八牧浩行 2017年1月19日(木) 5時10分
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矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所経済研究部チーフエコノミストが「2017年の経済見通し」について講演。世界景気の行方について、2大大国の米中はともに回復基調にあるとしながらも、「トランプ新政権の政策運営が最大のリスク要因となる」と強調した。
2017年1月13日、矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所経済研究部チーフエコノミストが日本記者クラブで「2017年経済見通し」について講演した。世界景気の行方について、2大大国の米中はともに回復基調にあるとしながらも、「トランプ新政権の政策運営が最大のリスク要因となる」と強調。「トランプの政策はマクロがなく個別対応のみであり、交渉もマルチ(多国間)でなくバイ(2カ国間)だけだ」と批判し、「常識が通じないことを再認識し、非常識を前提にするしかない」と語った。中国については「過剰債務」と「住宅バブル崩壊」懸念をリスク要因として挙げた。17年の主要国別見通しは次の通り。
<日本>経済成長率は1.0%程度。雇用所得環境の改善を背景に民間消費は回復基調をたどり、企業収益が増加する17年度には設備投資も回復傾向に。ただ物価が上昇に向かう中、春闘の賃金水準が低調に終われば、消費の腰折れリスクが高まる。
<米国>成長率は2.2%程度。トランプ次期大統領の経済政策は玉石混交。その政策運営に左右される展開となる。景気への影響は、税財政政策はプラスだが、通商政策や移民政策はマイナス。保護主義は悲惨な結末を招く。労働需給のタイト化に伴い、賃金上昇が加速する。財政赤字、債務残高の増加が見込まれ、減税やインフラ投資の規模は縮小する可能性。経済成長の加速は小幅にとどまろう。
<欧州>成長率は1.4%程度。金融緩和政策とやや拡張的な財政政策により、個人消費の拡大が続くが、ペースは原油安による実質所得の押し上げ効果の縮小でやや鈍化。緩慢な成長と不安定な政治社会情勢が、企業の投資意欲に悪影響を及ぼす。投資の加速は期待できない。
<中国>成長率は6.5%前後を維持。「過剰債務」「住宅バブル崩壊」「米トランプ政権の対中政策」が下ぶれリスクとなる懸念がある。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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