<激動の中東情勢>サウジ、イランが中国に急接近、イスラエル右派政権も米国離れの動き

山崎真二    2023年2月25日(土) 8時0分

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中東をめぐる情勢が激動している。イランやサウジアラビアが中国に急接近。イスラエル右派新政権の対米離反の動きも目立っている。写真は習近平国家主席とサウジアラビアのムハンマド皇太子。

中東をめぐる情勢が激動している。イランやサウジアラビアが中国に急接近。イスラエル右派新政権の対米離反の動きも目立っている。

イスラエルでは昨年暮れ、右派政党「リクード」と極右、宗教政党との連立政権が発足した。「リクード」を率いるネタニヤフ氏は一昨年夏に下野したが、ほぼ1年半ぶりに首相に復帰した。ネタニヤフ氏と言えば、思い起こされるのはトランプ前米大統領との親密な間柄。バイデン米政権はネタニヤフ氏の対パレスチナ強硬姿勢を警戒しており、トランプ前政権ほど関係が緊密になるかは疑問。ネタニヤフ首相とバイデン大統領との関係いかんによっては中東情勢に大きな変化が生じる可能性がある。

イスラエル新連立政権で最も注目されるのは対パレスチナ強硬派の極右指導者が入閣したことだ。極右政党「ユダヤの力」党首のベングビール氏が新設の国家安全保障相に就任、さらに別の極右政党の党首が財務相と副国防相に起用された。今度の連立政権が「イスラエル史上最も右寄り」(エルサレムの有力メディア)といわれるゆえんである。

ベングビール国家安全保障相は1月3日、エルサレム旧市街にあるユダヤ教の聖地「神殿の丘」を訪問した。ここの敷地にはイスラム教の聖地でもある「岩のドーム」が存在する。パレスチナ自治政府は「挑発行為」と猛反発。つい最近、エルサレムのユダヤ教礼拝所でパレスチナ過激派による銃撃事件が起きたのも、反イスラエル感情の高まりと関係がある。2000年に「リクード」の当時の党首が「神殿の丘」を訪問したのをきっかけ、パレスチナ人による「第2次インティファーダ(反イスラエル民衆蜂起)」が起きており、ネタニヤフ政権の今後の対応次第では同様の危機再発が懸念される。

サウジ、習近平主席を大歓迎

サウジのムハンマド皇太子の外交にも注目が集まる。ムハンマド皇太子は昨年9月、サルマン国王から首相に任命され、事実上の最高権力者としての地位を一層固めた格好だ。そのムハンマド皇太子が人権問題や原油生産をめぐって米国とギクシャクした関係にあることは周知の事実。そうした折、昨年12月にサウジが中国の習近平国家主席を首都リヤドに迎え入れ、バイデン大統領の訪問時を上回る大歓迎ぶりを示したことは衝撃的だった。

ムハンマド・習会談で包括的戦略協定が結ばれ、両国関係は一段と拡大・強化された。バイデン政権としてはサウジ・中国関係の進展を警戒しているはずだ。米主要メディアによれば、バイデン大統領は報復措置も含め対サウジ関係の全面的見直しに着手するという。ムハンマド皇太子は、2018年にイスタンブールで起きたサウジ人記者殺害事件をめぐり悪化していたトルコとの関係修復を図ったほか、「イランの脅威」を共通のテーマにイスラエルとの関係正常化も画策する。宿敵であるはずのイランとも水面下での接触を始めるなど以前の「アラブの盟主」サウジのイメージからは考えられない外交を繰り広げようとしている。中東問題の専門家の間では「ムハンマド皇太子は全方位外交の展開によって対米離反の度合いを強めるだろう」との見方が広まっている。

イラン大統領が訪中し、20の協力文書締結

イランの動きも見逃せない。イランのライシ政権は米国との「核合意」交渉が暗礁に乗り上げる中、ウラン濃縮活動を強化している。イランのウラン濃縮度は現在、60%に達したといわれ、核兵器に使用できる濃縮度90%に近付いているもようだ。イランが核兵器開発に走ればイスラエルを刺激し、以前から指摘されている対イラン核施設空爆を招く恐れが出てくる。イランによるロシアへのドローン大量供与も懸念材料。イラン製のドローンはかつて、親イランのイエメン武装組織によるサウジ石油施設攻撃に使用されたことでも知られ、技術水準が高いというのが軍事専門家の見方。ドローン不足といわれるロシアがウクライナへの攻撃に使用しているとの説が有力だ。ロシアは見返りにイランに対し軍事的、技術的支援の強化を約束し、対米戦略構築に向け連携を進める構えである。

中国を訪問したイランのライシ大統領と習近平国家主席

こうした中、中国の習近平国家主席は2月14日、北京の人民大会堂でイランのライシ大統領と会談し、米国を念頭に「覇権主義」に反対する考えで一致。観光、通信、貿易、農業など20項目の協力文書に署名した。イラン大統領の中国公式訪問は20年ぶり。習主席は「国際情勢がどのように変化しようとも、イランとの友好協力を揺るぎなく発展させ、全面的な戦略パートナーシップが絶えず発展するように推進する」と言明、経済と政治の両面で関係を強化する姿勢を示した。中国外交部によると、習氏は「外部勢力がイランの内政に干渉し、イランの安全と安定を破壊することに反対する」と強調した。

さらにウクライナ戦争の仲介役で脚光を浴びた中東の地域大国トルコがどのような外交を展開するかも重要なポイント。トルコのエルドアン大統領がスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題で最終的にどう判断するかは今後の国際情勢の行方にも影響を及ぼすことになりそうだ。

■筆者プロフィール:山崎真二

山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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