来日20年で感じた日本社会の変化

武 小燕    2023年2月17日(金) 21時0分

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私は2002年5月に来日しました。それから20年が過ぎ、日本社会が大きく変化したのを実感しています。写真は愛知県。

私は2002年5月に来日しました。それから20年が過ぎ、日本社会が大きく変化したのを実感しています。

その一つは、男性の子育て参加の増加です。来日したばかりの頃は、街や公園で男性が赤ちゃんを抱っこしたり子どもと遊んだりする姿はほとんど見られませんでした。しかし、ここ数年、そのような姿が多く見られ、珍しくなくなっています。去年のある日、友人と名古屋の栄のそば屋でランチをしましたが、その時に注文を取って料理を運んできてくれたのは、なんと抱っこひもで赤ちゃんを抱えている男性でした。料理していたのは奥さんでした。私と友人は思わずその画面に微笑ましくなりました。

2022年のジェンダー・ギャップ指数の日本の順位は146カ国中116位で、依然として低いレベルにあります。女性の政治家や管理職の比率が低いこと、男女の賃金格差、男性が育休を取得するのが難しいなど、ジェンダー平等に向けてまだ多くの課題があります。これらの課題を前に、若者の意識変化は喜ばしいことです。今の若者が社会の中心になった時に日本社会のジェンダー平等はより大きな変化を迎えると確信しています。

もう一つは、外国人住民の増加です。名古屋のような大都市でも20年前には街で外国人の姿をあまり見かけませんでした。しかし、今では大学のキャンパスはもちろん、コンビニや飲食店など街の隅々で外国人の姿が見られます。大学で行った多文化教育の授業で学生らに外国人との触れ合いの経験を尋ねると、小中高校の同級生やバイト先の友人など、深いつながりを持つ学生が少なくありませんでした。来日してから長い間、日本社会では外国人の受け入れに対し、経済界を除き、懸念を示す声が多くありましたが、近年は外国人への理解が進み、多文化共生社会に向けて大きく変化しています。この面では日本社会はより開かれた国になっていると実感しています。

最後は格差社会の広がりです。小泉政権下の構造改革以降、一億総中流だった日本社会が音を立てて崩れていきました。派遣社員などの非正規雇用労働者が増え、大学でも期限付きの教員雇用が増えています。正社員と非正規社員の待遇に最初から格差があるだけでなく、両者の労働条件の違いからその格差は広がる一方です。春闘を期待できる大手企業の正社員と使い捨てさえ逃れられない非正規社員の立場の違いがその一例です。国税庁の2021年民間給与実態統計調査によると、正社員の平均給与が508万円なのに対し、非正規社員は198万円で、正社員の4割程度にとどまっています。高級品が飛ぶように売れているという報道がある一方、子どもの貧困、深夜のコンビニで働く高齢者、雨の中を急いで配達する若者を見かけるたびに、日本社会の「下流化」を実感してしまいます。最近は強盗事件の報道が相次いでいます。治安の良い日本でこうした事件が起きていることをとても異様に感じていますが、これらの事件は社会格差の拡大と無関係ではないと思います。

かつて一億総中流をうたい、資本主義国でありながらも社会主義のお手本のような国だった日本は、とうとう「普通」の国になってしまうのでしょうか。

■筆者プロフィール:武 小燕

中国出身、愛知県在住。中国の大学で日本語を学んだ後、日系企業に入社。2002年に日本留学し、2011年に名古屋大学で博士号(教育学)を取得。単著『改革開放後中国の愛国主義教育:社会の近代化と徳育の機能をめぐって』、共著『変容する中華世界の教育とアイデンティティ』、『歴史教育の比較史』、研究報告書『多文化世帯に生きる子どもたちの言語習得に関する実証研究:愛知県における中国系世帯とブラジル系世帯の比較を通して』などがある。現在名古屋付近の大学で研究と教育に取り組んでいる。一児の母として多文化教育を実践中。教育、子育て、社会文化について幅広く関心をもっている。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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