Record China 2013年4月20日(土) 23時20分
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1930年、日本統治下の台湾。中部山間部の町・霧社で、原住民のセデック族が武装蜂起し、日本人130人以上を殺害した。日本側は大軍を派遣して鎮圧。セデック族ら1000人以上が命を落とした――。
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植民地時代の台湾で起きた大規模抗日蜂起「霧社事件」。静かな町が血で染まった惨事を、台湾の魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督は2部作・計4時間36分の大作で描いた。日本公開に合わせたインタビューで、ウェイ監督は「憎しみをどう解消するか。なぜ事件は起きたのか。当時の視点で見つめ、考えてほしい」と話した。
日本の圧政にたまりかねたセデック族の長モーナ・ルダオは、一族の若者約300人を率いて武装蜂起した。学校の運動会で日本人を襲い、女性や子供も惨殺。日本側も徹底的な鎮圧作戦に出た。日台間にとげのように残る負の記憶を、果たして日本人がどうみるか。監督は「実は不安だった」と打ち明ける。日本初上映となった昨春の大阪アジアン映画祭。監督はスクリーン脇から、そっと場内をうかがった。上映が終わって一斉に拍手が上がる。ロビーでポスターを写真に収める観客を見て、やっと肩をなで下ろしたという。
当時の状況説明から暴力シーンまで、描写はリアルに徹した。セデック族が伝統とする首狩りの儀式。反旗を翻された日本軍の容赦ない鎮圧作戦。繰り返される殺りくシーンには、台湾でも批判の声が上がった。監督は「周囲から『もう少し控えめに描いて』との意見も出たが、できなかった。霧社事件は血なまぐさいものなのだ。だからこそセデック族の『首を狩って、魂を血で洗い清め、虹の橋を渡る』信仰をきちんと紹介する必要があった」と話す。
民族と民族、文化と文化が出合った時、時に衝突が起きる。監督は「文化の強弱」と表現した。「一般に文化の力が強いことが『文明的』で、弱いことが『野蛮』だとされる。しかし、力で文化を強制してはならない」と強調する。
「たとえば私の服が時代遅れで、格好が悪ければ批判して構わない。しかし、私の存在を否定してはだめだ。他者の価値観や信仰を否定した時、衝突が起きる。映画には完全な善人、完全な悪人は出てこない。絶対的に良い文化などない。異なる価値観を認め、真摯に向き合った時、互いを理解できるのではないか」
4月19日、早稲田大学で開かれた試写会。満場の客席を前に、監督は語りかけた。「時代はさまざまな過ちを犯します。何が正しく、何が悪く、何が良く、何が悪いか。歴史の上では断言できません。二つの民族の憎しみを解消するために、この映画をぜひ受け入れてほしいと思います」(文・阿部陽子)
「セデック・バレ」(2011年、台湾)
監督:魏徳聖(ウェイ・ダーション)
出演:林慶台(リン・チンタイ)、大慶(ダーチン)、安藤政信、馬志翔(マー・ジーシアン)、ビビアン・スー(徐若[王宣])、木村祐一、羅美玲(ルオ・メイリン)、ランディ・ウェン(温嵐)
2013年4月20日、渋谷ユーロスペース、吉祥寺バウスシアターほかで全国順次公開。「第一部:太陽旗」「第二部:虹の橋」同時上映。作品の詳細は公式サイトまで。http://www.u-picc.com/seediqbale/
作品写真:(C) Copyright 2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production ALL RIGHTS RESERVED.
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