Record China 2018年10月28日(日) 8時0分
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安倍首相が北京を公式訪問し、習近平国家主席と会談。経済や安全保障など幅広い分野で合意した。隣り合う大国同士なのに日本の首相の公式訪問は約7年ぶりというから、空白期間の長さに驚くが、まずはトップ同士がこうした形で会ったことは歓迎すべきことである。
両首脳は日中関係の新たなステージへの進展に対する期待を口にした。習氏は「両国関係は正しい軌道に戻り、前向きな勢いをみせている」と現状を評価。安倍首相は「競争から協調へ」「互いの脅威とならない」「自由で公正な貿易体制の発展」-など日中の新3原則を示し、「世界の平和と安定のため、ともに力を合わせて貢献していきたい」と応じたというが、トップ同士が胸襟を開いて率直に話し合えば、平和友好の道筋は開ける。
今年は日中平和友好条約発効40周年の節目の年。首脳会談では相互往来を定着させ、日中関係の改善に弾みをつけることで合意した。経済分野では先端技術や知的財産保護などを巡る新対話の設置で一致。金融危機時に通貨を融通し合う通貨交換の再開も確認した。安全保障では自衛隊と中国軍の偶発的衝突を避けるための「海空連絡メカニズム」を進める。防衛当局同士の定期交流の初会合を年内に開くことで一致した。
特筆すべきは約500人の日本経済界のリーダーが同行したことである。北京で開かれた「第三国市場協力フォーラム」では、日中の多くの企業経営者らが参加、50件以上の企業間覚書が締結された。日中両政府が署名した多くの文書の中で「青少年交流強化に関する覚書」に注目したい。5年間で計3万人の相互訪問を実施する計画だ。
昨年の日中間の人的往来は1千万人を突破し、貿易総額は3千億ドルを超えた。世界情勢と日中関係は大きく変化したが、平和友好条約の重要性は少しも衰えていない。
この10年あまり、日中関係は大きく変貌し、従来のように「友好」や「互恵」といった概念だけでは収まらなくなり、ぎくしゃくした関係が続いていただけに、トップ同士の交流は貴重だと思う。こうした状況だからこそ、トップが行き来し、文書を交わすことが重要だ。
日中の国交が回復したのは1972年。当時の田中角栄首相と周恩来首相が多くの困難を乗り越えて文書を締結した。私が初めて中国を訪問したのもこの直後である。京都の経営者グループによる北京での「自動化展」の視察団に参加したときだった。そのときに周首相にお会いできたのは、非常に印象深い思い出である。
1996年3月に訪中した折にお会いした呉邦国副首相も、長年に及ぶ中国とオムロンの関係を自ら指摘され、「今後も中国の発展のために力を貸してほしい」と述べておられた。この細やかな心遣いには感動したものである。急速な成長を遂げることができたのは、中国の経済そのものの発展に負うところが大きいが、当社だけでなく、多くの日本企業にとって中国の存在が非常に大きなものとなってきていることは言うまでもない。外務省の統計によると、中国にある日本企業の拠点は2015年後半に3万3390カ所となり、その後も拠点数は増えている。貿易相手国としても中国は最大である。
トランプ米大統領の貿易政策で日本製及び日系企業の中国製商品に関税が課せられる可能性もあることから、日中貿易関係の重要度が高まっているとの分析もあるようだ。さまざまなハードルを乗り越え日中関係がさらに発展するよう願ってやまない。
(直言篇67)
■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。
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立石信雄
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