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<羅針盤>日本的海外旅行―突然の旅行会社破産で考えたこと―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2017年4月2日(日) 8時40分

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東京の旅行会社が突然自己破産を申請した。負債総額は約151億円に上り、約3万6000人の旅行客に甚大な影響が出ているという。ツアーで宿泊するホテルの多くが未入金状態とか。海外滞在中の旅行者の中には、帰国もままならない人も多いと聞く。

オスロ空港で、日本からの熟年旅行の団体と一緒になった。一人のお年寄りの女性に旅行の感想を聞いた。

 

白夜で寝不足。北欧の人たちの背の高さに圧倒された。人だかりに興味を持ってのぞこうとしても高い人の壁で遮られ、何も見えなかったなどの面白い話をしてくれた。

また、女性陣はジーンズを、旅に出た解放感も手伝って、全員はいていた。その姿が周囲と調和して似合うのである。

お父さんたちは、全員ゴルフルック。地味な色のポロシャツで個性が出ていない。もっと派手な色ものであってもと思うのだが、目立つと人から変な目で見られるという、日本人特有の意識が働いているのであろう。

この団体は、北欧四力国をまわっているらしい。というのも、訪問先、行き先を聞くたぴに、お父さんに助けを求め、お父さんもまた、添乗員を呼んで答えを聞き出している。これはまさにベルトコンベヤー式海外旅行である。   

 

いかに多くの国を短期間で訪問し、皆と同じものを食べ、団体でお店に案内されて、私も、私もと同じものを買い、他人に迷惑をかけずに決められた時間に集合し、次に移動する。

日本的海外旅行に思う穐働する。海外に行ってきたという充実感にひたって無事帰国した途端、時差と疲れで寝込む人たちも多いと聞く。

 

ある学者先生が、日本人の旅行は。短期間に何カ国を訪問し、いかに多くの観光地を訪問し、グルメぶりを発抑し、世界のブランド品が買えるかであると、国際会議で日本人の旅行者の動き方を不思議がって質問したマレーシアの観光大臣に答えていた。

時短が進み、長期休暇も増えてくる。生活大国にふさわしい心のゆとりで、あれやこれやの分散型から、ゆったりとした一点主義的な旅行に変えていきたいものであるが、じっとしていられない日本人の性分ゆえ、変わるのには時間がかかるであろう。

こうした中、東京の旅行会社が突然自己破産を申請した。負債総額は約151億円に上り、多くの旅行客などに影響が出ているという。ツアーで宿泊するホテルの多くが未入金状態とか。海外滞在中の旅行者の中には、帰国もままならない人も多いと聞く。大金をはたいて家族旅行などに出かけた楽しいはずのツアーで、災難に遭った方々が気の毒でならない。旅行するのにも油断ならない時代になったとつくづく思う。旅行会社を選ぶ際にも、慎重な対応が必要であろう。

立石信雄(たていし・のぶお) 1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長、財務省・財政制度等審議会委員等歴任。

北京大学日本研究センター顧問、南開大学(天津)顧問教授、中山大学広州)華南大学日本研究所顧問、上海交通大学顧問教授、復旦大学顧問教授。中国の20以上の国家重点大学で講演している。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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