<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・回憶 北京五輪(7)どうする?巨大競技場群…W杯誘致への思惑

Record China    2008年9月2日(火) 15時21分

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日本シンクロの“生みの親”で、中国代表のチームを銅メダルに導いた井村雅代さんは、五輪開催前、初めて五輪会場の国家水泳センター(愛称:水立方)に入ったとき、第一印象は「こんなの作っちゃって大丈夫?」だったそうだ。写真は水立方。

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日本シンクロの“生みの親”で、中国代表のチームを銅メダルに導いた井村雅代さんは、五輪開催前、初めて五輪会場の国家水泳センター(愛称:水立方)に入ったとき、第一印象は「こんなの作っちゃって大丈夫?」だったそうだ。

50メートルプールと飛び込みプールが縦に並ぶ超巨大な競技場。水泡をイメージした直方体の外観は独特で、夜は神秘的なブルーにライトアップされる。確かに素晴らしい競技場だが、触れ込みの『省エネ』タイプとはちょっと違う気がする。この巨大なプールを維持するのにどれだけの費用がかかるのか……井村さんも心配になったと言うわけだ。

オリンピックで使用された競技場を評するスポーツ関係者の言葉は全て同じだ。「素晴らしい」の一言…。メインスタジアムの鳥の巣、水立方、国家体育館は言わずもがな。北京北郊外のオリンピック公園に作られたアーチェリー場、ホッケー場など決して大人気とはいえない競技のスタジアムも、出場した選手達の大絶賛を受けた。北京西郊外の巨大規模な射撃館、公園内に作られたビーチバレー場、NBA標準で建てられたというバスケット館、そして北京大学内の世界初の卓球専用体育館。この1年で、北京は世界でも有数のスポーツインフラを持つ都市に成長したといえよう。

だが井村雅代さんが口にしたように、今後、果たしてこの超豪華な競技場群を維持していけるかは大きな問題だ。多目的に使える総合陸上競技場でも難しいが、専用競技場として作られたスタジアムを維持してくだけのビッグ大会がそう頻繁に北京で行われるとは思えない。

中国は五輪閉幕後、早くもサッカーW杯誘致に本格的に取り組むことを公式に宣言した。以前から、「次の次」を狙う旨はスポーツ当局の責任者の口から何度か出ていたが、「祭り」が終わった今、それをいよいよ本格化させるということだろう。

たしかに、国家体育場(鳥の巣)をメインに、北京市内だけで、工人体育場(女子サッカー決勝の会場)、オリンピックセンター体育場(近代五種など)と、それなりのスタジアムが整備された。しかも、上海天津瀋陽にも眩いばかりの一流の競技場が作られ、他都市のスポーツインフラに見劣りしなくなった。W杯を誘致するだけの力は、施設面からみれば、十分にあるともいえよう。

だが同時に、「ポスト五輪」の“夢”を語り続けざるをえない状況があるのも事実だ。これだけのスタジアムを維持していくには、国民に目標を与え続け、「次」に目を向けさせざるをえない。一歩間違えれば、巨額の資金をかけたインフラ設備に対し、一般庶民の不満が噴出しかねないのだ。

当局は、今後、これらの施設を市民に開放するとしているが、かなりの運転費用が必要な各競技場がどのような形で活用されるのか…一定の方針は出てはいるものの、その実現性はまだ不透明だ。“祭りが去った後”の北京はどうなるのか…このツケが五輪を目一杯楽しんだあとの北京市民にドンと押し寄せないことを祈りたい。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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