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<在日中国人のブログ>改革開放・日本協力と私

武 小燕    2019年11月6日(水) 19時20分

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今春、NHK-BS特別番組「中国の改革開放を支えた日本人」が放送され、大きな反響を呼びました。私もそれを視聴し深く感銘を受けた一人です。写真は新宿。

今春、NHK-BS特別番組「中国の改革開放を支えた日本人」が放送され、大きな反響を呼びました。私もそれを視聴し深く感銘を受けた一人です。10月25日午後、その番組で貴重な証言・コメントを述べたキーパーソンの張雲方氏(元人民日報日本特派員)と小田川圭甫氏(元上海宝山製鉄所プロジェクト等担当)が名古屋外国語大学で講演会を行い、それに参加してまたお話を拝聴できました。

私は経済や製造の門外漢です。お二人の講演を聞きながら、私の頭に浮かんできたのは、彼らが語ったあの時代の自分の幼少期でした。1978年にトウ小平が訪日し、新幹線速度に感心した際に私は3歳でした。1983年に上海宝山製鉄所プロジェクトのために新日鉄から超大規模な技術移転を実施しはじめた際に私は8歳でした。その時に、私はもちろん私の家族も周辺の誰一人も確実にこれらの出来事と無関係に暮らしていました。私の生活にあるのはジャングル大帝、アルプスの少女ハイジ、一休さんでした。1980年代に中国ではテレビはまだ貴重なもので、みんながテレビのある人の家に集まって見るのが普通でした。そして、テレビのチャンネルはまだ少ないし、人気の番組はほぼ決まっています。一休さん等の時間になると、仲間たちが「始まるよ」と呼びかけながら、外遊びをやめたり、食事の最中の茶碗を持ったままにしたりテレビの前に集まって観賞するのは、私の幼少期の大きな楽しみでした。

今振り返ってみれば、私の幼少期の楽しみの背景には改革開放があり、日中関係の改善がありました。中国語では「先人が木を植え、後代の者がその陰で涼む」という諺があります。つまり、前人のおかげで後の人が幸せになるという意味です。張雲方氏や小田川圭甫氏はまさにその先人であり、私はその恩恵を受けた後代の者です。それらのアニメの影響か、幼少期における日本に対するぼんやりとした親近感で、私は大学時代に日本語を専攻し、後に日本留学を経て今日に至りました。40年後、私はその時代を動かした当事者たちと出会い、この瞬間だけ私たちの人生の軌道が交差しました。この一瞬後、私たちの人生はまたそれぞれの軌道に沿って進んでいくが、私は40年後に出会うかもしれない今の子どもたちに何を残していくのでしょうか。今日の出会いはとても考えさせられました。

冒頭の番組で私が一番感動したのは、その時代に日中友好や日中協力に取り組んだ人たちの信頼と熱意でした。それがもたらした日中関係のハネムーンと呼ばれる1980年代が終わると、世界情勢も日中関係も変化が生じ、不調和音のほうが徐々に目立つようになっています。私は留学した2000年代半ばごろ中国では反日デモが起き、日本では反中感情が高まり、互いに不信と不満が膨らんでいました。ハネムーンは素敵なものですが、それをずっと続けていくことは難しいです。近づいただけに、摩擦や誤解が増え、時に喧嘩になることもあるでしょう。また、時間と共に双方とも変化していく。ある意味で、今の日中関係はハネムーンを目指すというよりは、ハネムーン後の関係づくりを工夫しなければなりません。張雲方氏と小田川圭甫氏からバトンを受け継ぎ、20年後や40年後に出会う今の子どもたちに感謝されるものになったらこの上ない喜びです。

■筆者プロフィール:武 小燕

中国出身、愛知県在住。中国の大学で日本語を学んだ後、日系企業に入社。2002年に日本留学し、2011年に名古屋大学で博士号(教育学)を取得。単著『改革開放後中国の愛国主義教育:社会の近代化と徳育の機能をめぐって』、共著『変容する中華世界の教育とアイデンティティ』、『歴史教育の比較史』、研究報告書『多文化世帯に生きる子どもたちの言語習得に関する実証研究:愛知県における中国系世帯とブラジル系世帯の比較を通して』などがある。現在名古屋付近の大学で研究と教育に取り組んでいる。一児の母として多文化教育を実践中。教育、子育て、社会文化について幅広く関心をもっている。

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