中国新聞社 2022年3月28日(月) 5時50分
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北京には、G20諸国の首都として2番目に多い500種の野鳥が生息している。写真は北京市内で観察された野鳥。中国は生物多様性の維持に注力している。
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中国では生物多様性の維持に力が入れられているとされる。その実態はどうなのだろうか。テリー・タウンシェンド氏は、環境保護の活動家で、地球環境に関する国際議員連盟や英国政府の環境・食料・農村省の仕事をした経験もある。タウンシェンド氏はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、自らが目にした中国の生物多様性と保護状況などについて語った。以下はタウンシェンド氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
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■中国は十数年で大きな変化、生物多様性の重要さをはっきりと認識
北京はかつて、「汚染」のイメージが強かった。しかし北京にいる野鳥は500種もある。これはG20諸国の首都としてブラジリアに次ぐ数だ。さらに驚くのは、北京には野生動物が合計で600種近くも生息していることだ。
生物の多様性とは動物と植物が共同で構成する体系だ。さまざまな生物が鎖のようにつながっている。鎖の輪の1つが欠落しただけで全体のバランスが崩れる。過去50年間で、全世界の脊椎動物の種類は以前の68%にまでに減少した。このままでいけば21世紀の中葉にはさらに30%から50%の種が消失する。
人類は自然の一部だ。人類が生活の周囲にいる他の種を滅ぼせば、それは本質的に人類の「命のネットワーク」を破壊することになる。生物多様性の喪失が生み出す公衆衛生の問題や経済社会のリスクは計り知れない。
私は2010年から中国に住んでいる。中国に来た当初から各地を旅行した。東北地方では至る所で鳥が鳴いていた。北京では英国あるいは欧州では見たこともないほど多くの渡り鳥が飛来した。青海省の山々はとても美しく、ユキヒョウ、オオカミ、ヒグマなどの最上位の捕食者がいる。内モンゴルでは夜明けに鳥が一斉に鳴いた。まるでオーケストラのようで圧倒された。四川では世界でも珍しい野鳥やパンダを見ることができた。新疆の生物資源も極めて豊富だった。
中国の東海岸には多くの渡り鳥が飛来する。中国は経済の高度成長が続いていた時期に、黄海や渤海湾において非常に強力な海鳥の保護政策を打ち出した。それ以外にも環境保護の法律を強化しつづけ、野生動物保護などに関連する法律も整備しつづけてきた。中国のエコ文明の思想は、その本質において健全な環境と経済および人の健康の関係を理解したものだ。この十数年間で、中国では多くの変化が発生した。
■貧困地域の住人が豊かな自然に「誇り」を持ち、「収入」も得られる方策
全世界における生物多様性の喪失を阻止する唯一の方法は、多様性の重要さを十分に認識することだ。中国では現在、多くの個人や団体が生物種や生息地域の保護に取り組んでいる。
私自身は青海省玉樹チベット族自治州での生物多様性の保護の活動に関わったことなどがある。現地住民には自然保護の意識があった。私はただ、彼らをさらに後押しする方策を考えただけだ。まず現地政府の協力を得て、現地住民の家に中国各地から来る観光客を宿泊させることを奨励した。現地住民が観光客を案内して野生の動植物を鑑賞させる。それとは別の仕事として、現地住民に写真や動画を撮影してもらい北京の研究センターに送ってもらう。
現地住民は多くの人に生まれ故郷の自然を称賛してもらうことで誇りを持ち、改めて自然保護の価値を認識することになる。そして収入も得られる。中国西部のその他の貧困地域でも、この方法は参考になると思う。
■世界が重視する生物多様性、より幼い子にも意識を定着させるべき
2021年に中国の雲南省昆明市で開催された第15回国連生物多様性条約締約国会議(COP15)では、2010年のCOP15で合意を得た生物多様性の喪失を阻止するための「愛知目標」に代わる新たな目標を採択する「昆明宣言」が採択された。中国の生物多様性の保護は、特定の生物種を対象にするのではない。生態系全体のバランスを維持するものだ。
中国の指導者はエコ文明思想を打ち出した。中国は立法措置を通じて科学的かつ専門的な行動をしており、すでに経済成長と環境保護の間にバランスを見い出したと考える。中国やコスタリカなどの国には多くの良い事例や経験がある。他国は経験を積極的に参考にして、できるだけ多くの経験を再現することが重要だ。
若い世代が生物多様性の保護についてより深く認識し、より多くの責任を負うようにするには、どのようにすればよいのか。私自身は4歳の時に庭で、本当に美しい1羽の小鳥を見た。それを知った両親は鳥に関する本を買ってくれた。私は子供の頃から自然に非常に興味を持っていた。大人になってからは自然に関連する研究や仕事をするようになった。
ある英国人の研究者が、子どもに対する生物多様性保全の教育を今より早い年齢で始めるべきと提案した。私もそう思う。私は、子どもたちの自然に対する好奇心は生まれつきと考える。子どもに幼い頃から自然と触れ合い、生物の種の変遷について、例えば物語仕立てにして語る責任が、我々の世代にはある。さらに面白い物語を見つけ出してくれる人もいるだろう。そして、生物多様性を研究するプロジェクトやチームにも多くの若者が参加することを期待している。(構成 / 如月隼人)
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