最近の北朝鮮による韓国に向けた汚物風船の散布を世界のメディアも大きく取り上げている、と韓国紙が報じた。中には「北朝鮮は金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長の腹違いの兄、金正男（キム・ジョンナム）氏を暗殺するために使った生物化学兵器を大量に備蓄している」と注意を喚起する記事もあった。

ハンギョレ新聞によると、米紙ニューヨーク・タイムズは「なぜ北朝鮮はゴミ風船で韓国を爆撃したのか」という見出しの記事を掲載。「北朝鮮が5月28日から非武装地帯（DMZ）を越えてゴミ風船約1000個を飛ばした」とし、「風船から落ちた（ゴミ）ビニール袋は自動車のフロントガラスを粉々にするほど重かった」と紹介した。

また「ほとんどの韓国人はこの事件を北朝鮮のいら立たしいいたずらと捉え、落ち着いた態度を維持した」として、韓国の雰囲気も伝えた。風船に触らず、軍部隊または警察への通報を呼び掛けた政府の指針については、2017年2月にマレーシアで起きた金正男氏暗殺事件を例に北朝鮮の生物化学兵器に注目した。

米AP通信は北朝鮮が汚物風船を散布した背景に、一部の脱北者団体による北朝鮮へのビラ散布があると指摘。「これは反北朝鮮ビラを飛ばす（反北朝鮮団体の）活動家に対する北朝鮮の報復」とした。

英紙ガーディアンも同様に「北朝鮮は韓国の活動家たちが反北朝鮮ビラを付けて飛ばす風船に長い間怒りをあらわにしてきた」と説明。「それらの風船には時々現金やコメ、韓国ドラマの入ったUSBドライブなども含まれた」と述べた。

英BBCは数十年間にわたり南北が行ってきた「ビラ散布心理戦」に言及。「1950年代の朝鮮戦争以降、南北ともに宣伝戦に風船を利用してきた」「韓国の活動家たちは反北朝鮮宣伝物のほかにも現金、北朝鮮で禁止されているメディアコンテンツと韓国のお菓子『チョコパイ』を入れた風船を飛ばした」と付け加えた。

北朝鮮が2日に南に向けた汚物風船散布を暫定中断する方針を明らかにした中、脱北者団体の「自由北韓運動連合」は3日、「（北朝鮮が汚物風船の散布で）あらゆる悪行を働き侮辱した5000万の（大韓民国）国民に対し、心から謝罪するなら、私たちも（対北朝鮮ビラ散布の）暫定的な中断を考える」と表明したが、6日未明に再び飛ばした。

これに先立ち、北朝鮮のキム・ガンイル国防次官は2日夜、「われわれは国境を越えてゴミを散布する行動を暫定的に中断する」としながらも、「ただし、韓国の連中が反共和国ビラ散布を再開した場合、発見される量と件数によって、100倍の量のゴミと汚物を再び集中的に散布することで対応する」と警告していた。（編集/日向）