Record China 2013年11月30日(土) 23時45分
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政府や党の公式&準公式発表に、テキトーな数字やいい加減な統計があふれる中国。だが、極め付けにアレっぽいのが、国家発展改革委員会が付属シンクタンク所長の楊宜勇氏を通じて2007年から発表しはじめた「中華民族復興指数」なる数字である。
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政府や党の公式&準公式発表に、テキトーな数字やいい加減な統計があふれる国・中国。だが、その中でも極め付けにアレっぽいのが、国家発展改革委員会が付属シンクタンク所長の楊宜勇(ヤン・イーヨン)氏を通じて2007年から発表しはじめた「中華民族復興指数」なる数字である。(文:安田峰俊)
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『百度百科』(中国のネット百科事典)の当該記事によると、これは中国のエンゲル係数の数値と、都市化率の世界平均との相対的位置を数値化したものを組み合わせて「社会発展指数」なるものを算出し、それに加えて「経済発展指数」「科学イノヴェーション指数」などを加算することで導き出された指数なのだという。
要はわかりやすく言うと「中国がどこまで現代化しているか」を自己基準で点数化したものだ。過去の自国と現在の発展度を比較して「こんだけ中国は凄くなってるぜ(党と国家に感謝しろよ)」と(直接的にかはともかく)そう主張するために発表されている模様。
むろん、「『社会の現代化』ってこんな算出法で数値化できんのかよ?」という当然の疑問からはじまり、「そもそも中華民族って何よ?」「社会の現代化=中華民族の復興、ってイコールでくくっていいの?」「っていうか仮に『現代化=復興』と定義されるとすれば、中国って歴史上これまで一度も“復興”してなくね?」などとツッコミどころには事欠かない。ソフ●ップでDVD売ってるグラドルのスリーサイズよりもうさんくさい数字である。
今年11月21日の『中国新聞網』が伝えたところによると、昨年の中華民族復興指数は65.3%。当然ながら中国のネット上には、この指数に加えて発表者の楊宜勇氏に対しても、多くのツッコミとブーイングの声が溢れている。
以下にそんな声を紹介していきたい。訳文は例によって、逐語訳よりもニュアンス優先の超意訳だ。
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奮壹安徽省、男性(11月22日、12:10)
国家発展改革委員会の専門家・楊宜勇氏が近日発表したところによると、2012年の中華民族復興指数は、彼の試算によれば2010年の62.7%から増えて65.3%、2年で2.6%増とのこと。中国人はあと数年もせずに「夢(習近平政権のスローガンが「中国の夢(Chinese dream)」なので、それに引っかけたと思われる)」を叶えられるというわけだ!
まったくムカつくのは、この手の専門家センセイの分析ってのがさっぱり地に足がついていないことだ。いわゆる「研究」ってやつも単に国家のエライさんのご機嫌を取るためだけの行為だってことだよな!
国民はみんな不動産価格が高くてマイホームを買えないし、医療費が高くておちおち病院にも行けない、学費も高くて大変だ、しかも定年年齢まで延長されちゃ疲れてたまらない! こんなクソったれな国内の状況で、何が「復興」なんですかね?
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広東省深セン、男性(11月22日、12:21)
真顔でボケを飛ばすってのはこういうのを言うのか。
広東省広州、男性(11月22日、12:24)
むしろ、お上からの搾取指数を公開して欲しいところなんだけど…
広東省深セン、男性(11月22日、12:27)
楊宜勇みたいなゴマすり野郎はくたばった方がいいと思う。
上海、男性(11月22日、12:36)
いやちょっと待て。「中華民族」という言葉に「国民の大多数」が含まれていないということかもしれん。
北京、男性(11月22日、12:37)
辛亥革命の1911年。建国の1949年。毛沢東死去の1976年。南巡講話の1992年。各時期の中華民族復興指数がいくつなのか教えてくれよ。
イカれてんなーおい。
浙江省杭州、男性(11月22日、12:38)
芯の腐ったリンゴさ。外から見ればピカピカしてても中身は腐りきってる。
天津、男性(11月22日、12:40)
なあ、20年前の時点でも「豊かな時代」とか宣伝してなかったっけか?
福建省厦門、女性(11月22日、12:46)
何の意味もない数字。政府の人たちが勝手に言葉を作って自己満足してるだけでしょ。もちろん、どうやって算出したかとかもいい加減なもんでしょうし。
北京、女性(11月22日、12:49)
うーん。大気汚染発生回数と下水油の発覚回数、あと不動産価格の高騰で指数を作ったらどうなるのかな。専門家の人はいますぐ計算してみてほしいところだけど。
河北省石家庄、男性(11月22日、12:56)
さて、今日も毒食を食って毒水を飲んで汚染大気を吸うとするか。
山東省徳州、男性(11月22日、13:33)
この研究は素晴らしいね。経費は税金で、研究成果には客観的検証の必要がない!
北京、男性(11月22日、13:36)
独裁制度の復興指数ってことでおk?
北京、男性(11月22日、13:43)
いやいや、政治指導者の復興ってことじゃね?
広西チワン族自治区南寧、不明(11月22日、13:50)
共産匪賊が大中華から出ていけば、それで復興といえる。
江蘇省南京、男性(11月22日、13:53)
わが国は大国だけに、エセ専門家のセンセイも大勢いますからね。
その他、女性(11月22日、17:51)
こういう佞臣が宮廷のなかにアヘンを持ち込んで、皇帝たちを楽しませるってわけか。
上海、男性(11月23日、14:45)
復興って、破壊の後に立て直すって意味だろ?現時点で60%強が破壊されているとして…、あとどれだけぶっ壊すんだろう?
浙江省杭州男性(11月23日、14:48)
「復興」を言うならベンチマークを示すべきだよな。基準にするのは清朝のレベルか唐朝のレベルか?…あれ、これって俺らの現在のレベルが数百年前よりもダメってことにならね?
それにしてもこの指数。「中華民族復興指数が上がったぞ。うおおスゲー!!」などと興奮する庶民がいるとも、「復興指数を上げるべく努力しよう」なんて考える殊勝な官僚がいるとも思えず。関連部署なり担当者なりの実績稼ぎだとしても微妙極まりない企画である。
どういう理由で発表されているのか、謎が謎を呼ぶ(でも真相はどうでもいい)中華民族復興指数。とりあえず日本で暮らすわれわれとしては「またネタが増えたわい」と生暖かく見守りつつ、中国のネット民のヒネったレスを読んで笑っておけばそれでオッケーであると言えよう。
■筆者プロフィール:安田峰俊(やすだみねとし)
1982年滋賀県生まれ。ノンフィクション作家。多摩大学経営情報学部講師。2008年〜2012年まで「迷路人」のハンドルネームで中国のネット掲示板翻訳ブログ『大陸浪人のススメ』を運営、2010年に中国のネット事情に取材した『中国人の本音』(講談社)で書籍デビュー。ほか『独裁者の教養』(星海社新書)、『中国・電脳大国の嘘』(文藝春秋)など。近著に『和僑』(角川書店)。
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