日本僑報社 2019年7月2日(火) 14時40分
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一つの言葉をきっかけに、自分の意識が大きく変わる経験をしたことがある人は少なくないだろう。日本語を学ぶ陳長遠さんにとってそれは授業中に先生がした「ゴキブリ研究者」の話だった。資料写真。
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一つの言葉をきっかけに、自分の意識が大きく変わる経験をしたことがある人は少なくないだろう。日本語を学ぶ陳長遠さんにとってそれは授業中に先生がした「ゴキブリ研究者」の話だった。以下は陳さんの作文。
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大学に入学したばかりの2年前の私は、何も心配せず、自分の専攻もあまり気にかけていなかった。だが、時々、自分はなぜここにいるのか、なぜ日本語を専攻したのか、何をしたいのかなど自問していて、五里霧中にあった。私は、かなり頑固な人間である。自分の嫌なものは絶対嫌だ。大学の専攻も好き勝手に選んだ。その時は何にしたら良いのか全然見当がつかなくて、日本のアニメに熱中したことを思い出して、日本語にしたのだ。しかし、落ち着いて考えてみると、日本語を勉強したら将来どんなことができるのかとか全然わからなかった。
そんな私は、他人からみれば、かなり明るい人間だったかもしれないが、その心の中は、実はとても虚しかった。そこへ、転換期が訪れたのだ。それは、日本語の授業中のことだった。その時、先生は友人の話をした。その先生の友人は動物学の研究家だ。ゴキブリ、彼はこの強い生命力を持っている気持ち悪い生物に熱中して、研究をしていた。でも、それはかなり人気がない専門だったから、周りの人に理解されなかった。だが、彼は毎日毎日ゴキブリと一緒にいた。いろいろな成果も出て、多くの本も出版できたが、彼の生活は相変わらず低迷していた。そんな未来を見通せなかった時にも、彼は後悔したり弱気になったり全然しなくて、研究し続けた。
それから何年も経ってから、北京でひどいゴキブリの被害が発生した。すると、彼はやっと人生の春を迎えたのである。数多くの研究成果はとても役に立って、大成功を収めたのである。ここまで聞いて、私はびっくりした。先生は話を続けた。「誰も何年も後の災難を予想できなかった。でも、一つのことは断言できる。もしもあの時、彼が研究を諦めてしまえば、今の成功は絶対になかった。だから、君たちも今は未来のことがぼんやりしていてわからなくても、とりあえず目の前にあることをちゃんとやった方がいい。そうすれば、機会は自然にやって来るから。もし今努力しなければ、未来に何も起こらないのは間違いないんだから」。私はその言葉を心の中で何回も繰り返した。
それから、私の目の前が、何か、ちょっと明るくなってきたような気がした。その後、私の生活は変わり始めた。それは、霧の中を抜け出して、青い空に巡り合って、その光を迎え入れたみたいな感じだった。
今の私は、悪くない成果を上げたと言えるだろう。去年からずっと日本語の勉強を一生懸命頑張ってきた。おかげで、日本語の能力試験にもパスできた。だんだん自分のしたいこともわかるようになってきた。新学期の初めには、日本からの短期留学生の接待役として、中国をよりよく理解してもらうために、多くの観光地にも案内したし、中華料理も作った。日本語のスピーチコンテストにも参加して、日中相互理解について発表した。自分の目標に向かって、少しでも自分の力を尽くして頑張ることができて、本当に嬉しかった。少なくとも、私はもうぼんやりと生きていない。
先生の教えは、私にとっていつまでも忘れられないものになった。これからも、ずっと私の心に銘記されるだろう。(編集/北田)
◆本文は、第十四回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「中国の若者が見つけた日本の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2018年)より、陳長遠さん(中国人民大学)の作品「あの雨天、あの言葉」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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