<映画の中のチャイナ>ともに米本国が直接攻撃された歴史上の出来事〜「9.11」と「トラトラトラ!」

Record China    2009年12月7日(月) 17時53分

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09年12月、「9.11アメリカ同時多発テロ 最後の真実」と「トラトラトラ!」。チャイナ関連という切り口ではないが、ともにアメリカ本国が直接攻撃されたという共通点がある。写真は08年12月、雲南省昆明市のカフェで発生した自爆テロの現場。

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2009年12月、「9.11アメリカ同時多発テロ 最後の真実」と「トラトラトラ!」。一方は第二次世界大戦における日米開戦、もう一方はパレスチナ政策に対する大型テロによる報復。チャイナ関連という切り口ではないが、ともにアメリカ本国が直接攻撃されたという共通点がある。

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勢い、チャイナ要素が関わる範囲は表面上限られる。

「トラ」の方は大きな時代背景として、大日本帝国が中国大陸への進出を図っており、その意味では全編のBGMが「チャイナ」だが、直接スクリーンに登場する要素は極めて見つけにくい。

日本人とも中国人とも判別しにくいのだが、真珠湾攻撃で戦闘機が飛来した時にハワイのパイナップル畑か何かで働くアジア系農園労働者の姿と、奇襲成功後に米国内で日本人とおぼしき少年が郵便物を出そうとする場面ぐらいか。あまり必然性も感じられなかったのだろう、日本国内の描写にも中国人らしい姿は登場しない。

「トラ」は日米合作だけに日本側もきちんとした役者がそろっているが、過去のハリウッド製映画に登場する日本人には奇妙な“和服”を来た怪しげな「日本人風」役者が多いことは周知の事実だ。近年の中国人女優チャン・ツィイーが日本の芸者を演じた「サユリ」や「ラストサムライ」などでも様々な描写に違和感を覚えた人は多い。

一方、「9.11」では、アジア系は文字通り一緒くたで、ストーリー展開のテンポの速さから言っても区別や差別している暇はない。実際のツインタワー崩壊でも航空機ハイジャックでもアジア系はそれなりに犠牲になっているはずだが、主要キャラクターには日系、中国系は見当たらない。

主な舞台はアフガニスタンだったりアフリカだ。米側の中心であるFBI、CIAのエージェントや幹部にもアジア系は見当たらない。

はっきり分かるのは、航空機の激突後ツインタワーで階下に非難するオフィスワーカーの中にアジア系が含まれていること。あの人たちが大陸出身の中国系か台湾か、香港系か、あるいは日本人かは知るべくもなく、こういうと身もふたもないが大きな筋には関わらない。

2作品とも、目視だけでこのアジア人たちの国籍を言うことは現代の日本人にも難しい。

両者の対比で感じるのは、1941年から2001年までの60年の時の流れとその間の変化の大きさだ。そして、米国にとっての「敵」が日本からアルカイダやタリバンに変わり、歴史は繰り返されている。60年後の「戦争」の原因はアメリカ支配というよりはイスラエルによる中東政策だが。

ここからは中国的要素から離れるので、「チャイナ」だけにこだわる読者はここまででいいかもしれない。

◆共通するのは米政府、軍内に蔓延する官僚主義

両作品に共通しているのはアメリカの政府、軍内部に蔓延する官僚主義といい加減な仕事ぶりに対する告発だ。

「トラ」の中では、事前に日本の暗号を解読して宣戦布告を察知していながら、いくつもの「障害」が重なって最前線のハワイには連絡が到着せず、何の準備もないまま真珠湾は日本軍の奇襲にさらされ壊滅的打撃を被る。

「9.11」でも、テロリスト側はそれほど洗練された準備態勢で臨んでいたわけでもなく計画の摘発・壊滅のチャンスは幾度となく出現するのに、責任をとろうとしない上層部などの判断ミスですべて逃してしまう。

いずれも優秀かつ有能な人材多数が現場で懸命にがんばっているのに、である。こうした図式はアメリカ映画によくみられる。「ライトスタッフ」というアメリカの宇宙飛行士誕生を描いた映画でも、官僚主義を打ち破って現場の専門家である飛行士らが宇宙開発をリードして行く姿が頼もしげに描かれていた。

もう一つ、「トラ」の中で物量的には圧倒的に不利な日本軍が綿密な準備と大きな賭けに勝って真珠湾攻撃に成功した場面は日本人として複雑だ。いまや日米安保体制の下で、民主党政権となっても関係が揺るがぬ友好国となり、アメリカ人たちが戦前の誤った軍国教育で教えられた「鬼畜米英」ではなく、むしろ正義漢でお人好しも多い彼らが、日本の戦闘機による機銃掃射などで死んで行く場面はとても喜べない。

一方で、誤解を恐れずに言えば、歴史をたどれば欧米による植民地支配や分割に抵抗し日本包囲網を突破するために正に窮鼠猫を噛むように行われた大奇襲の成功は、植民地化されるばかりだったアジアの一員として誇っていいという気もする。「非西洋人だって支配され収奪されるばかりではない」ということを示した意味は確かにあり、だからこそ後のベトナム戦争において日本の歴史が一部でベトナム人民の心の支えともなったともいう。さらにその感覚は中東地域における反米の戦いでも受け継がれ、自爆テロはまさに日本のカミカゼ特攻隊を彷彿とさせる。中東には「なぜ日本がアメリカの味方をするのか」という反応もあったやに新聞で見た。

負けたとはいえ、太平洋戦争の史実は「侵略戦争」という一言ですべてくくられてしまうほど単純ではない。

残念なのは、当時の日本軍全体としては「トラ」でも描かれた連合艦隊司令官・山本五十六(その後戦死)のように、相手の戦力を見据えて講和に持ち込もうと考えた冷静な智慧はなく、最後には原爆2発を浴びて最悪の終戦を迎えた。「9.11」につながる現在の中東情勢、対米テロがどう決着するのか。同時代に生きる者として人ごとではない。

映画は世相や庶民感情を反映する鏡でもあるので、今回の2作品と比べて戦争に対する現代中国人の感覚を知りたければ、先に紹介した「建国大業」などはちょうどいいかもしれない。<映画の中のチャイナ6> (文章:kinta)

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