<コラム>善悪の判断はあなたが決めるのではありません

海野恵一    2019年3月28日(木) 22時30分

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人間の心は名誉とか、財産とか、地位とか、家族のしがらみで、十重二十重に心が閉ざされています。正しい行いを積み重ねていけば、人が本来持っている生まれたままの心が浮かび上がってきます。

前号では相手の話を受け入れるために、どう心を開いたらいいのかの話をしました。人間の心は名誉とか、財産とか、地位とか、家族のしがらみで、十重二十重に心が閉ざされています。正しい行いを積み重ねていけば、人が本来持っている生まれたままの心が浮かび上がってきます。この生まれたままの心になることができれば、相手の人の話をそのままあなたの心に受け入れることができるようになります。

もちろんそうした事ができるようになるためには相当の努力と時間が必要です。それではそうして苦労して、相手の話をすべてあなたの心に受け入れることができるようになったら、あなたは相手の話の内容をどのように判断するかということになります。実はその相手の話の内容の善悪はあなたが決めるのではないのです。

多くの人は自分の判断でこれが善だと勝手に決めています。「善悪」の判断が何であるかは相手の考えを考慮して決めなければならないのです。いや、相手の判断に従うと言ったほうが正しいのかもしれません。あなたが正しいと思っている判断は相手の人は正しくないと思っているかもしれません。それでは善悪という視点でもう少し検討してみましょう。

善悪について、何が善で何が悪か、ここから悪ですよという世間の常識が、善の範囲を狭くしていると言えます。善ではないものが悪になるのかというと悪ではない場合もあります。その空白の部分は善なのかもしれません。その領域に入らなければ、いつまでも、善なのか悪なのかわからないままなのです。多くの人は自分の判断でそれが悪ではないかと勝手に決めて、そうした悪かもしれないという領域に踏み込もうとしません。すなわち、そうした未知の世界に踏み込もうとしなので、いつまでもそうした空白の世界は開けていかないのです。

そもそも日本人は物事を他人と議論して決める習慣が欧米人、中国人と比較して極めて少ないと言えます。自分でよく考えて結論を出してから人に話をします。外国人は人と話をしてから、自分の考えを正していきます。そうした物事の判断の仕方が外国人と違います。

ですので、あなた自身の善悪の価値判断に固執してしまうと、相手の人の話の内容を誤解してしまうかもしれません。一歩踏み込んで、相手の人に確かめる必要があります。あなたが悪だと決めていたことが相手の人はそれが善だと思っているかもしれません。もし相手の人がそれを善だと言ってきたときに、あなたがその考えを受け入れることができれば今までのあなたの価値判断の領域を広げることになります。

私は私の塾でリベラルアーツを教えていますが、世界の様々な国の生き方とか生活様式、政治、経済、文化を勉強していきますと、日本人の世界とは全く違った生き方をしている人たちがたくさんいます。そうした人たちの生き方に接しますと、我々が生きてきた世界が狭いものだということに気づき、また我々が誰なのかを他者と比較することによって、再認識することが出来ます。

こうしたことは先程述べた善悪の判断の違いということです。相手が一人の場合、複数の場合、社会全体の場合、国が異なる場合、それぞれ、どう受け入れたら良いのかその状況によって異なってくるでしょう。そのときにあなた自身が、どれの程の広い視野をもって、相手と対応するかのよって、あなた自身の心の広さがどうなるのかが、決まってくるのです。

次回はそうした善悪の価値判断はどういうものさしによって決まっていくのかの話をしたいと思います。

■筆者プロフィール:海野恵一

1948年生まれ。東京大学経済学部卒業後、アーサー・アンダーセン(現・アクセンチュア)入社。以来30年にわたり、ITシステム導入や海外展開による組織変革の手法について日本企業にコンサルティングを行う。アクセンチュアの代表取締役を経て、2004年、スウィングバイ株式会社を設立し代表取締役に就任。2004年に森田明彦元毎日新聞論説委員長、佐藤元中国大使、宮崎勇元経済企画庁長官と一緒に「天津日中大学院」の理事に就任。この大学院は人材育成を通じて日中の相互理解を深めることを目的に、日中が初めて共同で設立した大学院である。2007年、大連市星海友誼賞受賞。現在はグローバルリーダー育成のために、海野塾を主宰し、英語で、世界の政治、経済、外交、軍事を教えている。海外事業展開支援も行っている。

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