台湾映画「郊遊 ピクニック」、ツァイ・ミンリャン監督に聞く「映画上映に革命を」

Record China    2014年9月5日(金) 14時21分

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5日、台湾映画界の巨匠、ツァイ・ミンリャン監督最後の長編作品「郊遊 ピクニック」が6日公開される。作品写真:(C)2013 Homegreen Films & JBA Production

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2014年9月5日、台湾映画界の巨匠、ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督最後の長編作品「郊遊 ピクニック」が6日公開される。突然の引退表明から1年。新たな表現の道を探る監督は「若い人に作品を見てほしい。映画上映に革命を起こしたい」と語った。

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昨年秋のベネチア国際映画祭。突然の引退表明は内外に波紋を呼んだ。まだ50代で働き盛り。「郊遊」は同映画祭で審査員大賞を獲得した。監督は発言を振り返る。「映画作りは神が定めた運命と思ってきた。しかし、もう創作意欲が湧いてこなくなった」。ビジネス優先の映画界に疲れたという。「郊遊」で「十分納得いくものができた」とも感じていた。

デビューから20年余り。集大成となる「郊遊」の主演は、長編10作品すべてに出演した盟友、リー・カンション(李康生)だ。リーは子供二人を持つ男を演じる。男は不動産広告の看板を持ち、1日中幹線道路に立つ。子供たちはスーパーの試食で空腹を満たす。住み家は薄暗い空き家。3人は公衆トイレで体を洗い、薄汚れた寝床で寄り添って眠る。そこへ3人の女が絡む。彼らの行動の理由も、関係性も説明されない。時系列も判然としない。都会の孤独と愛への渇望。無駄が極限まで削られ、見る者の数だけ解釈が生まれる作品だ。

「映画の固定観念を捨てられるようになった。物語、せりふ、音楽。さまざまな形式を捨てた。すべての焦点をリーの顔に絞った」

娘が買ってきたキャベツを、男がむさぼるシーンがある。キャベツには人の顔が描いてある。胸に抱き寄せ、ばりばりと食べる。涙を流す。そこには監督とリーの20年があった。

「彼の顔は時間の概念だ。ある物体が被写体になり、私はそれを撮ってきた。彼の演技は、演技を捨て去っている。彼は20年間キャベツを食べ続けた。それがあのシーンに凝縮されている」

長編映画製作からは引退するが、創作意欲は衰えていない。リーは静かに言った。「たまたま体調が悪かったので、『これで最後にする』と言ったのだと思う」。その証拠に、監督はリーを主演に新たな短編シリーズを撮り始めた。題名は「ウォーカー」。世界各地を舞台に、ただ「歩く」リーをカメラに収めている。

新しい映画上映の方法も模索中だ。作品を美術品として、美術館で展示上映する。監督は打ち切りを心配せず「じっくり観客に作品を見せられる」と説明する。8月初めには、リー主演で舞台「玄奘」も上演した。

「新しい観客を発掘したい。若い人にはチケットを安く設定し、繰り返し来られるようにする。美術館でリラックスし、自由に見てもらいたい。美術館で上映することで、映画の革命を起こしたいんだ」

ツァイとリーの挑戦は続いている。(文・写真/遠海安)

「郊遊 ピクニック」(2013年、台湾)

監督:ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)

出演:リー・カンション(李康生)、ヤン・クイメイ(楊貴媚)、ルー・イーチン(陸奔静)、チェン・シャンチー(陳湘[王其])

2014年9月6日、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。

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