<日中100人 生の声>コロナ禍でも楽しいオンライン交流活動に挑戦―五十嵐貞一 日中交流団体役員

和華    2022年5月10日(火) 20時50分

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2004年、日中関係の悪化を憂い、有志とともに中国留学生と日本人との交流活動を行う「NPO中国留学生交流支援立志会」を創立した。写真は植樹9年後第一回友好花見会開催。

コロナ禍の立志会活動を振り返る

2004年、小泉元総理の靖国神社参拝を契機とした反日デモなど日中関係の悪化を憂い、有志とともに中国留学生と日本人との交流活動を行う「NPO中国留学生交流支援立志会」(以下、「立志会」)を創立した。BBQや名所めぐり旅行会、春節新年会、国会見学会などの交流活動を行い、草の根の両国民間の相互理解促進に努めてきた。

2018年秋、世代交代のため、青年部で活躍してきた王紅氏に理事長のバトンを渡し、新しい活動を開始した矢先の2020年に、新型コロナウイルスが直撃した。リアルでの交流が全くできなくなる中、何とか実質的な交流活動を継続したいと皆で模索を続けた。

まず、そんな1年半を時系列で振り返ってみたい。 

2020年1月、武漢でのコロナ蔓延の惨状、日本での感染確認の報に接し、恒例の春節新年会の中止を決断した。

2月、日本青少年育成協会の本田氏(立志会員)らによる中国へのマスクの送付が、「山川異域 風月同天」のメッセージにより大きな話題となった。

3月~5月、その後も会員によるコロナ対応のボランティア活動がテレビで続々取り上げられ、立志会に「利他の精神」が浸透していることを実感し、感激した。

5月、オンラインミニ相談会を開催、会員同士それぞれの困難な状況を話し合い、その中で、アルバイトができず困窮しているとの留学生会員の訴えがあった。

6月、これを受け、立志会の剰余金を取り崩して困窮している会員留学生に特別支援奨学金として支給した。

9月、総会は委任状で行い、今期年会費の徴収停止を決定した。

10月~12月、コロナ禍は収束せず、恒例のBBQ大会、国会見学会も中止に追い込まれた。

2021年2月、春節新年会を、リアル+オンラインで開催した。

3月、浙大友好花見会を、WeChatグループ上で開催した。

特に印象に残ったこと

上記の中で特に印象深かったことを2、3述べてみる。

1.2020年の春節新年会中止の決断:この時点では、一般の危機感は薄く「開催しても大丈夫なのでは」との声が多かったが、一人一人が「接触の機会を少なくし、感染しない感染させないという基本を守るべき」との精神で早々に中止を決断した。

2.2021年の春節新年会:コロナ禍が長期化し、2年連続で中止する訳にはいかないとの思いから、大勢で集まることなく「リアル集会に負けない楽しさ、わくわく感を持った新年会を開催しよう」との旗印の下、立志会の知恵を総動員して万全の準備を行い、リアル+オンラインに挑戦した。

記念に残る春節スクショ集合写真

当日は、本部に王紅理事長以下数名のスタッフが張り付いてZOOM環境が問題ないかなど進行状況に目配りし、中国大使館教育部の陳麗萍参事官、宮本雄二元在中国日本国大使、夏楊全日本中国留学生学友会会長からZOOMによる来賓挨拶を頂き、90歳の行天豊雄立志会特別顧問からは「私達の(草の根活動の)努力が大海に注ぐ一滴であっても本望です」との暖かいメッセージを頂き、画像付きで司会者が代読した。

オンラインのメリットを生かして海外や地方の会員も参加し、楽しい映像画面を作成して会の活動報告や会員の近況報告を紹介、オンラインならではの面白いゲームを豪華賞品付きで実施し、参加者が楽しく交流してくれたとの手ごたえを感じることができた。

3.浙江大学友好花見会:早稲田大学の故木下俊彦教授が日中友好を願って浙江大学キャンパスに2007年に植樹した桜の下で日中の有志が交流会を行うという「日中友好花見会」を2016年から開催し絆をつないできたが、今回は集会ができないので、杭州の茅氏の発案でWeChatグループ「浙大日中友好櫻花林」内で日中の綺麗な桜のシーンを紹介し合い、最後にこれまでの歴史も織り込んだビデオに編集し共有するという趣向で行った。日中各地での美しい桜とそれを鑑賞する姿が多数の会員からアップされ、グループチャットは大いに盛り上がった。なお、このビデオを木下先生のご子息に送付・報告でき、嬉しかった。

今後の課題

今回の模索を通じ、デジタルを活用する交流の可能性を実感できた。今後コロナが収束した暁には、リアルとデジタルを複合した楽しい友好活動を更に発展させてゆきたい。

コロナとの戦いでは、中国政府は、武漢での初動の失敗を経て、デジタル技術(スマホによる健康状態確認システム等)を駆使し、総力を上げて感染状況を把握し感染抑制を図るという強い戦い方を選択した。他方、日本では、個人のプライバシー保護の観点からの懸念、スマホの普及が遅れていること等、政治的・社会的状況の違いがあり、別の戦い方を選択した。コロナとの戦い方に唯一の正解があるとは思わないが、中国がある意味で一足先を走っているデジタル技術の活用を、どう人々の幸せに結びつけることが出来るのか? 人権との兼ね合いにも配慮しつつ、日本でも更に真剣に追及していく必要があると痛感した。

個人的生活

ちなみに個人の生活では、この1年半、会食・外出は、完全自粛。基本的には晴耕雨読、ときどき愛犬との散歩、オンラインでセミナー・会議・公演に参加という生活で、健康的に過ごしている。晴耕雨読では庭の葡萄・イチゴが立派に収穫できたこと、オンライン会合では本年1月、王紅理事長達日中友好の未来を担う立志会の若手有志が、私の79歳の誕生日をZOOMで祝ってくれたことなどが嬉しい思い出となった。

※本記事は、『和華』第31号「日中100人 生の声」から転載したものです。また掲載内容は発刊当時のものとなります。

■筆者プロフィール:五十嵐貞一(いがらしていいち)

若者達とZOOMで祝った誕生会

立志会元理事長。1942年東京生まれ。1964年東大法卒、旧大蔵省入省。在中国日本大使館参事官、防衛庁会計課長、大阪税関長などを歴任。現在、国際空港上屋(株)相談役。2004年NPO中国留学生交流支援立志会を創立、理事長。2018年、後進に道を譲り、現在は、理事長特別補佐として活動に協力している。

※本記事はニュース提供社の記事であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。すべてのコンテンツの著作権は、ニュース提供社に帰属します。

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