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露のウクライナ侵攻で中国はどう出るか=3つのバランスに配慮、「綱渡り外交」余儀なく

山崎真二    2022年2月27日(日) 6時20分

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ロシアによるウクライナ侵攻は今後、中国の対外政策に大きな影響を及ぼすだろう。対露関係を中心に中国外交の行方を探ってみる。写真は中国とロシアの国境黒竜江省の黒河口岸。

ロシアによるウクライナ侵攻は今後、中国の対外政策に大きな影響を及ぼすだろう。対露関係を中心に中国外交の行方を探ってみる。

◆軍事侵攻に対し明確な態度を表明するのか否か

中国はロシアのウクライナ軍事侵攻についてあいまいな態度を示している。中国の習近平国家主席はロシア軍の侵攻2日目の25日、プーチン同国大統領と電話会談を行い、ロシアとウクライナが協議を通じて問題を解決するよう求めるとともに、「各国の合理的な安全保障上の懸念を重視、尊重する必要がある」とも述べ、ロシアの立場を理解する旨表明した。

ロシア寄りの姿勢を見せたとはいえ、軍事侵攻への支持を表明したわけではない。この不明瞭な中国の立場は、プーチン大統領への支持と自国の外交原則および内政問題を考慮せねばならない習近平主席の苦しい胸の内を反映したものといえるだろう。「内政不干渉」を外交原則とする中国が「一つの中国」の立場から台湾問題への米国の干渉を断固拒否している以上、ロシアのウクライナ侵攻を公に認めることはできない。ましてや、ウクライナ東部2地域の”独立”を承認したプーチン大統領のやり方を支持することはありえない。新疆ウイグル、チベット両自治区に影響が及びかねないからだ。

筆者がチェックした欧米の有力メディアでは、中国はロシアのウクライナ侵攻には今後もあいまいな姿勢を取り続けるとする意見が圧倒的だ。英紙「フィナンシャル・タイムズ」は中国がロシアと「微妙な距離」を保つと報じている。

◆欧米の対ロシア制裁にどうかかわるか

周知の通り、バイデン米政権は新たに大規模な対露制裁を発表、欧州各国や日本も足並みを揃えた。だが、中国がこれに同調するのかどうか。中国外交部の華春瑩報道局長が先の記者会見でウクライナ情勢に関するロシアへの制裁措置について問われ、「中国はあらゆる違法な制裁に反対」と述べていることから見て中国が欧米各国の制裁には加わらない可能性が強い。

2014年にロシアがクリミアを併合した際、中国が米国や欧州連合(EU)などが発動した対露制裁に加わらなかったことも想起される。むしろ、中国が人民元を貿易決済に使うなどしてロシアの制裁回避を手助けするとみる中国問題専門家もいる。その一方、中国は欧米の対露制裁についてその効果を見極める絶好の機会ととらえているとする意見も見受けられる。「対露制裁が効果を発揮しロシアが苦境に陥るなら、中国は台湾問題に関しどのように行動すべきか、慎重にならぜるを得なくなるだろう」(英国の中国問題専門家)との見方は説得力を持つ。

ウクライナは中国にとって「一帯一路」構想の有力メンバーで「戦略的パートナー」と位置付けられる重要な友好国とされている。経済分野のほか軍事面でも双方の結び付きが緊密化している。今年1月には習近平主席とゼレンスキー・ウクライナ大統領は両国国交30周年を祝うメッセージを交換したばかり。こうした点からすれば、ウクライナがロシアの軍事侵攻にさらされている現状を中国が大いに懸念していることは想像に難くない。

習主席がプーチン大統領との電話会談で「中国は各国の主権や領土保全を尊重する基本的立場で一貫している」と語ったのは、ウクライナにも配慮する必要性を示唆したと言えるだろう。中国経済に詳しい専門家の一人はウクライナでの中国の重要権益に関し、欧州と「一帯一路」沿線国を結ぶ国際貨物列車、数十億ドルの建設関連契約などを挙げる。ただ、この専門家によれば、中国のウクライナ投資規模や貿易額は相対的に小さいため、ロシア侵攻によるウクライナ経済への影響が中国に及ぶとしても限定的になるという。

米誌「タイム」は「中国は自国の権益が守られる限り、ウクライナ国民に何が起ころうと気にしない」とし、「(ロシアの)攻撃が迅速に行われ、親ロシア政権がウクライナに置かれるとすれば中国にとって悪い結果ではない」といささか冷めた論評を載せている。

プーチン大統領の描く最終シナリオが何かはともかく、ロシアとウクライナのどちらが中国の国益にとってより重要か、習近平政権が判断を迫られる状況を迎えているの確かだろう。中国は当分、ロシアへの肩入れと対ウクライナ関係、そして国際社会への対応という3つのバランスを取りながら、「綱渡り外交」(米紙「ワシントン・ポスト」)を余儀なくされることになりそうだ。

■筆者プロフィール:山崎真二

山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。

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