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<コラム>韓国人に軍隊について聞いてみた

木口 政樹    2019年4月30日(火) 21時30分

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日本男子としては、軍隊の経験がないため韓国男性の軍隊の話にはかなり興味がある。機会があればいつも聞こうとする。たまには自慢げにいろいろの話をおしげもなくしてくれる人もいるが、たいていはなんとなくかったるいという表情になる。資料写真。

日本男子としては、軍隊の経験がないため韓国男性の軍隊の話にはかなり興味がある。機会があればいつも聞こうとする。たまには自慢げにいろいろの話をおしげもなくしてくれる人もいるが、たいていはなんとなくかったるいという表情になる。なんか言いにくいことでもあるのかな、と日頃思っていたものだ。

で、わたしの大学での日本語会話の試験で、ある男子学生に軍隊のときの経験について話してください、と水を向けてみた。彼はしばらく軍隊での生活について話していたが、わたしが一つ質問をすると、「あ、それは軍隊での機密なので話すことができません」と言った。軍隊を出ても、機密保持には気をつけているのかな、と納得したことだった。

が、のちのち何人かの学生に聞いてみると、爆笑しながらそういうことはないと言う学生もいた。この学生によると、わたしがまんまとだまされたか、あるいはわざと機密のようなものがあるように見せかけたものだろうということだった。会話でのくだんの学生は、日本語での説明ができなくなって苦しまぎれに「機密」という言葉を出したのか、本当にそういうことがあるのか今もまだ分からない状態である。が、とにかくあんまり軍隊でのことについて根掘りはほり聞き出すのはやめようとそのとき思った。スパイでもないのに変に疑いをかけられてもわりにあわないじゃないか。

ところで軍隊といっても内部はいろいろの部署がある。どの部隊、部署に配属されるかは自分では決められないそうだが、おもしろい部署がある。それはチサバン(炊事班)という部署である。100人分とか300人分とかの食事を毎日毎日作る部署である。もちろん一人でやるのではなく数人のグループ編成である。メシを炊き、汁を作り、おかずを作る。一日三度、毎日やるわけなので、不器用で料理に関する知識や技術など何もなくても、軍隊生活二年ぐらいの後には、立派なグルメになって出てくることになる。だからチサビョン(炊事兵)が除隊した後には、女子学生からかなりの人気だということだ。

チサバンとして働いている間も、たいていは他の軍人のように外に出て軍事訓練をする必要がないので、厨房でゆっくりとくつろげるそうだ。くだものやチーズやアイスなどはかなり自由に食べられると、わたしの学生の一人は言っていた。

ただし、上司がどういう人間かによって、「待遇」はがらりと変わったものになる。「理解」のある上司にあたれば、これくらい幸せなことはない。余分に来たくだものなどはチサバンですべて処理。ゆえにバナナ、りんご、なしなど、もろもろのくだものは腹いっぱい食べられる。訓練にもいかなくていい。軍隊とはいえ、けっこう「優雅」な生活ができるというわけだ。

しかしちょっとへそまがりの上司にぶつかったら、これは結構大変だそうだ。常に監視の目を光らせているので、自由にくだものも食えない。余分の時間があるとすぐに訓練に行ってこいと出される。一般の兵が訓練を終えて就寝となっても、それから後片付けをやらされる。一般の兵の数倍はつらいものとなる。料理を覚えることはできるので、この点だけは救いであるが、軍隊生活の間中つらい毎日となるので、こういうチサバンは、だれも行きたくはないだろう。しかしそれも天のおぼしめし。運悪くそうなったら、覚悟を決めて取り組むしかないであろう。最悪でもグルメにはなれるのだから。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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