<コラム>ちょっと昔の中国の話(1/2)=警察官に「とんでもない疑い」をかけられた

如月隼人    2018年1月26日(金) 20時10分

拡大

ずいぶん前に、新疆ウイグル自治区で警察官の取り調べを受けた話をご紹介しました。今回は内モンゴル自治区で、警察官に「とんでもない疑い」をかけられた話です。1980年代の末のことでした。写真は内モンゴル自治区。

ずいぶん前に、新疆ウイグル自治区で警察官の取り調べを受けた話をご紹介しました。今回は内モンゴル自治区で、警察官に「とんでもない疑い」をかけられた話です。1980年代の末のことでした。

モンゴル民族は夏になると「ナーダム」というお祭りを行います。日取りが決まっているのではなく、各地で、それぞれの草原の状態が最もよくなる時期に行います。

「ナーダム」とはモンゴル語で「遊び」の意。そしてナーダムのハイライトは「エリン・ゴルバン・ナーダム」です。直訳をすれば「男の3つの遊び」。妙な想像はしないでくださいね。「弓矢」、「ボー(モンゴル相撲)」、「競馬」です。古くから、体力・技量・精神力を鍛えるとして重視されてきた競技です。つまり、楽しみであると同時に戦士育成が目的だったのです。

そうそう。「競馬」と言ってもギャンブルが目的ではありません。騎手は体重が軽い方が有利ということで、小学校の低学年から中学年ごろまでの少年少女です。草原の上を、長い場合には30キロメートルほども馬が駆け抜け順位を競います。

さて、シリンゴルという街で開かれたナーダムを見物することにしました。当時は、内モンゴル自治区区都のフフホトという街から、草原の「道なき道」をバスで移動して、たっぷり1日かかりました。

そのちょうど中間地点あたりの小さな街に、私と仲の良い友達が住んでいました。馬頭琴弾きでモンゴル族、時には全国放送のテレビにも出演するという中堅どころの男です。彼は、絶対に自分の家に立ち寄ってくれと言います。そこで、帰りにはその小さな街でバスを降り、何日か滞在することにしました。

ところで、この時期には各地のナーダムを目当てに移動する人が多い。宿の確保は厳しい。そこで私は友人に、宿を取っておいてくれと頼みました。彼は「オレの家に泊まればいいんだよ」と言いましたが、中国人は当局に外国人を無許可で自宅に泊めてはいけないとの規則がありました。発覚すれば彼に迷惑がかかるかもしれない。そう思い、宿の確保だけはくれぐれも頼んでおきました。

さて、シリンホトを出発しました。その日の夕方遅く、立ち寄る予定だった街にバスが到着しました。やれやれ。乗客が多くて座れず、立ったまま半日以上もガッコンガッコン揺られていましたからね。降りようとすると、例の友達が出迎えに来てくれていた。嬉しい嬉しい。さっそく宿に案内してくれました。

宿と言ってもホテル式ではありません。大部屋です。それぞれベッドが10台ぐらいは入る部屋が男女用にそれぞれ2つずつありました。フロントでチェックインを申し出た。すると係の人が「男の部屋はもういっぱいで受け付けられない」と言い出しました。私の友達は「予約したはずだ」と言って抗議。でも、ラチがあかない。

事情が分かりました。宿側は予約の際に、私のことを「女性」と勘違いしたらしい。外国人の名にはなれていませんから、時おりはこういうことがあります。さて困ったと思っていたら、たまたま通りかかったモンゴル族のおばちゃん2人が、声をかけてくれた。「私たちの部屋を使えばよい」と言ってくれた。

ちょっと待っていただきたい。いくらなんでも男性の私が「女子部屋」に泊まるのは問題だ。と焦ったのですが、そういうことではありませんでした。

女性客は男性よりもかなり少なく、1つの部屋は宿泊客でいっぱいになったが、もう1つの部屋はこのおばちゃん2人だけしかいない。ベッドがいっぱいになった部屋も、スペース自体には余裕がある。だから、女性2人のベッドをもうひとつの女性部屋に移してしまい、私は空っぽになった部屋に泊まればよいということでした。

宿の係員も「今日はもう、新しい客はこないと思う。来ても同じようにすればよい」とOKを出してくれた。私は友達と2人で、鉄パイプの簡易ベッド2台を運びました。その晩は、大部屋を占領してぐっすりと眠りました。

異変が起きたのは翌朝です。朝6時ごろに警察官が部屋までやってきた。妙な事を言いだした。「この部屋に宿泊した女性2人はどうした?」。私の方を冷たい表情でにらんでいる。とんでもない疑いをかけられたようでした。(続く)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

Facebookはこちら
※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。

ブログはこちら

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携