又吉直樹さんの初訪中、中国の第一印象は?―中国メディア

人民網日本語版    2017年6月19日(月) 18時20分

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日中国交正常化45周年記念活動の一環として、芥川賞受賞者で、お笑い芸人の又吉さんが中国を訪問した。

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「100年前に芥川龍之介が上海を訪問し、今日、芥川賞を受賞した又吉直樹さんが上海を訪問された。時空を超えて、二つのタイムポイントを重ねることができる。国境を超える文学は人と人の距離を縮めてくれる」。13日、日本で活躍する中国人作家・毛丹青さんは又吉さんとの対談でそのように語った。人民網が伝えた。

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日中国交正常化45周年記念活動の一環として、芥川賞受賞者で、お笑い芸人の又吉さんが中国を訪問し、芥川賞受賞作品である「火花」の中国語版の発売セレモニーに参加し、中国の読者や大学生と交流したほか、中国語版の翻訳者である毛さんと日中の文化について語り合った。

又吉さんの訪問に合わせて、人民網の記者も上海に足を運び、初の中国訪問となった又吉さんの追跡報道を行った。以下の記事を通して、頭脳明晰で、お笑いのセンスに満ちた又吉さんの本当の姿を垣間見ることができるかもしれない。

▼中国の第一印象「『酒店』はお酒が売っている店ではないんだ」

外見はおとなしそうで、やや暗いイメージに見えるが、又吉さんの何気ない発言に会場は何度も爆笑に包まれた。お笑い芸人として17年間の経験を積み、又吉さんは鋭い観察力と高いお笑いのセンスを磨きあげた。中国の第一印象を聞かれた又吉さんは、「一番びっくりしたのは、『酒店』と書かれている所は、お酒を売っている店ではなく、ホテルであること」と話した。

芥川龍之介も、上海旅行から帰った後、紀行文「上海游記」を執筆し、新聞に連載した。又吉さんも紀行文を書くとすれば、精一杯の笑顔で自分を応援してくれた上海の大学生のことをまず書くだろう。

「学生と交流している時、僕は日本語で話すため、僕の言っていることが分かってもらえているのか分からない。会場の真ん中に座っていたある男子学生がずっと笑顔で、『分かりますよ』と言うかのように、首を縦に振ってくれていた。だから、緊張した時は、うなずいてくれている彼の笑顔を見ると安心した。あの瞬間、僕たちの心は通じ合っていた。彼がいて、彼が分かってくれていると思うだけで、話したいことを話すことができた」。

▼「文学」と「お笑い」は通じるものがあり国境を超える

人を笑わすことが仕事のお笑い芸人であり、文字で人を感動させる文学作家でもある又吉さんは、この二つの仕事は密接に通じ合うものがあるとしている。

「夏目漱石や芥川龍之介などの作品を読むと、お笑いの要素がたくさんあることに気付かされる。文学にしても、お笑いにしても、言葉を使って表現し、何かの考えや感情の面で、読者や観衆と通じ合うことができる」。

又吉さんは、太宰治のファンであることで知られ、中学生の時に、代表作である「人間失格」を100回以上も読んだという。又吉さんの作品や人となりからも太宰治の影を見ることができる。「太宰治の小説をそのままコントなどにすることができる。彼の作品に登場する主人公の経験や体験、人への接し方、態度などは、太宰治のスタイルで、僕のスタイルにも影響を与えている。文学が僕自身の人への接し方や考え方を変えた」。

13日、又吉さんは「文学とお笑いは海を超える」と題する講演を行い、「今回上海に来て、読者や学生らに僕の考え方を話し、僕の作品に対する見方を聞くこともできた。その交流こそが『文学とお笑いは国境も海も超える』ことを示している」と語った。

▼「芸人をあきらめた人の罪悪感とは何か?」が「火花」のテーマ

「火花」の中国語版の発表会で、又吉さんは、「小説を書くことで、変な人を描きたいのではなく、人と人の関係を描きたかった。芸人の世界の先輩と後輩の関係はとても独特」と話した。

日本には芸人を育成する学校があり、東京や大阪の学校に毎年400-500人がやって来る。しかし、その中からテレビに出ることができるようになるのはほんの一握りで、才能があっても、続かない人もいるという。作品の中で、又吉さんは、「たくさんの人が夢を抱いて上京する。でも、スターになることができるのはわずか1%の人。また、売れた人だけが正しいというわけでもない」と書いている。

「最終的にあきらめてしまった人は、いい生活を送っていても、彼らと会った時には、背負っている恥ずかしさのようなものを感じる。その罪悪感はどこから来ているのかというのが、『火花』のテーマの一つ」。

▼「登場する徳永も神谷も自分に似ている」

「火花」に登場する主人公の徳永は関西出身で、貧しい家庭で育ち、高校を卒業してから漫才を始めた。「その境遇は自分の境遇ととても似ている。でも『火花』で描いているのは自分ではなく、同世代の人々、同じような思い出がある人」と又吉さん。

「『火花』を読んだ先輩には徳永とお前は似ていると言われたのに対して、後輩には、僕は神谷と似ている部分もあると言われた」。

又吉さんは18歳の時にお笑いの世界に飛び込んだものの、売れたのは最近になってからのことだ。又吉さんは北海道の小さな劇場で、観客がおばあちゃん2人だけという状況で漫才をしたことがあるという。「二人を前に、無表情で2時間しゃべり、二人も無表情だった。二人を絶対笑わせたいと思った」。そのような状況が1カ月以上続き、漫才のスキルを磨きながら、「お笑い」とは何かをずっと考えていたという。

「必要がないことを長い時間をかけてやり続けることは怖いだろう? 一度しか無い人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう。世界が突然変わる瞬間が経験したい。ネタをやっても誰も笑わない恐ろしさと、会場が爆笑に包まれた時の喜びを経験したい」。 「火花」に出てくるこの言葉が、又吉さんの当時の心境かもしれない。

▼「ノーベル賞受賞は、僕が日本代表としてW杯に出場する確率より低い」

テレビ出演も多いお笑い芸人である又吉さんが、芥川賞を受賞したという「ギャップ」から、社会では「火花」が大きな話題になり、これまでに発行部数が300万部を突破し、芥川賞受賞作品としては過去最高となっている。

同賞受賞に関して、又吉さんは、「『火花』が賞を受賞したため、本屋に行ってそれを読み、その横にあるもっとおもしろい本を見つけ、そのようにして文学や読書に興味を持ってくれるようになった人がいれば、そのことの意義は受賞よりも大きいと思う」と話す。

ノーベル文学賞に関する質問に、又吉さんは、「僕がノーベル賞を受賞する確率は、今サッカーの練習を始めて、日本代表としてワールドカップに出場するよりも低い」とユーモラスに答えた。

▼「ドラマ版『火花』は僕の世界観をよく理解してくれている」

「火花」の中国語版が発売される前に、多くの中国人が「火花」を知ったのは、ドラマや映画などの情報コミュニティサイト・豆瓣網で9.3ポイントという高い評価を受け、ネットユーザーから「名作」と呼ばれたドラマ版の「火花」がきっかけだろう。

「僕もドラマ版の『火花』を見た」という又吉さんは、「本の中で直接は表現していない考えも正しく表現してくれていた。これは、監督も脚本家も僕の世界観をよく理解してくれているということ。原作者として、そのことはとてもうれしい」とし、映画化やドラマ化について、「同じ作品を、文学作品、舞台劇、映画、漫画などさまざまな形で表現することができる。作品自体も、リメイクを通して進化し、さらに立体的になり、生命力も強くなる」との見方を示した。

人気俳優の菅田将暉と桐谷健太がダブル主演する「火花」の映画版は11月に日本で公開される予定。又吉さんは、「キャスティングや製作には関わっていないものの、映画版の監督や脚本家、出演者は、みんな僕がリスペクトしている人。売れる前に、その脚本家の作品にゲスト出演させてもらったこともある。これも一つの縁だと思う。映画版が思いがけないサプライズを提供してくれることをとても楽しみにしている」と期待感を示した。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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