<コラム>陝西省の古刹・法門寺の日本語表記が誤植のオンパレードでも笑えない理由

関上武司    2019年3月31日(日) 14時30分

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陝西省の古刹・法門寺の日本語表記が誤植のオンパレードでも笑えない理由とは?

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陝西省宝鶏市にある法門寺は1800年以上の歴史を誇る古刹で、1987年には地下宮殿から仏舎利(お釈迦様の遺骨)が発掘されている。中国の観光地ランクではトップクラスの国家AAAAA旅遊景区で、境内も想像以上に広い。1230mの佛光大道の両脇には写真1のような合計10体の菩薩像(像高20m近く)が鎮座し、仏舎利が納められた合十舎利塔(写真2)は高さ148mを誇る。

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実際に参拝してみると、有名な寺院なのか参拝客もけっこう多いと感じる。境内の案内は中国語、英語、日本語、韓国語と多言語で表記されていたりするので、観察してみると英語と日本語にはかなりの誤植や間違った表現が多く見られる(韓国語表記についてのミスは不明)。菩薩像の台座の説明書きの日本語に注目すると、本来なら「病気」と書くべき部分がなぜか「気病」(写真3)と表記。

合十舎利塔で仏舎利の案内の表記は本来なら「舎利拝観入口」とすべきところが「砂利拝観入口」(写真4)になっていた。砂利を拝観してどうしろというのだろうか?仏罰級の誤植である。写真5は「仏教聖地 厳禁吸煙」と書かれており、簡体字でも日本人ならなんとなく意味は理解できると推測されるのだが、日本語の説明が「仏教の神社 禁煙」と表記され、中国の古刹がいつの間にか神仏習合になっていて驚かされた。英語の「Non-smoking」もこの場合はおかしい。

写真6は地下宮殿の出口の表示なのだが、中国語の「出口」には「輸出」という意味もある。しかし英語では「Underground palace export」、日本語「地下宮殿の輸出」というのはこの場合には明らかに意味が通じない。

写真7の日本語の文章にいたってはまったく理解不能だ。「塔の石の上にロウソクをお供えしないように」と書かれているのだが、「ケンタッキー石禁止を供える燈」となっていた。ケンタッキーは中国語だと肯徳基、肯塔基と表記されるのでこうなったのだろうか?もはや日本語に訳さないほうがいいレベルだ。

筆者が北京で留学中、交流していた日本語学科の中国人学生の日本語能力は2年生くらいでもたいしたもので、学生に翻訳を依頼してもこのようなミスは絶対ないはずだ。法門寺が文章を機械翻訳して外国語ができるプロフェッショナルに内容の確認を依頼しなかったのが原因だろう。ただ、筆者の観点では、このような手抜きを笑えない理由がある。

最近、大阪メトロのサイトの外国語版ページの誤訳が話題になり、堺筋線が「Sakai Muscle line」と表記され、中国語訳もかなりひどい状態だった。これも機械翻訳の内容をチェックしなかった結果だろう。

筆者が以前、名古屋城本丸御殿に訪問したところ、スタッフが中国人旅行客の質問(中国語)に対応できなかったので、手助けをしたことがある。これだけ外国人旅行客が激増したにも関わらず、日本の観光地は外国語ができるスタッフが少ないと感じる。

2020年の東京オリンピックでも外国語ができる人材にもボランティアをさせようとのことだが、外国語を使いこなせるようになるにはかなりの努力が必要だということを日本人は忘れていないだろうか?公共性の高い外国語版ページの開設には翻訳のプロフェッショナルに依頼するにはケチらないで予算を割くべきであり、外国語ができる人材にはそれなりの給料を出した方がいいのではないだろうか?

■筆者プロフィール:関上武司

1977年の愛知県生まれ。愛知大学経営学部卒。中国で留学や駐在員としての勤務経験あり。日本や中国のB級スポットを紹介するブログ・軟体レポートの管理人。中国遊園地の取材で中国の全省、全自治区、全直轄市へ訪問。会社員の傍ら、「中国遊園地大図鑑」シリーズを執筆し、メールマガジンのロードサイダーズ・ウィークリーにて「ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行」を連載中。このほかイベントも開催している。

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