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中国の未来を決める都市農村一体化改革、農民の民主的意志決定を引き出す「成都モデル」(2/2)

Record China    2014年2月1日(土) 15時48分

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中国の都市化で欠かせないテーマは、「統籌城郷」(都市農村一体化)です。この方針は2003年の第16期三中全会で打ち出されました。都市と農村の一体化の具体的内容は、農民の都市住民化、農地の都市建設用地化です。写真は中国の農村。

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■新農村建設

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2006年に国土資源部は、都市農村建設用地増減リンク制度を試行し始めます。これは農村の土地を土地建設用地にした場合、どこか別の場所に農地を用意して、建設用地の増加と農地の減少のバランスをとるというものです。

足らない都市建設用地をどのようにかき集め、農業用地をどのように維持するのでしょうか?その答えが新農村建設にあります。簡単に言ってしまうと、城鎮(村)レベルで進められる新農村建設とは、農民を新しく開発したマンションという一部の地域に移住させ、分散していた農民の宅地や行政機関を耕地に転換していくという政策です。

都市化率70%に向けて、不足する2.57平方キロメートルの土地は新農村建設によって生み出す必要があります。農民1人当たりの建設用地が200平方メートルとして計算すると、1.28億人を新農村建設で移住させる必要があります。中国の行政村1つあたりの人口は900人ですので、約14万村(村庄)にあたる広さになります。中国には現在69.2万の行政村がありますので、約1/5が新農村建設を積極的に進めないといけないことになります。別の言い方をすると、約1/5の行政村が都市化で消える(小都市に生まれ変わる)運命にあるということです(推計は同じく、葉2013)。

成都の事例

2007年に成都は都市農村一体化総合改革試験区に指定されました。成都は、土地増減リンク、都市化を市場経済化、民主化したやり方で比較的成功した事例を提供しています(Ye,Yumin and Richard LeGates,Coordinating Urban and Rural Development in China:Learning from Chengdu,Edward Elgar,2013)。

成都の土地増減リンク、都市農村一体化の手順は、農村で土地の財産権を確定し、それを農村財産権取引市場で売買する、というものです。

新農村建設にあたっても、農民が財産権をどうするかは農民自身に委ねられています。新しくできた街の中心部のマンションに移転することを希望する場合、財産権を取引市場で販売し、現金に変えて移動することが可能です。農業に残る場合、財産権を販売せずむしろ他の農民が売る財産権を購入して、農業の大規模化を行うことも可能です。

成都の財産権売買と重慶の地票取引の違いは、財産権(重慶の場合は開発権)取引にあたっては、農民自らが取引市場に参加できるかです。成都の場合、小規模な土地であっても農民が財産権売買を行うことができます。重慶の場合は、土地区画の整理、販売、購入、すべてが国有企業によって行われ、農民が参画する余地が限られています。したがって、重慶には土地の収容、販売にあたって強制的、強権的になされる可能性が残っています。成都の場合は、農民の意思決定が尊重される形となります。

柳街鎮では、農民の意見を聞きながら、鎮の中心部を再開発することになりました。企業が9800万元(約16億6000万円)を投資して、土地整理と新型社区の建設に乗り出します。これにより約208ムー(約13.9ヘクタール)の集団建設用地指標を節約することができました。その節約した指標分だけ都市建設用地が生まれます。鎮中心部の開発が進み、周辺部は現代農業用地として開発されました。

■成都の事例は全国に展開可能か?

2013年11月に開催された第18期三中全会では、農村の財産権取引を進めると明記されました。成都の事例を全国に広げる形です。葉裕民によれば、土地増減リンクと都市農村一体化で重要なのは基層レベルの民主的意思決定だそうです。

他地域では、国土資源部の指標にしたがって、土地を強制収容し、都市建設を進める基層政府が多く、これが土地問題と都市化を複雑にしています。直接の原因は基層政府幹部の成績評価が(1)耕地面積は減少させない、(2)建設用地は増加させない、という二項目が入っているために、政府自らが土地増減リンクと都市農村一体化を進めるというインセンティブになっています。農民の生活要求を満たすことを考えずに都市化を進めてしまう結果になります。

結局、中国の都市化は限られた空間を効率的に利用すること(土地増減リンク)、それにあたっては市場経済化による農民の民主的な意思決定の尊重が必要ということになりそうです。

◆筆者プロフィール:岡本信広(おかもと・のぶひろ)

大東文化大学国際関係学部教授。1967年徳島県生まれ。著書に『中国−奇跡的発展の「原則」』アジア経済研究所、『中国の地域経済−空間構造と相互依存』日本評論社がある。

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