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<コラム>地球文明の国になれるか日本 その3

石川希理    2020年4月9日(木) 22時40分

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二度と立ち上がれない、と言われた日本は、現在72歳になる私の幼児-児童期に奇跡的復興を遂げる。

二度と立ち上がれない、と言われた日本は、現在72歳になる私の幼児-児童期に奇跡的復興を遂げる。その復興の原因の最大のものは、皮肉な話で、悲しく恐るべき事だが、朝鮮半島や中国の人々、アメリカ軍人の「血」によってである。

1950年に「朝鮮戦争」が起きる。日本が第二次大戦に負けてポツダム宣言を受諾し、アメリカ中心の国連軍に占領されたのは1945年。日本の植民地であった朝鮮は、日本が敗戦すると、北からソ連、中国に攻められ、南からアメリカに侵攻された。結果、1948年にアメリカ流の資本主義国の大韓民国(南朝鮮、韓国)と、ソ連・中国の共産主義を掲げる朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に分かれた。そして2年後、1950年に突然、金日成率いる北朝鮮が事実上の国境線と化していた38度線を越えて韓国に侵攻してきた。これが「朝鮮戦争」である。

3年間に及ぶ戦争は朝鮮半島全土を戦場と化して荒廃させた。1953年にアメリカ軍主体の国連軍と中国・北朝鮮連合軍は休戦している。この状態が現在も続く北朝鮮と韓国・アメリカの関係である。

因みに第二次大戦の結果、一つの国であったものが、資本主義国と共産主義国の二つに分かれてしまったのは「ドイツ」「ベトナム」と「朝鮮」である。このうち分断のままなのが「朝鮮」だ。

この朝鮮戦争。推計が様々で、確定していないが、死者は2~300万人にのぼる。なにせ、朝鮮全土で地上戦・市街戦が続けられたので、500万人という推計もある。

よくご存じの通り朝鮮半島は、現代の船や航空機の利用であれば、1、2時間と日本からは極めて近い。当然、アメリカ主体の国連軍は、日本を前線基地とした。同時に、食糧や弾薬の補給、トラックや戦車の修理、兵士の休養地ともした。

この結果、起こったのが「朝鮮特需」である。第二次世界大戦で爆撃され、工業力が壊滅的であった日本は、この朝鮮戦争の間に武器の生産も許され、戦後の廃墟から立ち上がる。もっとも、占領軍の経費を負担していて、特需景気の経済的利益が、そのまま得られたわけではない。ただ、復興の大きな一助となったことは確かである。戦争で豊かになるのは死の商人だが、この辺りは、人間社会の業の深さを感じる。

いずれにせよ、この1950年から1953年の3年間の戦争景気がキッカケで、我が国は廃墟から復活し始める。そして、1965年からは、「奇跡の成長」と言われる、日本の高度成長期に突入する。

現在、72歳を筆頭とする団塊の世代は、完膚なきまでに破壊され、餓死者があふれる日本に生まれ、その後、世界第二位の経済大国になる、恐るべき変革の時代に生きたのだ。私はまだ死んでないが(笑)

国民の6割を占めていた農民が、1割の半分にも満たない国になった。経済構造がひっくり返ったのである。明治維新どころの話ではなかった。明治維新も大変革だが、農村主体の封建社会の構造は、実は第二次大戦まで続いていた。女性は参政権はなく、「親権」さえなかった。学校の「保護者会」を古い人たちが「父兄会」というのはその名残である。

この高度成長期にいまあるものがほとんど生まれた。トランジスタも、集積回路も、テレビも、パソコンも、スマホも、LEDに替わられつつある蛍光灯も、自家用車も、多機能トイレも、冷蔵庫、電子レンジ、トースター、コーヒーメーカー、洗濯機、浴室、エアコン、電気ポット、レコーダー、カメラ、ドライヤー、シェーバー、ペットボトル、電気炊飯器、ジーパン…。

そしてなにより石油化学製品。衣類からカーペット、ゴミ袋に買い物袋、壁紙、机や床の木目は薄い化学フィルムに印刷された物、飲料ペットボトルに、洗濯・炊事・化粧品のボトル、何から何まで…。つまり現在あるありとあらゆるものが、この時代に生まれて変化していった。

幼少期の頃、神戸市の私の家で、使われていた電化製品は3つだった。傘つきの電球、アイロン、5球ラジオ。これが普通である。因みに5球ラジオというのは、トランジスタ(半導体)がなく、真空管という小型の縦長の電球のようなモノで、検波や増幅をしてラジオ放送を捉えていた。よくテレビドラマなどで、この時代の家庭に、黒い鉄製の扇風機や、昔のSPレコードのための蓄音機などが出てくるが、それはごく一部のお金持ちの家である。

神戸市という百万都市だが、水道は、台所の1箇所のみ。トイレの手洗いは手水鉢-「ちょうずばち」と読み、手洗い用の水をためた鉢、または、小型のブリキのバケツを吊り下げて、下から水が出るようにしたもの。フロはなく行水、そして「銭湯」という大衆浴場。「銭」が入浴料だったので「銭湯」と名前がついている。私は「中人15円」というのを覚えている。「中人」は傑作な言い方だが、大人と子どもの間、中学生くらいのことだ。

冬の暖房は「火鉢」、布団には「湯たんぽ」「炭の入ったこたつ」。夏は「うちわ」で涼を取り、そして蚊取り線香の煙の中で、蚊帳をつって寝た。母が洗濯板で、大きなたらいに水を張って衣類を洗っていたのを覚えている。冬は冷たかっただろうなあ。その社会が半世紀で激変した。

韓国は「漢江の奇跡」もあったが、主にここ2-30年で、高層ビルが建ち並び激変した。中国は少し遅れて、ここ1-20年で激変しつつある。都市部は「大爆変」だろうか。

現在、東アジアは世界の中でも、アメリカ、ヨーロッパ主要国に次いで、経済的にも政治的にも主要な地域になりつつある。むしろ、後少しで、欧米を凌駕するようになるかも知れない。

その中で、最初に先進国になった日本は、停滞と言われつつ、上手く離陸できれば、最初の地球文明国家になるだろう。それは国民性によるユニークな文明である。そしてひょっとすると未来社会のスタンダードな価値観を持つ国になるかも知れない。そのことについて述べてみよう。

つづく

■筆者プロフィール:石川希理

1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒です。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、善く死ぬために仏教の勉強と瞑想を10年ほどしています。明石市と西脇市の文芸祭りの選者(それぞれ随筆と児童文学)をさせていただいています。孫の保育園への迎えは次世代への奉仕です。時折友人達などとお酒を飲むのが楽しみです。自宅ではほんの時折禁酒(笑)。中学教員から県や市の教育行政職、大学の準教授・非常勤講師などをしてきました。児童文学のアンソロジー単行本数冊。小説の自家版文庫本など。「童話絵本の読み方とか、子どもへの与え方」「自分史の書き方」「人権問題」「瞑想・仏教」などの講演会をしてきました。

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