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中国で9月に新発売の新エネルギー車は8タイプ、純EVは限界か

高野悠介    2024年9月28日(土) 16時0分

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9月に中国市場に8タイプの新エネルギー車が投入される。写真は「極越07」。

9月に中国市場に8タイプの新エネルギー車が投入される。9~10月は「金九銀十」と呼ばれる書き入れ時だ。新年度や国慶節連休は新商品の購入意欲が高まるが、乗用車市場はあまりにも混沌としている。政策がレッドオーシャンをさらに引っかき回している。新しい車は売れるのだろうか。1車ずつ分析してみよう。

買い替え補助金政策を強化

中国汽車流通協会乗用車市場信息聯席分会(乗聯会)によると、中国の8月の乗用車販売台数は前年同月比1%減の191万台だった。新エネルギー車(EV、PHEV、燃料電池車)は同42%増の101万5000台で、初めて100万台を突破した。中国メディアは関連政策の有効性が反映された結果と報じた。政策とは7月25日に発表された「大規模設備更新と消費財の買い替えへの支援強化に関する若干の措置」を指す。旧車の廃棄と買い替えを促す補助金政策だ。新エネルギー車に対する補助金が5000元(約10万円)上乗せされ、最大2万元(約40万円)となった。4月に開始されたばかりの政策をさらに強化したものだ。市場は反応し、入門レベルの純EVやPHEVが力強く成長した。8月末の段階で、補助金申請は80万件に上る。しかし、8月の乗用車市場全体では前年割れに終わった。

吉利汽車が攻勢

吉利汽車の2024年上半期の販売台数は95万5000台で、BYDの160万7000台、奇瑞汽車の105万7000台に次いで3位だった。9月には三つの提携チャンネルから新車を発売し、攻勢を強めた。

領克Z10

領克(LYNK&CO)は9月上旬に純EVセダン「領克Z10」を発売した。領克は2016年にスタートした吉利とボルボの合弁による高級車ブランドで、これまでに累計100万台を販売している。今回のZ10は同ブランド初の純EVで、ベーシックグレードは21万5800元(約432万円)から。魅力的なエクステリアだが、競争は厳しい。

極越07

極越は9月上旬に中大型セダン「極越07」を発売した。極越は吉利汽車とIT大手の百度が設立した自動運転を意識した高級スマートカーブランドで、23年8月に1号車の「極越01」を発表した。全長4900mm、ホイールベース3000mmとかなりの大きさ。今回の「極越07」は2号車だ。

極氪7X

極氪(Zeekr)は9月下旬に大型SUV「極氪7X」を発売する。極氪は吉利汽車の高級EVブランドで、運営は21年設立の浙江極氪智能科技が担当する。21年4月に1号車の「極氪001」を発表した。従来のセダンとSUVの概念を破ったデザインの美しさ、動力性能、運転の楽しさなど高い総合性能を持つ。今回の007はその廉価版に位置付けられる。

■新勢力系

楽道L60

楽道(ONVO)は9月上旬に中型セダン「楽道L60」を発売した。楽道は蔚来汽車(NIO)の第2ブランドで、L60はその1号車だ。中型SUVで価格は20万6000元(約412万円)から。バッテリーレンタル版は14万9000元(約300万円)だが、レンタル料がかかる。蔚来汽車は2014年設立の「造車新戦力」の代表格で、創業者の李斌(リー・ビン)氏は自動車サイト「易車網」を立ち上げた実績を持つ。国有の江准汽車、奇瑞汽車とパートナーシップを結び、EVを開発している。しかし、2024年上半期の販売台数は8万7000台にすぎない。サブブランドは早すぎるが、蔚来は高級、楽道はファミリーと位置付けているという。

全新智己LS6

智己汽車は9月末に中型SUV「LS6」の新バージョンを発売する。智己汽車は20年に上海汽車、張江高科、アリババの3社により設立された。目的はSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル=外部との双方向通信で車を制御、ソフトウェアは随時更新)を模索することだ。24年1月に上海地区の主要道路でオートパイロットアシストを基本的に実現した。新型LS6は4900mmと大型で、価格は22万9000元(約460万円)から。予約開始から10日で1万5000台を突破するなど好調だ。

ファーウェイ

AVATR07

AVATR(阿維塔)は9月上旬に中型SUV「AVATR 07」を発売した。純EVとレンジエクステンダーの2本立て。AVATRは国有の長安汽車、ファーウェイ、宇徳時代(CATL)の共同による高級スマートカーブランドで、「AVATR」は化身を意味している。「AVATR 07」は22年の「AVATR11」、24年3月の「AVATR12」に続く3車目だ。「AVATR11」は純EVの高級SUVだが、ヒットした。「AVATR07」は「AVATR11」の進化版のような存在で、レンジエクステンダーを付加したのがミソだ。

ファーウェイ系別ラインの問界シリーズではPHEVの「問界M7」、レンジエクステンダーの「問界M9」がヒットしており、これに倣うのだろう。

■GMとBYDの大衆車クラス

宝駿雲海

宝駿は9月末に小型SUV「宝駿雲海」を発売する。宝駿は上海汽車、米ゼネラルモーターズ、広西汽車(前身は柳州五菱汽車)の三者合弁企業の上汽通用五菱のブランド。上汽通用五菱は4万~8万元(約80万~160万円)クラスの超小型自動車のトップランナーだが、2010 年に小型車と輸出を見据えた第2ブランドの宝駿を立ち上げた。宝駿雲海はPHEVが12万1800元(約244万円)から、純EVが13万5800元(約272万円)からと、同社にとって最上級クラスの車だ。

海豹06GT

BYDは9月下旬に「海豹06」を発売する。中小型の純EVワゴンで、躍動感のあるスタイリッシュなデザインだ。5月に発表された新型の純電動車用プラットフォーム「e-Platform 3.0 evo」を使用する。これには12項目の世界初採用の技術を取り入れた。全長4600mmで、15万元(約300万円)台のコスパの高いファミリーカーだ。

■純EVの苦戦が鮮明に

純EVの20万~30万元(約400万~600万円)クラスは、シャオミSU7、テスラModel3、極気007、星紀元ES、智己L6、智界S7など最大の激戦区となっている。

乗聯会が指摘する通り、販売の焦点が15万元(約300万円)以下の入門タイプ小型EVとPHEVだとすれば、9月に新車を発売したBYD、AVATR、宝駿は有望だ。20万元(約400万円)以上の純EVで勝負する企業は難しい。何しろ国内ブランドで純EVが黒字の企業は一つもない。この「金九銀十」で明暗がさらに分かれることになるだろう。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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