<直言!日本と世界の未来>4~6月期GDP、28%マイナスの衝撃―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年8月23日(日) 8時0分

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新型コロナウイルスの感染拡大で、4~6月期実質GDPが年率27.8%のマイナスに陥った。戦後最大の落ち込み。米国GDPも同期に32.9%マイナスと大幅にダウンしたという。写真は東京。

新型コロナウイルスの感染拡大で、4~6月期実質国内総生産(GDP)が年率27.8%のマイナスに陥った。リーマン・ショック後の09年1~3月期の年率17.8%マイナスを超える戦後最大の落ち込みという。米国GDPも同期に32.9%マイナスと大幅ダウン。一方コロナウイリスの起源国とされる中国はコロナ禍からいち早く抜け出し前年同期比プラスに転じたというから皮肉である。

日本の歴史的大幅ダウンは新型コロナウイルスの感染拡大が本格化して、国内外の経済活動が落ち込んだ影響が直撃したとされる。特にGDPの半分以上を占める個人消費は、国の緊急事態宣言で営業休止や外出自粛が広がったことから大幅に下落。輸出も主力の自動車をはじめ不振で、内外需とも総崩れとなった。

GDPは消費税を10%に引き上げた19年10~12月期にマイナスに転じた。20年1~3月期も前期比年率2.2%マイナスと減少しており、20年4~6月期まで3期連続のマイナス成長が続いたことになる。

年率換算のGDP総額は485兆円。12年10~12月期以来、7年半ぶりに500兆円を割り込んだ。失業率も今年の冬にかけて1%近い上昇が予測され、2年近く厳しい状態が続く見通しという。

新型コロナウイリスの感染者、死者とも世界で最も多い米国の4~6月期GDP速報値は年率換算で前期比32.9%マイナスと、統計開始以来の落ち込みを記録。消費支出も年率34.6%マイナスとなった。ユーロ圏19カ国のGDPは年率換算で40・3%マイナスとなったというから深刻だ。

一方、中国・国家統計局が7月に発表した中国の4~6月期GDPの伸び率は前年同期比3.2%のプラスだった。1~3月期の6.8%マイナスから大幅に伸びた。鉱工業生産は前年同月比4.8%プラスで、3カ月連続で増加した。

世界銀行、国際協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)などの最新経済予測を分析すると、米中逆転が早まり中国が早ければ2025年にも最大のGDP規模になるとの見方が有力という。

IMFの20年の予測では、米国はマイナス8.0%となり、19年のプラス2.3%から大幅に悪化する。大恐慌後の1932年のマイナス12.9%や、第2次世界大戦直後の1946年のマイナス11.6%に迫る景気後退になる。中国は、プラス1.0%と主要国で唯一プラスを維持。米中の差は9.0%に拡大する。21年には米国が4.5%のプラスと好転するが、中国も8.2%とプラス幅を拡大する(3.7ポイント差)。

コロナ禍前のここ数年、米国のGDP成長率は2~3%、中国が6%台で推移しており、米中の差は3%程度だったが、コロナ後はおおよそ4~9ポイント差になる。米国の黒人差別反対デモや感染拡大などは織り込まれておらず、差は今後さらに拡大するという。

以上はあくまでも予想だが、未曽有のパンデミック感染の中で地殻変動が起きつつあるのは確かなようだ。まず新型コロナウイルス感染対策と経済対策に万全を期してほしい。

<直言篇129>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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