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新型コロナウイルスワクチンの接種ペースがようやく上がってきた。政府が目標に掲げる「1日100万回」の接種が軌道に乗れば11月末に対象者の接種率が8割になるという。
新型コロナウイルスワクチンの接種ペースがようやく上がってきた。政府が目標に掲げる「1日100万回」の接種が軌道に乗れば11月末に対象者の接種率が8割になるという。
菅義偉首相は6月9日の党首討論で「10月から11月にかけて希望する人すべてで終える」と目標を掲げた。対象の総数は12歳以上の約1億1500万人。これから1日100万回のペースが続く前提で、過去の実績と進捗から単純に計算すると、11月末には対象の8割の約9200万人が2回目の接種を完了できるという目算だ。
新型コロナウイルスのワクチン接種が、職場や大学で6月21日から始まる。すでに多くの企業が申請しており、接種のスピードアップが期待できる。こうした職域接種は65歳未満の人も対象となり、1000人以上に実施する場合に認められる。大企業による単独実施だけでなく、商工会議所などを通じた中小企業の共同実施も可能になるという。
労働安全衛生法は企業に産業医の選任を求めている。1000人以上が働く事業所で1人、3000人超なら2人以上の専属医を置く必要があり、オフィスや工場に診療所を持つ企業も多い。企業内診療所でワクチンを打てるのなら、労働者は安心である。業務の性質上、在宅テレワークでは仕事ができない人たちが職場で接種できれば、感染防止面で大きなメリットがある。
ただ1000人規模の接種を速やかに進めるだけの医療従事者を抱える企業は少なく、外部の医療機関の助けが必要だ。政府は企業や大学に自力で医療従事者を確保することを求めている。職域接種では65歳未満で市区町村から接種券が届いていない人なども対象になる。企業や医療機関は接種記録を管理しつつ、後日届いた接種券を本人から回収し、国の記録システムに登録する必要があるというがいかにも煩雑だ。もっと簡便な方法がないものだろうか。
政府は職域接種の対象を取引先企業の社員や地域住民などにも広げるよう企業に呼びかけている。会社員は職場、学生は大学など生活スタイルに合った接種拠点はワクチンの浸透に有効だろう。こうした中で、自衛隊が東京と大阪で運営する大規模接種会場で予約が埋まらなくなった。都心のオフィス街という立地が高齢者の居住地から遠いのが一因という。
ウイルスに国境はない。世界のすべての地域で流行を抑え込まねば、再発を繰り返す。豊かな国でワクチンの接種が加速する一方、貧しい国ではほとんど進んでいない。事態を変えるには、先進国を中心とした国際社会の協調行動が求められる。
高齢者の私は身近な診療所で接種を済ませた。スムーズで安心でき、副反応もなかった。特性にあったきめ細かい運用を求めたい。
<直言篇161>
■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。
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