<コラム>日本人は意外と知らない中国のザリガニ食、そこから見えてくるもの

コーシン    2017年8月15日(火) 15時0分

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食材としてのザリガニというのは日本では一般的ではない。中国におけるザリガニを食べる文化というのは、日本ではあまり知られていないのではないだろうか。写真は中国のザリガニ料理。

中国の大手ニュースポータルサイト・新浪網に7月、2016年の中国安徽省のザリガニの生産量が50億元近くに達したとする記事が掲載された。安徽省は中国東部、上海の近隣にある省だ。農業や工業が盛んな地域で、発展を続ける上海周辺地区に多くの労働力や食料品などを供給していることでも知られている。省の南部を長江が横切るように流れており、その流域では蟹や魚などの養殖も盛んに行われている。50億元というこの金額は、現在のレートで日本円に換算すれば、800億円を超える規模だ。

食材としてのザリガニというのは日本では一般的ではないが、西欧料理では使用される食材で、特にフランス料理では「エクルヴィス」と呼ばれ高級食材として食べられることが知られている。しかし、中国におけるザリガニを食べる文化というのは、日本ではあまり知られていないのではないだろうか。

2016年の中国のザリガニに関する産業統計報告によれば、全国のザリガニの総生産額は564億元余りに上った。日本円にして9300億円以上に相当する。その生産量は年々増え続けているという。

中国各地で食べられているが、主要な消費地は長江中流域から華東地域(上海を中心とした中国東部)だ。この地域は古くから淡水魚や蟹を食べる文化がある。そんな文化の一つとしてザリガニを食べる習慣が新しく中国で根付き始めている。

ザリガニの旬は初夏から盛夏にかけて。夏が近づくと、中国ではいたるところでザリガニを売る店が軒をつらね始める。上海市内にある寿寧路という屋台街は別名「ザリガニ通り」と呼ばれ、ザリガニ専門店がずらりと並び、多くの客で賑わう。しかし、古くから中国を知る人からすれば、このようにザリガニが多く食べられることに違和感を覚える方もいるのではないだろうか。それもそのはず、中国におけるザリガニ食の習慣は、主に2000年を過ぎてから急速に広まったものなのだ。

現在、中国で主に食用とされているアメリカザリガニは元々中国では外来種だ。ニュースメディア・蘇州新聞網が2016年に掲載した「中国人はいつ頃からザリガニを食べ始めたのか?」という記事によると、80年代ごろから中国国内で繁殖し始めたアメリカザリガニが着目されたという。そして養殖もできるということから、食用として利用され始めた。その後、90年代に入り長江中下流域の湖北省・安徽省・江蘇省などで徐々に広まっていったという。

2003年の統計では生産量が5万トンに満たなかったものが、その後10年あまりの間に生産量は急速に大きくなり、昨年2016年の時点で60万トンを超えているという。2000年代初期には珍しかったザリガニは、現在では初夏に欠かせない食材の一つとなっている。

そんな中国の人々は、伝統と文化を非常に大切にするが、同時にスマートフォンの普及率が高いことなど、新しいものを柔軟に受け入れるという側面も持っている。先日、日本では中国の通信機器メーカー、ファーウェイの日本法人の初任給が、一般的な日本企業の初任給の2倍近くで提示されていたことが話題となった。現在中国はIT分野ではアメリカに匹敵するレベルに発展しているとも言われている。

その背景には、中国全土で早くから広がりを見せてきたネット・ITサービスの普及がある。インターネット通販が非常に大きく発展しており、オンライン決済などのIT分野は広く社会に浸透している。そこには中国の人々の「伝統・文化を大事にしながらも新しいことを受け入れる」という柔軟性があるからではないだろうか。ザリガニという新しい食材の広まりという面からも、常に変化と発展を続ける中国社会の新しいことを受け入れる柔軟性が垣間見られる気がする。

■筆者プロフィール:コーシン

1980年生まれ、京都府出身。大阪外国語大学中国語科卒業、中国北京中央戲劇学院修了。大学卒業後、中国現地上海のテレビ制作プロダクションに勤務。日系広告代理店勤務を経て、日本企業にて中国での業務に従事。在中国期間は通算で10年近く。現在は日本在住。中国と長く関わってきた経験から、時事ニュースを取り上げ、そこから見えてくる中国の新しい側面をお伝えできればと思います。

■筆者プロフィール:コーシン

1980年生まれ、京都府出身。大阪外国語大学中国語科卒業、中国北京中央戲劇学院修了。大学卒業後、中国現地上海のテレビ制作プロダクションに勤務。日系広告代理店勤務を経て、日本企業にて中国での業務に従事。在中国期間は通算で10年近く。現在は日本在住。中国と長く関わってきた経験から、時事ニュースを取り上げ、そこから見えてくる中国の新しい側面をお伝えできればと思います。

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