ファーウェイが反撃開始、「一味違う」ハーモニーOSはどこまで勝ち進めるか

Record China    2023年8月25日(金) 6時0分

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8月にはファーウェイをめぐる良い情報が目立つようになった。まず2年連続で落ち込んで来た売上高が増加に転じた。独自開発のハーモニーOSの新たなバージョンが発表された。

米国などの制裁により厳しい状況が続いてきた華為技術(ファーウェイ)だが、8月になると良い情報が目立つようになった。まず2年連続で落ち込んで来た売上高だが、11日に発表した2023年上半期(1-6月)の中間決算では、通信会社向け事業、(その他の)企業向け事業、端末事業という同社の三大事業分野がいずれも回復して、売上高は前年同期比3.1%増の3109億元(約6兆2000億円)だった。

また、同社が中間決算発表に先立つ8月4日に行った開発者会議では、自社開発の「ハーモニーOS(HarmonyOS、鴻蒙OS)」の新たなバージョンであるハーモニーOS4.0が発表された。同社がハーモニーを初めて発表したのは2019年で、ハーモニーOS4.0の発表に際しては同社端末BG(ビジネスグループ)の余承東CEOがハーモニーOSの開発を始めて以来の苦労を語った。

HarmonyOS4ではグラフィック、マルチメディア、メモリ、スケジューリング、ストレージ、低消費電力などの性能が大きく向上した。操作性が約20%向上し、バッテリー駆動時間は約30分延びたという。また、一般的な操作の反応速度も改善され、カメラの起動速度は約57%向上した。さらにはデバイス間の情報共有能力も強化されたという。そして余CEOによると、ハーモニーOSを搭載した機器はすでに7億台を超え、開発者数は220万人を超えた。

ハーモニーOSに先行するOSとしては、マイクロソフトのウインドウズ、アップル社のmacOSとiOS、グーグルのアンドロイドがある。これらのOSとハーモニーOSの極めて大きな違いは、開発当初からIoT(モノのインターネット)での利用を強く意識してきたことだ。

ファーウェイの事業分野で、米国などの制裁により受けた影響を最も強く受けたのはスマートフォンなどの消費者向けの製品だった。例えば西側先進国でしか製造できない部品の調達が困難になったことは大打撃だった。ファーウェイはその後、他の事業者向けの分野にとりわけ力を入れるようになった。例えばデータセンターの展開、クラウドビジネス、さらにデジタル技術で鉱山の重労働の消滅や作業員削減や無人化を目指す事業、さらには自動車メーカーに対する技術協力などだ。

これらの分野はいずれもIoT技術の活躍の場だ。ファーウェイはすでに2021年9月に、炭鉱事業や電力事業を手掛ける国家能源集団と共同で、ハーモニーOSを鉱山事業に特化させたHarmonyOS For Mining(ハーモニーOS・フォー・マイニング)を発表している。ファーウェイはかねてから、デジタル事業で「社会のすべてをつなげる」ことを企業目標にしてきた。ハーモニーOSには今後3年間でさらに100億元(約2000億円)を投資して、ハーモニーOSを通して携帯電話、PC、タブレット、自動車、ウェアラブルデバイスなどすべての端末を連結できる状況を構築する考えだ。

スマホの販売でも大復活、10月には5G機種を発表か

かといって、ファーウェイがスマートフォン分野でのかつての栄光の「奪還」を断念したわけではない。同社の中国国内のスマートフォン市場におけるシェアは2019年からほぼ半減した。かつてはトップだったシェアは、「その他大勢」に分類されるようになってしまった。2022年には同社の端末事業が、全社の中で売上高が前年比で減少した唯一の部門だった。

しかし2023年第2四半期には状況の変化が鮮明になった。ファーウェイのスマートフォンの出荷台数は前年同期比76%増で、伸び幅はスマートフォンの主力メーカーの中で最大だった。シェアは前年同期よりも5.7ポイント上昇して13%に達し、小米(シャオミ)に並んで5位になった。

中国では多くの業界関係者から、ファーウェイは今年通年の携帯電話の出荷台数を、年初時の3000万台から4000万台に引き上げたとの声が聞こえて来る。昨年の販売数の2800万台と比べれば、売り上げ台数の43%増を目標に据えたことになる。中国では携帯電話の売り上げが伸び悩んでいるだけに、ファーウェイの躍進は目立つ。

なお、中国では、ハイエンドのスマートフォンが携帯電話市場全体の低迷の影響をさほど受けていない状況がある。ファーウェイは2003年3月に発表したスマートフォンの「P60」と「MateX3」の好調で、600ドル(約8万7000円)以上のハイエンド市場でアップルに次ぐ2位の出荷台数を記録した。

これまでファーウェイのスマートフォンについて「大きな問題」とされてきたのが、部品調達が困難であるために5Gに対応する機種を出せないことだった。しかし中国では、、ファーウェイが間もなく5G対応型のチップを使えるようになるとする報道が相次いでいる。業界では、ファーウェイが早ければ10月にも5G携帯電話を発表するとの予測が出ている。さまざまな兆候は、ファーウェイの携帯電話事業が上昇軌道に戻りつつあり、国内携帯電話市場の最大の変数となっていることを示している。

OSの開発と普及に成功してこそ「真の強者」

中国国内だけを見ても、ここ数年はアリババ、京東、テンセントバイトダンス美団などの大手IT関連企業は「すべてのモノをつなぐ」という方針を強化している。ただし独自にOSを研究開発してきたのはファーウェイだけだ。

インターネット業界では、「デジタルビジネスの究極の競争は、あくまでもOSの競争だ」との見方があるという。世界を代表するOSの開発を実現した企業がアップル、グーグル、マイクロソフトであることを見ても、独自OSを持っていてこそ「真の強者」になれるとの見方が成立する。

もちろんOSの開発は容易ではないし、極めて優秀なOSを作り出しても、世の中に浸透させられなければ投じた巨額の資金が無駄になるというビジネス上のリスクもある。ファーウェイが独自OSの開発と普及に乗り出したことは「かじりつくのが難しい硬い骨をかじろう」とする挑戦のようにも見える。しかし成功すれば極めて大きなリターンを得られることは間違いない。

「量の壁」を突破するための戦略とは

もちろん、独自開発のOSを普及させるファーウェイの「挑戦」は一筋縄ではいかない。米調査会社のカウンターポイントによると、2023年第1四半期に、全世界における市場シェアは78%で、中国市場では72%だった。iOSのシェアはいずれも2割程度だ。しかしハーモニーOSのシェアは全世界で2%で、中国国内でも8%にとどまる。ハーモニーOSが「量の壁」を打破するのは容易ではないと言わざるを得ない。

ファーウェイの取り組みを見ると、OSについても同社が手掛ける他の分野と同様に「他にはまだ存在しない状況をいち早く出現させる」ことを強く意識していると思える。最初のハーモニーOSの発表後の極めて早い時期に鉱山向けに特化したバージョンを登場させたのもその一例だ。

最新のハーモニーOS4.0では、特徴の一つが音声アシストの小芸(シャオイー)の「進化」だ。小芸では最近になり注目が高まっているビッグモデルAIを利用することで、ユーザーが話す言葉をより迅速に理解して実行するようになった。画像生成機能もあり、例えばユーザーが希望する特徴を持つ壁紙の生成も可能だ。それ以外にも画像認識能力が向上し、さらに文章の作成や要約の機能も備わっている。ハーモニーOS4.0は、初のモバイル端末OSとして世界で初めてAI利用の機能を組み込んだOSだ。(翻訳・編集/如月隼人


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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