中国・江蘇省南京市の地下鉄車内で座席をめぐって高齢男性が妊娠中の女性を引っ張る出来事があった。

中国メディアの極目新聞などによると、騒動が起きたのは21日午前8時前。南京地下鉄2号線の車内で高齢男性が優先席に座っていた妊婦に席を譲るよう要求したが拒否されたため、男性は妊婦を罵倒し、強引に引っ張って立たせようとしたという。

現場で撮影された映像には、複数の男女がもみ合う様子や「おなかに子どもがいるんだ」「たたくな、たたくな」といった声が収録されていた。現場にいた人によると、若者が2人の間に割って入って高齢男性を制止したほか、周囲の乗客たちも協力して妊婦を守ったという。

目撃者の虞（ユー）さんは「高齢男性は最初、（席を譲らせようと）私の友人を引っ張り罵倒していたが、友人が携帯電話で撮影を始めたことに気付くと、ターゲットを妊婦さんに変えた」と話した。席を譲ってもらえなかった高齢男性は嫌がらせとして、自分の孫娘に妊婦の足元に荷物を置くよう指示。それでも妊婦が席を立たなかったため、暴言を吐き、強硬手段に出たという。

今回の件について駅係員や警察への連絡・通報はなかったというが、地下鉄運営会社は「同様の状況に遭遇した場合は乗務員に連絡したり、ホットラインに電話をしたりしてほしい」と呼び掛けた。

南京市民からは「席を譲るのは善意であり、本来は譲らなくて当然。妊婦だって大変。立って歩ける状態なら高齢者が強引に席を求めるべきではない。若者だって疲れている時がある」「優先席は平等で、どちらが優先ということはない。先に座っていたのは妊婦なので、譲るか譲らないかは彼女に決める権利がある」「暴力はいけない。優先席については、誰が体調が悪いかなど実際の状況によって本当に必要な人は誰か判断するべき」などの声が上がった。

江蘇国頌法律事務所の徐小祥（シュー・シャオシアン）弁護士は「高齢者が公共の場で暴言を吐いたり、妊婦を強引に引っ張って席を譲るよう強要する行為は、公序良俗に反するだけでなく、（暴行という）違法になる可能性がある」と指摘。また、優先席の論争について「特に『専用席』と明記されていない限り、席をどうするかの決定権は先に座った乗客に与えられる。必要な人に席を譲るのは美徳だが、それは自発的なものでなければならない」と述べた。（翻訳・編集/北田）