<横浜での「中国体験」>「建国の父」への熱狂時代を知る新聞記者には衝撃的だった!?

アジアの窓    2022年2月9日(水) 5時20分

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横浜での中国体験です。 伊勢佐木町近くとはおぼろげに記憶していますが、中国の女性がいっぱいいるクラブとパブの中間ぐらいの形式の店に地元の財界関係者に案内してもらったことがありました。

横浜での中国体験です。 伊勢佐木町近くとはおぼろげに記憶していますが、中国の女性がいっぱいいるクラブとパブの中間ぐらいの形式の店に地元の財界関係者に案内してもらったことがありました。ママは中国浙江省出身で、女性たちは10人前後いましたが、みな上海広州など中国各地から日本に留学とか、なんらかのかたちでやってきているとのことです。

チャイナドレスが二人ほどいて、その一人に「どうしてあなたとあちらにいる女性と2人だけがチャイナドレスなの」と聞いてみると、「曜日ごとに交代で2人づつ着るようにしています。ただ、金曜日は全員チャイナドレスなんです」。すると「お客さん、イッパ~イ」。 日本男子の弱いところが、しっかりつかまれてますな。

さて、われらの座席、わたしの右隣りに二人連続で座っている20代前半とおぼしき女性たち(一人はチャイナドレス)はしきりにカラオケをやれという。そこで、こちらもやりますが、「キミたちもなにかやってほしいな」と。一曲響かしたあと、「さあ今度は君たちの番」とリクエストすると、「わたくしたち、日本の歌を知りません」。

「それなら、中国の歌がいいな。『東方紅』(とうほうこう)なんてどう。毛沢東主席(呼び捨てにすると、もし目の前の女性が毛沢東主義者だったりするとひと騒動になりますから)がどうしたとかいうんでしょう」。

文化大革命(1966~1976)当時、ニュースで流れたワンフレーズぐらいしか聞いたことがない。約30年前の懐かしのメロディ、今宵は全曲が聴ける!!

こちらの漢字の発音が、「とうほうこう」でしたので、女性二人はすぐには理解できず、なにかごそごそと北京語らしきで相談しておりました。どうやらこのお客さんが言っているのは、アノことらしい、とか結論がでて、いきなり、響きもあざやかに手拍子とって2人で歌い出しました。もちろん、カラオケ配信のUSENがいかに多数の曲を準備しているとしても、ここまでは手が回らないのでしょう、ですのでアカペラになったというわけです。

「トンツゥーグァン(なにか聞こえたらしきものを適当に表わしただけのもの)、マオツォゥトン」――。この「マオツォゥトン」だけは、実際の発音です。

そこで驚くべきことが起こりました。 一声粛然、中国建国の父、解放闘争の偉大な指導者にして理論家、内戦の偉大な勝利者が歌詞に登場して、中国女性2人は立ち上がり、直立不動の姿勢をとるのかと思いきや、そこで、座ったままゲラゲラ笑い出したのでありました。

笑いは止まらず、歌は「マオツォゥトン」が出たところでおしまいになりました。しかし、江沢民(当時)やそのあとの中国指導者も、毛沢東を国のシンボルと位置づけて国をまとめて、という政策を代々という折に、この日本は横浜における中国女性のこの行動は、どう受け止めたらよろしいのでしょうか。 

毛さんの巨大立像はいまだ各地に残され、人民帽を頭に乗せ、人民マントの裾を風になびき、片手を上にあげて、人民に暖かく呼びかけ、人民を見守っているポーズをとっているのですが、この中国女性たちは、何かあまりありがたみを感じてないようですね。

わが国も巻き込んだあのときの熱狂を知っているある日本の新聞記者にこの話をしたら、ほんとうにタメ息をついてましたな。 横浜でチャイナドレスと戯れているようで、きちんと「現代中国論」のリサーチしていたことをご理解いただければ幸いであります。

その後です。神田神保町の古本屋街を歩いていたら、見つけたのです、文革の、毛沢東賛歌集のLPを。もしやと思って中身をみると、収録曲の一つにありました、「東方紅」が。このLPを買いましたよ、500円で。ただし、もはやLPの再生装置が手元にないもので、まだ聴いてませんが、収録曲の歌詞だけは、あるんですな。調べてはみるものです。「東方紅」は「東方光」だと勘違いしておりました。もちろん頭のなかを修正しました。

それによると、中国女性たちが歌ったのは「中国出了個毛澤東」の毛澤東部分ですな。ここまで来たら、たまらず笑い転げた、というわけです。<訳>東方は紅になり、太陽がのぼる(中国に毛沢東が現われた)

当時、日本でも毛沢東の文革路線に完全にいかれた学者、評論家、運動家、学生がたくさんいたものです。かれらならば、全曲歌えることでしょう。 この中国女性たちのように笑い出すのかな?

なお、その後は足を踏み入れないままにお店も記憶の彼方になってしまいました。まあ、あれから20年、もうユーチューブの時代ですのでここで、初めて「東方紅」全曲を視聴しました。実に賑やかな歌でしたな。

■著者プロフィール:高谷尚志「アジアの窓」編集委員

1946年中国・大蓮生まれ。早稲田大理工学部工業経営学科卒。毎日新聞入社、静岡支局、経済部記者、「週刊エコノミスト」編集長などを歴任。2004年千葉科学大学危機管理学部危機管理システム学科教授。2015年4月よりフリー。

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