上海嘉世営銷諮詢有限公司 2024年10月30日(水) 8時30分
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中国ではライブ配信やライブコマースが猛烈な勢いで発展してきた。市場規模では高度成長期から安定成長期に移行しつつあるが、業界の様相は今後も大きく変化していくとみられている。
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本稿は、上海に拠点を置いて市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司(MCR)による「2024年ライブ配信市場簡易分析リポート」の主要部分に、一部で日本人読者向けの情報を追加するなどで再構成したものだ。
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中国では経済や社会を動かす力として、インターネットを利用したライブ配信の影響力がますます強まっている。2023年にはライブ配信業の売上高が前年比5.15%増の2095億元(約4兆4000億円)だった。また、同年には中国全国で4643社が、ライブ配信業の営業許可を取得した。
ライブ配信では、分業化が比較的早く成立した。まず、ライブ配信によって商品を広告したり販売する企業がある。そしてライブ配信の出演者と出演者が所属する企業がある。さらに、さまざまなライブ配信の発信者と視聴者との橋渡しをするライブ配信のプラットフォームだ。
商品の販売を伴わないライブ配信で収益を出す方法としては、視聴者が仮想通貨や仮想ギフトをライブ配信番組やその出演者に贈る方式がある。ライブ配信に対する「電子おひねり」と思えばよい。配信側は受け取った「電子おひねり」を現金化し、プラットフォームはその取り引きの手数料を得る。
次に、ライブ配信による広告だ。配信者は広告主の求めに応じて、商品を直接宣伝したり視聴者に表示する画面やライブ配信のスタジオに商品を配すこともする。さらに、視聴者がライブ配信に贈る仮想ギフトに、広告主のロゴや商品のデザインを組み込むこともする。
次に、商品の販売を行うライブコマースがある。商品を提供する側はライブ配信を行う業者にまず、「坑位費(カンウェイフェイ)」と呼ばれる基本費用を支払う。さらに、販売額に応じて一定の割合で「コミッション」を支払う。ライブ配信では、日本ではライバーなどとも呼ばれる出演者の人気が視聴者数を大きく左右し、またライブコマースでは商品の販売数に強く影響する。
一方で動画配信プラットフォームは、より深い内容の作品を見せたり内容の種類を増やすことで、他のプラットフォームとの差別化を図っている。代表的なプラットフォームの一つのTikTok(抖音)は、細分化したカテゴリーでは600種を設け、図と文章を組み合わせた動画や、中編や長編の動画が増えるなどで、動画の種類を豊富にしつつある。
また調査によると、ライブ配信の種類別の人気では、「屋外での体験型」のライブ配信を好む人が73.9%、「実物を示す商品販売」が60.6%、「屋内撮影の娯楽番組」が55.0%だった。「屋外での体験型」には、リモートによる観光地体験も含まれる。
中国におけるライブコマースの売上高は2017年が196億4000万元(約4200億円)、18年は1354億1000万元(約2兆9000億円)、19年は4437億5000万元(約9兆4000億円)、20年は1兆2850億元(約27兆円)、21年は2兆3615億1000万元(約50兆円)、22年は3兆5000億元(約74兆円)、23年は前年比40.48%増の4兆9168億元(約104兆円)だった。
ライブコマース市場の急速な発展に伴い、ますます多くの企業や配信者がこの分野に参入し、競争が激化している。一方で、配信量の激増に伴い市場は飽和状態に近づき、売上高の成長率は鈍っている。
一方で、20年から23年にかけて、ライブコマース業界の投融資活動は活発でありつづけた。投融資の状況は、投融資の対象が創業から日が浅く、事業の確立や市場での地位確立を目指すBラウンドまでの段階や、将来を見越した戦略的投資に集中していた。投資対象の分野には、農村ライブコマース、ライバーを支援するMCN、医療美容ライブコマースなどに細分化する特徴もあった。
ライブコマースについては、視聴者側が購入する商品や商品種を特定していない状態で鑑賞し始める場合が多い特徴がある。すなわち、ライブコマースには消費ニーズを創造する側面がある。市場調査を手掛ける艾瑞市場諮詢(i-research)によると、消費者の49.9%が、ライブコマースを視聴する目的を「興味を持てる商品を見つけるため」との考えを示した。ライブコマースはこのような性格などのために、販売側にとっては、消費者のニーズを迅速に知ることで、業務の効率を向上させられる効能もある。
ライブコマースのプラットフォームとして注目されているのが、快手(クアイショウ)だ。快手の売上高は競合他社を大きく上回っており、22年にはライブコマースによる売上高で、成長を遂げた唯一の企業だった。23年には、快手のライブ配信カテゴリーは425種類を超え、ライバーによる1日当たりの配信時間は前年同期比で30%近く増加した。
ライブ配信業界が直面する課題としてはまず、当局による監督の厳格化が予想以上に速いことがある。このため、配信側には規則順守、コンテンツの質の向上、技術革新の強化が強く求められるようになった。
ライブ配信業界では業界の急成長に伴い、関係者の質にばらつきが発生して、脱税や偽造品の販売という問題も発生した。今後は質の低い業者は淘汰されると考えられる。業界では一方で、「ライブ配信の競争力の中核はコンテンツの質」とする考え方がかなり定着した。今後は専門的でしっかりとした知識を伝えるライブ配信コンテンツがさらに多く登場し、消費者により高付加価値のショッピング体験を提供するようになるはずだ。
ライブ配信をする側には、技術力及び技術を駆使する能力も強く求められている。ライブ配信は同時性という性質上、例えば屋外で撮影している場合の天気の変化などの突発事態にも対応せねばならない。また、ネットワークへの安定した接続や映像や音声の質の確保、さらには時間管理なども必要だ。事前の計画と突発事態に対する対処法の設定、さらに実際に対処する能力の獲得は、配信側に突き付けられる厳しい課題だ。
前出の「電子おひねり」は現在も、ライブ配信業界にとって極めて重要な収益源だ。業界規模はすでに、高度成長期から安定成長期に移行したが、娯楽系コンテンツ配信に端を発した「電子おひねり」は今も、ライブ配信プラットフォームにとって最も主流の収益モデルだ。
得られる「電子おひねり」の多寡は、出演するライバーの人気の影響を直接に受ける。その背景には、ライバーおよびスタッフによるコンテンツ制作の技がある。そしてライブコマースは、「電子おひねり」で収益を得るシステムから派生して進化したものだ。すなわち商品の売れ行きはライバーの人気やコンテンツとしての質に大いに関係する。ということは、商品を販売する企業もプラットフォーム側もライバー及びライバー側組織を尊重せざるをえなくなる。
これまではプラットフォームの発言権が極めて強く、ライバーの活動を制約する場合があったが、今後はライバーが複数のプラットフォームを情報発信の場として選ぶことも増えるだろう。そして販売側、ライバー側、プラットフォーム側が利益の共有でこれまで以上に強く協力したり、ライバーの「スター化」を図ることも増えるだろう。
ライブコマースなどが扱う商品は、求人や婚活、不動産関連など、さらに多様化しつつある。ライブ配信の撮影場所はスタジオにとどまらず、さまざまな場所に広がるだろう。プラットフォーム側は、コンテンツの内容や形式をさらに多様化させ、内容に深みがある配信を増やすなどで多くの人々のニーズを満たすことで、視聴者をより多く得ることを目指すようになるだろう。(翻訳・編集/如月隼人)
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