<直言!世界と日本の未来>「教育の機会均等」に反する文科相発言は言語道断=大学入試英語テストの民間会社丸投げが破綻―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2019年11月3日(日) 9時0分

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来年度から大学入学共通テストで予定していた英語の民間試験活用について、文部科学省が延期を決めた。経済状況や住む場所によって受験機会に格差が生じる懸念があるためというが、最初から民間会社・団体に委ねるという発想そのものが破綻していたといわざるを得ない。

来年度から大学入学共通テストで予定していた英語の民間試験活用について、文部科学省が延期を決めた。経済状況や住む場所によって受験機会に格差が生じる懸念があるためというが、最初から民間会社・団体に委ねるという発想そのものが破綻していたといわざるを得ない。

私は中学、高校とも英語が大好きだった。学校の授業に熱心に取り組み、英語力を高めるのに特別の塾や予備校に通う必要はなかった。大学は英文科を選択。就職してからの海外営業などに役に立った。

英語会話力が必要なことはわかるが、大学入学試験で英語をうまく話せるか受験生全員にテストする必要があるのか。現行の大学入学共通テストの全国共通ヒヤリングで足りるのではないか。

英語の民間試験や記述式問題の導入を柱とする国主導の大学入試改革について、民間試験の受験料は高額で、受験できる都市も全国で15カ所に限定され、経済状況や住む場所によって受験機会に格差が生じる懸念が指摘されていたようだ。にもかかわらず、文部科学省は当事者である大学や高校の専門家や受験生の意向を聞き入れず強行突破を目指していたという。

延期に追い込まれたのは、「身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と受験機会の格差を認めるかような萩生田文科大臣の発言がきっかけとか。貧富の格差を是認し、「教育の機会均等」理念を危うくする軽率な発言は言語道断である。

大学入試は個々の大学が自らの責任で行うもので、高い専門知識が必要だ。にもかかわらず、文科省は現場の声を軽んじた「制度設計」に走った。もともと選抜試験を想定していない、性格の異なる英語の民間試験を一律に大学入試に使うことが果たして妥当なのか。

一度貧困に陥ると抜け出せず、格差は受け継がれて固定する。変えられるのは教育の力だけだ。「改革」の名のもとに民間営利企業・団体にテストを丸投げし、格差を反映させる仕組みを持ち込みもうとした文科省の責任は大きい。

<直言篇102>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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