Record China 2023年5月29日(月) 9時30分
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22日、中国メディアの中国青年網は「すずめの戸締まり」についての評論を掲載した。
2023年5月22日、中国メディアの中国青年網は「すずめの戸締まり」についての評論を掲載した。(※本記事にはネタバレが含まれます)
「すずめの戸締まり」は新海城監督の最新作。物語は九州に住む17歳の少女「鈴芽(すずめ)」が、「扉」探しの旅をしている青年「草太(そうた)」に出会うところから始まる。
文章は同作が「君の名は。」「天気の子」のスタイルを引き継いでいるとした上で、「作画は繊細で、背景の描写は美しく、比較的王道なストーリーが描かれている。男女2人が主人公で、恋愛感情の伏線も含まれている。しかし前2作と違い、両主人公の感情を浮き彫りにすることはなく、別の部分にこの作品の核心がある。これが、『すずめの戸締まり』が『君の名は。』や『天気の子』よりも感動を与えてくれる理由だ」と評した。
また、「以前、『すずめの戸締まり』は天聞角川(KADOKAWAまたグループ企業の中国における現地法人)の中国語版小説を買って読んだことがある」とし、「最近また映画館で2回目を鑑賞した。繰り返されるシーン、再び与えられる感動、ますます思うところが明確になっていき、感じたものを記録したくなり、これを執筆している」と述べた。文章の著者によると、同作の重要な要素は3点あるという。
文章は最初に「廃墟」を切り口に考察を展開。「この作品では、地震を招く災厄のミミズが無人の廃墟から飛び出してきて封印しなければいけないのだが、『閉じ師』による祝詞に加え、封印の際、ミミズを封印する人はかつてこの地で生活していた人々や情景が頭に浮かぶという設定がある」と紹介し、「これにより観客は思わずわれわれの生活にある廃墟を想起させられる。現代社会の進歩の速さは、人間の生活の場所を絶えず変化させ、低い平屋からマンション、小さな会社から高級オフィスビルのように、貧しさから豊かさに向かっている。しかし、かつて貧しかった私たちを受け入れてきた場所は取り壊され、手付かずのまま廃墟と化してしまっている。感情は、人間や命あるものだけが持っているのではなく廃墟にもある。廃墟には人の記憶や感情といった痕跡が残されており、これらを吸収し、廃墟自体が感情を生み出している。置き去られた時には悔しさを募らせて恨みを抱き、その負の感情が災いを招いているのだ。懐かしさは恨みに対して最も有効で、私たちがいた小さな生活空間をもっと訪れ、座ってみたり、遊んでみたりすることが慰めになるのだ」と述べた。
文章は次に、人とのつながりとその間に生まれる感情に言及。「鈴芽は旅の過程でさまざまな人と知り合い、みんな親切に鈴芽と草太を手助けし、大きなサポート役となった。見知らぬ人との付き合いは誰もが避けて通れないもので、他人のことが分からないと警戒するが、お互いが心を開いていれば、障壁は自然と崩れる。他者から学び、他者とつながりを持つことで、自らのコミュニティーは広がる。人間は100年の生涯にわたってこれを続ける」とし、「鈴芽の母親は早くに亡くなり、叔母に引き取られた。叔母は1人で鈴芽の面倒を見ることに注力し、なかなか恋人を見つけられない。叔母には強い恨みがあり、鈴芽に人生を奪われたと思っているが、恨み以上に鈴芽への愛があった。これは家族愛であり、全てを包み込む優しさだ。私たちは家族から愛をもらうと同時に、愛を与える。身近な家族というのは私たちが寄りかかれる背中のようだ」と評した。
文章は最後に人間の勇気という点から同作を論考。「映画では、歴代の閉じ師がミミズを封印する使命を担ってきたが、それは現実の震災に勇敢に立ち向かってきた人々を象徴している。大震災では、教師たちが統率して生徒を逃がしたが、自分たちは『扉』に押し倒された。ある母親は焼け跡の中で自分の血を子どもに与えて飲ませていたが、発見された時は硬直したまま子どもを抱きしめていた。ある2人は廃墟に閉じ込められ、男性はわずかに残った水を愛する人に譲り、最後は涙で頬を濡らした女性だけが助かった。このような物語を見る度に、自然災害に立ち向かう人間の勇敢さ、生きようとする希望、人のために命を捧げようとする覚悟が、叙事詩のように感じられて胸を打つ」と述べた。
そして、「最も記憶に残り、感動的だったシーン」として、物語のラストで鈴芽が幼い頃の自分に会う場面に言及した上で、「生きていると多くの苦痛があり、時に大きな重圧がのしかかり、未来に対する絶望で満ちることもある。未来の自分が現在の私たちの背を押しに来るような奇跡は起こらないだろうが、私たちは未来の自分に憧憬を抱き、絶望の底にある自分を救うことができる」と締めくくった。(翻訳・編集/柳朱音)
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