Record China 2013年12月7日(土) 16時11分
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11月23日に中国側が発表した防空識別圏の策定範囲問題と、その後の日米中ら諸国の喧々諤々(けんけんごうごう)。本稿ではネット世論の立場から中国側の反応を見ていこう。写真は中国空軍。
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11月23日に中国側が発表した防空識別圏の策定範囲問題と、その後の日米中ら諸国の喧々諤々(けんけんごうごう)。本稿ではネット世論の立場から中国側の反応を見ていこう。ちょっと周回遅れ感もあるが、意見が出そろうまでのタイムラグということで了解されたい。
【その他の写真】
以下に紹介するのは11月29日、香港のフェニックスTV(事実上の中国政府系国際テレビ局)の公式微博アカウント上のつぶやきと、それに寄せられた意見だ。
実際の軍事衝突まではまだまだ数歩か十数歩以上の距離があるに違いないが、ネットや紙メディアにおいて「日中間の戦争」という言葉がある程度以上の具体的イメージを持って語られ出したかに見える、日中両国の世情。中国の庶民の間では実際にどんな話がなされているのか。以下でご覧ください。
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鳳凰衛視(11月29日 16:38)
中国空軍は11月28日、早期警戒機と主力戦闘機を再度発進させ、東シナ海の防空識別圏における通常巡回任務を行った。中国当局が東シナ海防空識別圏について強硬な態度を保つ一方、日本側防衛相は中国側が釣魚島(尖閣諸島)上空に識別圏を設定したことを決して受け入れられないと回答。読者のみなさんは日中間の緊張状態が今後もエスカレートすると考えますか? 今晩18時25分からのニュース番組へ、ご意見をお寄せください。
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黒竜江省大慶♂(11月29日 16:40)
やっちまえよ。
北京市♂(11月29日 16:40)
イヌをぶん殴る一番いい方法は、
ご主人様(=アメリカ)を殴ることなんだけどな……
広東省江門♂(11月29日 16:41)
小日本が最も見下している存在というのが、連中の傍にいる巨人――中国だ。
いまは死ぬ前の最後の悪あがきをしているってところだね。
広西チワン族自治区玉林♂(11月29日 16:42)
戦争やるならやるで、グチャグチャ舌戦してないでさっさとやってくれって。
※こうした、タカ派意見は全体の7〜8割。これらの意見にはテンプレート的な「小日本を許すな!」みたいなのが多く、つまらない上に訳す意味も薄そうなので多くは翻訳を省略する。下記では主戦派以外の意見を中心に紹介していくが、こうした書き込みの間には常に2〜3個のタカ派意見がノイズ的に挟まっていることを先に断っておきたい。
黒竜江♂(11月29日 16:43)
必ずしも戦争になるとは限らないだろ。
たぶん、エスカレートするだけ。
極限点に達したところで膠着し続けるんじゃないの?
北京市♂(11月29日 16:43)
おそらく小規模の緊張増加にとどまる。
防空識別圏を設定したところで、
実質的な防衛能力を持っていない限りは
当局が国内世論の圧力に対応しきれない。
軍はそれなりの行動をとっていくのだろうけど、
自分から戦争を仕掛けはしないだろう。
海南省海口♂(11月29日 16:44)
中国側は一歩一歩進めていくべき。
ソフトな形で中国軍の主張を既成事実化した方がいい。
遼寧省瀋陽(11月29日 16:45)
勝てば官軍、負ければ賊軍だよなあ。
四川省成都♂(11月29日 16:47)
これって、俺たちが「どう考える」とか「どうすべき」って問題じゃないよね。
戦争になるならなるんだろうし、和解するならするんだろう。
国家の利益に関係する問題ってのはそういうもんさ。
安徽省淮南♂(11月29日 16:54)
日本のようなならず者国家が長期にわたり我々への挑発を繰り返していることについて、早急に相応の対応を取るべきであろう。東シナ海の防空識別圏はただ策定するだけにとどまらず、日本側の行動に応じて範囲の順次拡大と調整を行うべきである。こうすることでのみ東シナ海の平和と安定が守られるのだ。
北京市♂(11月29日 16:55)
日中の緊張関係にこれ以上のエスカレートはないよ。
あの島国の人間は、戦争するかしないかなんて問題は
アメリカ人の意見を聞かないと決められやしないだろうから。
北京市♂(11月29日 16:58)
小日本はアメリカのケツの後ろにくっついて、
何かあればアメリカが助けてくれると思い込んでいるから、
身の丈以上に調子をこいて絶えず中国を挑発していられるんだ。
しかし、中国と小日本が本気で戦争になればアメリカは傍観するに違いなく、
日本のために自分が血を流す事態は嫌がるだろう。
だから中国は強硬な姿勢でいて構わない。
小日本の前で弱みを見せるな。全国の人民は一戦を辞さない!
その他♀(11月29日 17:03)
日本とマジで戦争したら中国経済がぶっ潰れると思うんだけど……
福建省アモイ♂(11月29日 17:24)
緊張激化は避けられないだろう。
重要なのは両国ともに理性 的な抑制を働かせて、
実際の武力衝突を避けることだ。
いかなる方法でもいいけれど、極端にはしらせないこと。
そうしないと大変なことになるよ。
四川省♂(11月29日 17:46)
ネットじゃ主戦派が大喜びで騒ぎ回ってるけど、
現実的にはどれだけの人間が戦争に賛成しているんだ?
天のみぞ知るってやつだね。
湖南省長沙♂(11月29日 20:35)
紙の上で兵を語る――畳の上の水練と。
妄言もいいところだ。
広西チワン族自治区北海♂(11月29日 21:43)
緊張はエスカレートするはず。
でも、中国は本気で戦争する気ないだろ。
その他♂(11月29日 22:10)
俺、思うんだけど釣魚島(=尖閣諸島)の問題ってのはさ、
中日両国が我慢比べ、実力と意思の対決をやってるんだよなと。
どっちも譲歩はできないし後戻りもできないとなれば、
最後は実力による解決しかないんじゃねえの。
内モンゴル自治区包頭♂(11月29日 23:42)
中国もこの問題についてはちょっとは譲歩した方がいいんじゃないかなあ……
上海♂(11月30日 08:15)
わが中国が最も恐れる事態とは,他国がみんなで結託して――
わが国の指導者の海外への資金隠しの状況を曝露することだ!!
アメリカ在住華僑♂(12月1日 05:10)
日本を敵視するというのは、外敵を作り出して国内の目をそらせる戦略だろう。
国家の最高指導者層は大いに腐敗していて、
情報も漏れていて統治が揺らいでいる。外敵を必要としているんだ。
中国は日本と戦争することなく、批判のマトにだけすることも完全に可能だ。
日本は第二次大戦に敗北して平和憲法を持つ。
指導者層にとっては日本に圧力をかけるのが最も安全なんだ。
他の国は中国のこの危険な戦略をとっくに見抜いて軽蔑している。
日本も、これを機にきっと強国化していくことだろう。
広東省潮州(12月2日 11:01)
構わん。中国の実力と武力を見せつけてやれ!!
上の注にも書いた通り、全体的に見てタカ派強硬論7〜8割、ハト派の冷静な意見1〜2割、「国家が勝手にやることなんか知ったこっちゃねえ」という無気力無責任派の意見1割といった分布だ。主戦派に「日本鬼子の頭に大刀を振り下ろせ!」みたいな、10年前の小泉首相靖国参拝の時から変わらないコピペ的なワンフレーズ書き逃げ文が割と多い一方、ハト派の場合は自分の頭で考えて文章を綴っている割合が多そうに見えるのには、救いを感じるところだろうか。
もっとも、過激なコピペ的主戦論が幅を利かせるネット世論と、リアル世論とはどこまで一致しているのか、という疑問も大きい(日本にしても、大手ポータルサイトのコメ欄で繰り広げられる「ネット世論」とリアル世論に大きな乖離(かいり)があるのは誰もがうなずくところだろう)。
生活上で発生しうる諸問題への想像力を持って「戦争」をイメージできる人は、実際にはそれなり以上に多く存在するはずで、実際の世論における「主戦論」はネットよりもはるかに少ない割合にとどまるに違いない。観念論的に戦争を語るだけなら何も失わないが、実際に戦争が起これば(庶民が銃火の下にさらされる可能性はゼロに近いにせよ)経済的影響だけでも半端ないのである。
経済的満足なり生活上の幸福感なり、何かを「持つ人」は社会の変化を嫌がる。中国の一般的社会人の多くが、急激な民主化や共産党体制の打倒を必ずしも希望しないのも、「持つ人」がそれなりに多い現状のなかで、大きな社会変革が望まれていないからだとも見なせる。この考えに立つなら、「民主化」と同じく「戦争」も忌避されて当然のもののはずだ。当局による大々的な宣伝でもない限り、現時点で中国の世情が開戦一色に染まるようなことはないと考えておくほうがいいだろう。
……ただ、中国の社会は1989年の天安門事件からは大規模な内乱を経験していないし、中ソ対立が終結して依頼、庶民の生活に直接的な影響が出るレベルの対外戦争の脅威も味わっていない。現在の中国というのは、一種の平和ボケ状態が四半世紀ほど続いてきたともいえ、観念的にしか「戦争」をイメージできない人が国民の多くを占めつつある社会状況も生まれつつある。
地に足のつかない無責任な「主戦論」が芽生えるには結構香ばしい土壌が準備されつつあるのも一方では事実なので、ここはちょっと嫌なムードを感じるところではある。
◆筆者プロフィール:安田峰俊(やすだみねとし)
1982年滋賀県生まれ。ノンフィクション作家。多摩大学経営情報学部講師。2008年〜2012年まで「迷路人」のハンドルネームで中国のネット掲示板翻訳ブログ『大陸浪人のススメ』を運営、2010年に中国のネット事情に取材した『中国人の本音』(講談社)で書籍デビュー。ほか『独裁者の教養』(星海社新書)、『中国・電脳大国の嘘』(文藝春秋)など。近著に『和僑』(角川書店)。
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