Record China 2024年12月3日(火) 10時30分
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日本の非営利団体「言論NPO」と中国国際伝播集団は2日、日中両国で実施した共同世論調査の結果を発表した。
日本の非営利団体「言論NPO」と中国国際伝播集団は2日、東京で記者会見し、日中両国で実施した共同世論調査の結果を発表した。日本への印象を「良くない」と答えた中国人は合計で87.7%だった。2023年調査より24.8ポイント上昇した。日本が尖閣諸島を国有化した後の2013年の92.8%に次ぐ高い水準。一方、日本人の対中感情はやや改善し、中国への印象を「良くない」と答えた日本人は合計89%で前回調査比3.2ポイント下落した。
日中関係への認識でも温度差が浮き彫りになり、「関係は重要」とした人は日本が67.1%と微増だったのに対し、中国は26.3%で33.8ポイントの急落となり、過去最低となった。
日本に関する情報源として「微博(ウェイボー)」や動画共有アプリ「ティックトック」の中国版「抖音(ドウイン)」などのSNSが上位になっていることも判明。対日感情の悪化につながっているとみられる。
世界の紛争や緊張の原因がどこにあるかについての設問に対し、ウクライナ、北朝鮮、国連など多くの分野での中国国民の認識が明らかになった。中国国民の半数近くは、世界の緊張の原因を「核保有国で、国連安保理の常任理事国でもある国が他国を侵略し、かつ核使用の威嚇を行うなど、これまで考えられなかった事態を世界が止められないこと」と回答、ウクライナへのロシアの侵略行為は「国連憲章や国際法に違反する行為」と判断する人は7割に達した。今回、初めて聞いた、北朝鮮の核開発に関する設問では、中国国民の7割近くが非核化は困難だと考えているが、半数近くは「それでも努力は継続すべき」だと判断。ロシアを念頭にした「核保有国で、安保理の常任理事国である国が他国を侵略し、核使用の威嚇を行うなどしていることを世界が止められないこと」との回答が日中共に最も多かった。日本が32%で、中国が41%だった。「国連が機能していない」との回答は日本が28.5%、中国が19.9%に達した。
また、中国国民では、日中関係を自国にとって「重要ではない」とした人の割合は前年比40.5ポイント増の59.6%となり過去最高を記録。「重要」とした人の割合も同33.8ポイント減の26.3%で過去最低となった。
一方、日本国民では、日中関係を「重要ではない」とした人は前年比2.5ポイント減の5.0%、「重要」は同2.0ポイント増の67.1%で、相手国の重要度に関する認識に日中で大きな違いが出た。
言論NPOの工藤泰志代表は今回の第20回日中共同世論調査結果について、次のような見解を明らかにした。
日中両国民に世界が直面する課題に対して意識の共有が見られた反面、中国国民の対日意識はこの一年で大きく、しかも全面的に悪化した。これまでの調査では、日本国民の中国への感情悪化がより目立っていたが、今回の調査では中国国民の日本への好感度が著しく悪化しただけではなく、日中関係への期待や経済も含めたあらゆる分野での日中協力への中国国民の支持が劇的に後退しており、これまでの20年間の調査で経験したことがない亀裂が国民意識に見え始めている。
日中関係はこれまで何度も困難に直面したが、それでも両国民には隣国意識や長い歴史の交流を経て特別の信頼があり、日中関係は重要だと考える両国民はこの20年間、一度も6割を切ったことはなかったが、今回、中国国民では昨年の60.1%から26.3%にまで落ち込んだ。中国国民の視野に広がる日本の姿は、政府間の対話や国民レベルの交流の遅れ、一部政治家などの発言も影響し、再び「軍国主義」や「覇権主義」に戻りつつある。
11月に行われた日中首脳会談では、世界の共通利益のためにお互いの違いを乗り越えて協力するという戦略的互恵関係の包括的な推進で再度合意しているが、今回の調査結果はそれを支える国民間の信頼の基盤を失い始めていることを浮き彫りにしている。調査を分析すると、日本への渡航歴がある人とそうでない人との意識は断絶し、渡航経験のない人は年代を問わず日本に対する認識が総崩れしている。
中国では米国の大統領選を意識し、米中対立の原因を「米国」とする人が昨年から倍増した。その米国と日本が連携し、経済安全保障を強め、独自に軍事力を強めているとみている。
ただ、日中平和友好条約を機能させるため状況を改善しようという声は中国国民に多く、日中が決裂に向かっているわけではない。ロシアのウクライナ侵略に対する考え方が日中で大差がないことも調査で判明した。世界が分断に進む中、日中が連携してどのような外交を展開していくのか、日中関係の在り方が問われているのではないか。相互交流と対話の継続が必要だ。世界に存在する多くの困難な課題において、日中両国民は認識を共有し、これからの世界では国際協調こそが大事だという点も両国で最も多い回答となった。
一方、今回の記者会見に同席した中国国際伝播集団の高岸明・総編集長は中国国民の対日感情の悪化について「『台湾有事は日本有事』といった日本の政治家の発言に見られるように米国に追従する日本の姿勢や原発処理水の放出が問題視されたのではないか。中日平和友好条約など四つの文書を確認する必要がある。相互交流が重要であり、日本人への訪日短期ビザ免除も期待できる」と言明した。
この世論調査は2005年から毎年実施。今年は10月18日~11月10日、日中両国で18歳以上の男女を対象に行った。日本は調査票を渡し回収する方式で1000人が、中国は調査員による面接方式で北京、上海など10都市で実施、1500人が回答した。
日中の有識者による「第20回東京―北京フォーラム」が4~5日に東京で開催され、今回の世論調査結果に基づき「世界の紛争解決と平和構築に日中はどう取り組むのか」などをテーマに協議する。(八牧浩行)
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