上海嘉世営銷諮詢有限公司 2024年10月27日(日) 14時30分
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中国では茶系飲料、とりわけ店舗などで最終完成させる飲料の市場が急拡大している。課題は残るが、今後は中国国内だけでなく、東南アジアなどでの急速な浸透も大いに期待できるという。
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商品としての飲料は2種類に大別できる。工場などで容器に詰めるまでの全工程を終えて販売店などに運ばれてくるものと、販売店などの現場で商品としての「製作」が完了するものだ。中国では後者が「現製飲料」などと呼ばれる。本稿は、上海に拠点を置いて市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司(MCR)による「2024年現制茶飲料市場簡易分析報告」の主要部分の一部に日本人読者向けの情報を追加するなどで再構成したものだ。
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中国では1990年ごろから粉末飲料が普及した。96年ごろからは、従来型のチェーン店が増え、飲料を買う人も増えた。2016年ごろからは「新茶飲」と呼ばれる状況が生まれ、素材はより高品質になり、ブランド構築や流通の管理も全面的に進化した。
今の現製茶飲料は茶葉を基本にして各種天然材料を使った飲み物だ。飲んだ際の満足感や健康関連の特徴、種類の多さなどでボトル入り飲料、特に茶や果汁系飲料から顧客を奪いつつある。
現製茶飲料は5年前から急成長を始め、現在の年間売り上げ規模は2000億元(約4兆3000億円)を超えた。2001-25年の年平均成長率は7.6%と予測されている。特にテイクアウトや宅配型の店での売上高は年平均成長率26%を維持して、27年には3476億元(約7兆4000億円)に達するとの見方がある。
現製茶飲料は価格帯によって市場シェアの構成が違う。低価格帯と高価格帯では上位企業が強力な地位を築いており、中価格帯では多くの企業が激しく競争している。中価格帯の茶飲料ブランドが立ち上げられた時期は短期間に集中しており、各ブランドともに同様に市場の発展の機会を得たので、それぞれの市場占有率の差は比較的少ない。さらに、かつては高価格帯だった喜茶や奈雪的茶が価格帯を下げたことで、中価格帯では競争が改めて激化した。
中国にある現製茶飲料を販売する店舗は38万軒を超え、チェーンブランドは3000を超えた。上位5位のブランドの店舗数は全体の15%で、上位10位では20%だ。競争が最も激しいのは華南地区で、それぞれの地域にそれぞれのトップブランドが存在する状態だ。
現製茶飲料で広域展開をしているブランドは少ない。大きな原因は、生鮮果物の調達と輸送距離の制約だ。広域展開が比較的進んでいる蜜雪氷城は、レモンやオレンジなどの輸送や貯蔵が容易な果物に頼る手法を採用している。
高価格帯の茶飲料には価格を下げる傾向がある。10-20元(約214-430円)の中価格帯は需要が最も大きく、22年のシェアは茶飲料市場シェア全体の44.8%だったとの調べもある。低価格帯は需要がさらに大きいはずだが、ペットボトル類との競合にさらされている。
中国で商品として販売される茶系飲料は長い間にわたって加糖のものが多かった。しかし北京、上海、広州、深センなどの「一線都市」と呼ばれる大都市では無糖の茶飲料を選ぶ人が急速に増えている。これらの都市ではすでに、茶系飲料を愛飲する人の40%程度が無糖の商品を選ぶとされる。
一線都市にある現製茶飲料を提供する店舗は人口100万人当たり460軒程度だが、「三線都市」と呼ばれる地方の中小都市では247店舗だ。三線都市あるいはさらに小さな都市部での22年の現製茶飲料の小売額は732億元(約1兆6000億円)だったが、28年には2739億元(約5兆9000億円)に達して、中国全国の現製茶飲料の小売額の51.5%を占めると予測されている。
現製茶飲料は嗜好品であり生活必需品ではなく、消費者の主力は若者層だ。そのため、さまざまな要因により需要が大きく変動する可能性がある。また今のところ、若者層以外への訴求力もさほど大きくない。
また、現製茶飲料ブランドは一般的に、フランチャイズ方式で店舗数を増やす戦略を採用している。その結果として、ブランドの統一管理が不十分である場合がある。著名ブランドと思わせる偽の広告を出してフランチャイズ加盟店を集める事件も発生したことがある。
さらに飲食店関連店をチェーン展開する場合には、サプライチェーンの状態が店舗拡大、製品の開発、および収益力に決定的な影響を与える。現製茶飲料業界では現在のところ、サプライチェーンの上流部分が「中小企業が乱立」の状態なので、供給が不安定になりやすく、供給側の各企業が規模効果を発揮できないので全体として高コストになりやすく、さらにはブランド側の意思の徹底が困難という問題がある。
業界にはとりわけ強大なけん引力を持つ企業が見当たらず、地域性や季節による制約を受けるなどで、競争原理が働きにくい状態だ。さらに、中国のコールドチェーン物流システムの整備は相対的に遅れており、産業チェーンにおける情報の共有が不十分であることも、現製茶飲料のサプライチェーンの発展の大きな課題だ。
また、現製茶飲料業界のいくつかのブランドで、消費期限切れの食材を使うなどの問題が発生した。本格的な健康被害を出しかねない事態であり、消費者による現製茶飲料への信頼を失うという、業界全体にとっての損失だった。また、基準を満たした食材を使わなければ、ブランド側が研究開発した風味を出せず、消費者の現製茶飲料に感じる魅力を低下させてしまうことにもつながる。
現製茶飲料業界では、多くのブランドが健康面に注目するようになった。例えば霸王茶姬は、30種以上の商品全てのカロリーを表示するようになった。茶百道はミルクティー系商品で植物由来の油脂を使わず、健康面に影響のあるトランス脂肪酸の含有量がゼロであることを強調している。
中国は世界で最も早く茶の飲用が始まった国であり、千差万別の茶の飲用方法が出現した国でもある。そのため現製茶飲料では、「伝統を応用した新たな飲み方」が多く出現している。健康志向を反映して、中国の伝統薬を茶に配合した飲み物もある。
中国では一時期からコーヒーが急速に普及したことで「茶文化は地位低下か」などとも言われた。しかし茶文化は、伝統に新たな部分が追加されたのであり、茶の飲み方の選択肢も飲む場所の選択肢も増えた。すなわち、茶文化は一層広がった。現製茶飲料を提供する店舗でも「新たな体験を提供する空間づくり」が盛んだ。このことも、茶を味わう際の周辺環境も茶文化の一部とみなした中国の伝統に合致している。
茶の風味については「爽やかで苦みが弱い」がトレンドだ。その背景には、大都市を起点に始まった無糖の茶系飲料の流行がある。どのブランドも無糖の商品でファンを獲得したい。しかし、これまで加糖の茶系飲料に慣れてきた人の場合、苦みが強過ぎたら抵抗感があるだろう。「爽やかで苦みが弱い」商品への注力は、顧客層を拡大するための戦略だ。
最後に、現製茶飲料業界では海外進出の動きも目立つ。特に注目されているのが、東南アジア市場だ。例えば、中国での国民一人当たりの現製茶飲料の年間消費量は18杯で、東南アジアでは13杯だ。一方で、先進国では平均260杯にまで達する。国民一人当たりの現製茶飲料の2028年における年間消費量は中国では52杯に、東南アジアでは36杯に達するとみられている。いずれも基数が小さいだけに大きな成長が望める市場だ。
現製茶飲料を提供する中国企業が海外に進出する際には、商品の現地化と中国ブランドならではの差別化のバランスを取る必要がある。中国で定着した「健康志向」を前面に出すことも有効だろう。(翻訳・編集/如月隼人)
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