を改善できるだろう」と主張し、「高齢化と少子化が進む中国で、労働資源がより自由に移動できれば、労働力をより効率的に配置できるようになるのではないか。効率的な労働力配置により、人口ボーナスが徐々に失われているという負の影響を緩和できるのではないか」と論じた。
陸氏は、中国の労働年齢人口は約10年前から減少に転じているが、第二次産業と第三次産業の従事者数は依然として増加を続けており、これらの産業が中国のGDPの93%を占めていることを紹介。「第二次産業・第三次産業の従事者が増加している中で、中国経済の成長鈍化を単純に人口ボーナスの消失と結びつけるのは適切ではない」と論じ、「農村部の住民や労働力が農業部門からこれらの産業に移行することで、人口ボーナスが消失しても経済成長をけん引することが可能になった。これこそが中国の体制や構造がもたらすボーナスによるチャンスだ」と主張した。
また、中国の産業構造について、「中国の製造業全体の生産能力は大きく、主に輸出分野でその能力を発揮している一方、サービス業は大幅に供給が不足している」と紹介した上で、サービス業に民間企業が参入する際には多くの規制があることに言及。教育、医療、介護、家事サービス、文化、スポーツ、娯楽、観光などの分野では、需要や支払い能力はあっても相応のサービスを受けることが難しいほか、映画の配給制限など、輸入制限によってサービスを享受できないこともあるという。
陸氏は、「上述のような構造転換が順調に進めば、製造業からサービス業へとより多くのリソースが再配分され、経済成長を実現すると同時に、人々のより良い生活への願望を満たすことが可能になるだろう。これも一つの構造的ボーナスといえる」と論じた。そして、「中国には確かに体制面や構造面での問題が存在しているが、これらの問題が適切に解決されれば、経済成長に新たなチャンスをもたらすことが可能だ」とした上で、「中国経済に日本化の兆候が見られると単純に考えることは、中国経済を十分に理解しているとはいえない」と主張した。
また、「現在の中国で不動産価格が下落している理由の一つは、経済状況の悪化により収入が減少し、将来の経済成長や収入増加に対する期待が低下しているため」とした上で、「過去の高い不動産価格は、いくつかの大都市における建設用地の供給規制や、住宅用地供給への行政的な介入が原因だった」と指摘。そのため、「中国の高い不動産価格は、かつて日本で発生した高い不動産価格と全く同じというわけではない」と論じた。
以上を踏まえて、陸氏は、「中国経済は単純に日本化しているのではないが、いくつかの分化が生じるであろうことは確かだ」と言及。構造転換の過程で、人口流入が続く地域では経済成長の原動力が強いが、人口流出が続く地域では成長の原動力が弱まる傾向があることに触れ、「人口流出が続く地域においては、経済成長をやみくもに追求するのではなく、1人当たりGDPや住民の収入、生活の質の向上により焦点を当てるべきだ」と主張した。(編集・翻訳/奈良)
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