一人っ子政策緩和は「誤報」、玉虫色の三中全会コミュニケに見る中国改革の困難さ

Record China    2013年11月15日(金) 19時33分

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12日、財新網は記事「中国、間もなく“単独”世帯の二人目出産を解禁」を報じた。“単独”とは「両親のうち片方が一人っ子(独生子)」の意。「双独」、つまり両親ともに一人っ子の場合、2人目までの出産が許されるという現在の規制が緩和されるという内容だ。資料写真。

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2013年11月12日、財新網は記事「中国、間もなく“単独”世帯の二人目出産を解禁」を報じた。“単独”とは「両親のうち片方が一人っ子(独生子)」の意。「双独」、つまり両親ともに一人っ子の場合、2人目までの出産が許されるという現在の規制が緩和されるという内容だ。三中全会閉幕後間もなく関連政策が発表されると「権威のある人物」が明かしたと報じている。

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ところがしばらくしてこの記事は削除され、代わりに人民網が記事「衛生・計画生育委員会:単独世帯2人目出産省察の発表時期はいまだ不確定」を掲載した。単独世帯の解禁について検討していること自体は認めたものの、中国共産党中央による検討作業中で、いまだに最終的な政策案も決定していないという。

▼「誤報」なのか、それとも瀬戸際で潰されたのか

実はこの手の「誤報」はこれまでに何度かあった。今年8月にも政策立案に関わっている中国人民大学社会・人口学院の●振武(ディー・ジェンウー、●=羽の下に隹)教授が「2013年末にも単独世帯の2人目出産が解禁される」と発言、話題となったが後に当局が否定している。

やるやる詐欺的な印象が強いが、実際のところ、一人っ子政策緩和の検討は最終段階まで進んでいるのだろう。中国の少子高齢化は世界最速ペースで進んでいるほか、教育費の増加、女性の高学歴化、晩婚化などの影響で緩和したとしても、出生率は極端に増加しないことはほぼ確実視されている。現行の一人っ子政策はもはや時代にマッチしていないのだ。

調査報道で知られる財新網が報じた「三中全会後間もなく発表と権威ある人物がコメント」という内容がまったくの的外れだったとは考えにくい。むしろ規制緩和をめぐる綱引きが続くなか、強力な抵抗により三中全会直後の発表が見送られたとみるべきではないか。もちろん近い将来に緩和される可能性は残っているが、一人っ子政策関連部局は「政策にいささかも揺るぎなし」と怪気炎を上げており、そうたやすい話ではない。

▼玉虫色の三中全会コミュニケにみる中国改革の困難さ

大胆な改革が期待されていた三中全会だが、閉幕後に発表されたコミュニケを見る限り、具体的な改革案は打ち出されず肩透かし感が強い。そればかりか改革派、保守派双方に目配りした結果、玉虫色の表現になっている部分もある。例えば次の一節だ。

「公有制経済と非公有制経済はともに社会主義市場経済の重要な一部であり、我が国の経済社会発展の重要な基盤である。必ずやいささかも動揺することなく、しっかりと公有制経済を発展させ、公有制の主体的な地位を堅持し、国有経済の主導的力を発揮。国有経済の活力、支配力、影響力を高め続けなければならない。

また必ずやいささかも動揺することなく、非公有経済の発展を奨励し、支持し、導くことで、非公有制経済の活力と創造力を活発化させなければならない。財産権保護制度を整備し、混合所有制を積極的に発展させ、国有企業の近代的企業制度整備を推進し、非公有制経済の健康的発展を支持しなければならない。」

李克強(リー・カーチアン)首相が就任以来出してきたメッセージは政府関与の縮小と市場化の推進だったが、結局のところは国有企業(公有制経済)の重要性を堅持する文言が織り込まれた。一応、民間企業(非公有制経済)についても触れられているが、期待されていた内容にはほど遠い。それどころか10年前、第16期三中全会のコミュニケと比べても後退している感すらある。

一人っ子政策にせよ、あるいは経済改革にせよ、やるべき道筋はかなりはっきりとしているのに、結局抵抗に潰されてなかなか実現できない。三中全会を受けて導入される個々の法律、政策で改革が進められる可能性もあるが、コミュニケの肩透かし感を見るにそれも難しいのではないか。

一人っ子政策緩和の「誤報」は、中国の改革全体に通底する困難さを改めて示すものとなった。

■筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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