八牧浩行 2017年9月14日(木) 5時10分
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英国、フランスに続いて世界最大の自動車市場・中国も、ガソリン車の生産販売停止を検討する方針を打ち出した。自動車各社はこぞって成長が見込める電気自動車(EV)開発にシフトしつつある。世界の自動車勢力図の大変動は必至だ。写真は本田技研工業本社(東京・青山)。
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政府主導でガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止し、電気自動車(EV)への転換を促す動きが、各国で活発化している。英国、フランスに続いて最大の自動車市場・中国も、将来ガソリン車の生産販売停止を検討する方針を打ち出した。自動車各社はこぞって成長が見込めるEV開発にシフトしつつある。
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フランス、英国が7月に2040年までの禁止を相次ぎ発表した。EVを中心とする新エネルギー車(NEV)に自動車産業の軸足を移すことが狙い。中国政府は達成年度など具体的な計画を明らかにしていないが、年間販売2800万台と世界最大の市場だけに、中国の動きは、日米欧など世界の自動車メーカーの成長戦略や世界のEV市場に与える影響は甚大だ。
◆狙いは大気汚染対策・産業振興・安全保障
中国政府がガソリン車などの製造・販売の禁止検討に着手する背景には、北京、上海など多くの都市での深刻な大気汚染がある。加えて、中国はエンジン技術で先行する日米欧に対抗して自国の自動車産業を振興する狙いや、海上輸送に頼る石油依存から脱しエネルギー源の多様化を図る「安全保障上の配慮」もあると見られている。日本のトヨタ自動車の独壇場となっているハイブリッド車(HV)は、エコカーと認められてていない。
ところが中国政府が最大で1台当たり100万円程度の補助金を出しても、16年のNEV販売台数は全体の2%にも満たなかった。それでも、16年の電気自動車(EV)の世界販売台数約47万台(前年比4割増)のけん引役は中国。販売台数は前年比6割増の24万台と世界全体の半数以上を占めた。
中国政府は4月に発表した中長期計画ではNEVの販売を25年に従来計画の2倍弱にあたる700万台に上方修正した。NEVのテコ入れを狙い、外資大手にNEVに限って、従来認めていなかった3社目の合弁を解禁しブランド力を持つNEVを開発させる方針。18年からは自動車メーカーに、一定比率のNEVの製造販売を義務付ける規則を導入する方向で調整を進めている。さらに外資系自動車メーカーが中国で製造合弁する際の出資規制を緩和する計画を表明した。25年を目標に50%と定めた出資上限を引き上げる方針。ガソリン車の製造販売規制が新たな中国企業の優遇策とならないように、自動車分野の外資規制緩和の確実な実行が求められることになりそうだ。
◆EV転換、欧州企業が積極化
中国の16年の新車販売台数は、米国の1.6倍、日本の5.6倍と巨大なため、世界の大手メーカーもNEV分野に力を入れ始めている。中国市場でシェアを争う独フォルクスワーゲン(VW)と米フォード・モーターはNEVの3社目の合弁を決めた。VWは2025年に中国で150万台のEV米を販売する計画。EVテスラも中国での現地生産を検討している。日本勢も日産、トヨタ、ホンダが現地生産や新型車の投入など対応を加速する構えだ。EVは日産自動車や米テスラなど一部を除いて量産や市販の経験が乏しく、実際に需要が拡大するか不透明な面もある。
特にEVへの転換を強くアピールするのが欧州勢。中国での販売が好調で世界販売の首位に立つVWは、EVへと大胆にシフトする方針を打ち出した。独BMWは現在は1車種のEVについて、25年までに11車種を新たに投入する予定だ。昨年、独ダイムラーもEVの専用ブランド「EQ」の小型EV試作車を発表した。欧州勢は、環境に優しいアピールしていたディーゼルエンジン技術がVWの不正で信用を失墜、販売面で大きな逆風に直面している。このため中国や欧州などでのEV市場開発に力を入れ、生き残りを図る。
◆先行する日産、ホンダ、トヨタも注力
日本メーカーのうち、EVの「リーフ」で先行する日産自動車は走行距離を伸ばした新型車で他を引き離す戦略を展開。「EV市場の拡大で品揃えが多くなればユーザーの購入機運も高まる」と歓迎している。ホンダは欧州など都市部での走りやすさを意識した小型EVの試作車をドイツ・フランクフルトモーターショーで初公開。量産EVを19年に欧州で売り出す。中国では18年に専用EVを投入予定だ。
HVや燃料電池車に力を入れ、EVでやや出遅れ感のあったトヨタは、量産EVを2019 年にも中国に投入する計画で、20年をめどにEV専用車の開発も進める。中国はトヨタが世界販売の約1割、年120 万台に達するだけに、大市場の確保に懸命だ。
大手自動車メーカー系列の部品メーカーも動き出している。ガソリン車では3 万点ある部品がEVでは2万点で済むとされ、特にエンジンや変速機が不要になることへの危機感は強い。EVシフトが今後急速に広がるか不透明だが、自動車関連産業で働く日本国内500万人余りの雇用にも及びかねない。自動車関連各社は早めに手を打つことが必要だろう。
EV普及が急速に進めば、大都市の大気汚染は改善される。しかし石炭火力は二酸化炭素を排出、原子力発電も事故リスクが懸念される。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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