米国国営メディアのボイス・オブ・アメリカは19日付で、中国政府・国家統計局が発表した都市部における7月の16－24歳の失業率は過去最高の19．9％に達した問題を取り上げた記事を発表した。北京在住の専門家は匿名を条件に「実際にはもっと高い」との見方を示した。

中国国家統計局の付凌暉報道官は15日、7月の各種経済指標について解説する記者会見で、今年になってから「予想を上回る要因の影響で、雇用への圧力がやや強まっている」と述べた。同局発表によれば、都市部における7月の16－24歳の失業率は前月よりも0．6ポイント上昇して、19．9％に達した。

中国国家統計局は2018年1月に、それまでより詳細に失業率を発表し始めた。月ごとの「都市部における16－24歳の失業率」も発表されるようになった、それ以来に発表された平均値は12．5％であり、7月の19．9％は過去最高だった。失業率の高さの原因は中国経済の停滞であり、経済にブレーキをかけている大きな要因は新型コロナウイルス感染症の中国内外での流行だ。

北京市在住の経済専門家であるA氏は匿名を条件にボイス・オブ・アメリカの取材に応じた。A氏は第一の問題点として、中国における若者の失業率が2カ月連続で欧州における数値を上回ったことを挙げた。A氏は、中国における若者の失業率はこれまで、欧州よりも低かったと指摘した。

A氏はさらに、中国における7月の若者失業率は実際には20％を超えているとの見方を示した。A氏は「20％は一般的に心理的ハードルだ」と説明。通常はこの数字を発表したいとは思わず、ぎりぎりの19．9％を示すことで、「20％には達していないから、まあいいか」といった雰囲気を出そうとした可能性を指摘した。

中国の学年は夏休み前の6月に終了する。中国政府・教育部は22年6月には、前年比18．4％増で過去最多の1076万人が大学を卒業したとする統計を発表した。

A氏は、6月時点で職を求める若者について、大卒者が約1100万人、職業学校卒業者が数百万人、高卒者が100万人近く、さらに中学卒業者を加えれば、少なく見積もっても2000万人近くに達すると分析した上で、21年における都市部の新規雇用はわずかに1100万人だったと指摘。16－24歳の若者の失業率は30％程度に達するとの見方を示した。

ニューヨークに拠点を置くNGOの「中国労働者観察」の李強執行主任も、中国の失業率は統計局発表よりも高い可能性があると見ている。李主任は中国国家統計局が発表した失業率について「農村部の数字は示されていない。中国政府は全面的な数字を持っているはずで、われわれが知らないだけだ」と述べた上で「（発表された）この数字を見ているだけでも、中国経済のことが心配になる。数値が高すぎる」と述べた。

李主任はさらに、失業率の高さは中国における製造業全体が大きな問題に直面していることの反映と主張し、「以前にはなかったことだ。以前は若い労働力が出現すると、市場全体が消化してしまった」と述べた。

李主任はさらに、若者の製造業以外の就職先について、大学卒業者なら事務の仕事もでき、貿易の仕事もできる。しかし貿易も縮小した。経験を必要とする経営陣に若者を加えることができないと論じた。

かつては大量の若者人材を求めていたインターネット企業も21年末には、テンセント、バイトダンス、アリババなどの大手が次々に人員削減を始めた。また、かつては塾経営などの教育産業は大学卒業者にとっては大きな就職先だったが、「子どもの負担を軽くする」ことを理由に21年からは塾などの規制を極めて厳しくした。その影響で、教育産業トップの新東方の時価総額は90％下落し、退職した従業員は6万人に達した。その他の教育産業企業も人員を大きく削減した。業界では、雇用への影響は最大で300万人に達するとの試算があるという。

A氏は、今後の失業率の推移については、やや楽観的な見解を示した。まず中国では、大学卒業生がすぐに就職先を決められずに、しばらくは失業状態になることが珍しくない。7月は就職活動のピーク期なので、8月以降は失業率を下げる方向に力が加わる。

A氏はさらに、今年は定年退職ラッシュが続くと指摘。1962年はベビーブームで、新生児が2400万人にも達した。3年前にはこの2400万人が退職期を迎えた。2022年も少なくとも1000万人が退職するので一部のポストは新卒者が得ることになるという。ただし、空席状態になるポストの多くは高級職なので、若者がそのまま同じポストに就けるわけではないという。（翻訳・編集/如月隼人）